チームの成長には手応え「僕たちの未来は明るいよ」
新型コロナウイルスの感染阻止のためディズニーリゾート内に設けられた隔離エリア『バブル』で行われたNBAのシーディングゲームには、22チームが参加してそれぞれ8試合を戦った。まだ最終日を残してはいるが東西のカンファレンスの最終順位がほぼ出揃った中、『最も期待外れだったチーム』を挙げるとすればペリカンズだろう。
シーズン再開を前に、最も注目されたのがペリカンズだった。全30チームから『バブル』に参加するチームの選別は恣意的な部分が大きく、リーグ側としては世間の注目を集めるために昨年のドラフト全体1位のザイオン・ウイリアムソンの存在が必要だったと受け止められても仕方がない。ペリカンズにはザイオン以外にもロンゾ・ボールやブランドン・イングラムなどリーグトップクラスの実力を持つタレントがいて、4カ月半におよぶ中断期間でパワーアップした彼らが、再開されたNBAで大いに活躍すると期待された。
だが、若さは可能性であると同時に不確実性でもある。マジックとの最終戦を残してはいるが、ここまで『バブル』で7試合を戦い2勝5敗。調子の悪かったグリズリーズとウィザーズに勝利したものの、東西の上位チームに対して大番狂わせは起こせなかった。
ザイオンは最終戦の欠場が決まっており、『バブル』での8試合のうち3試合を欠場したことになる。しかも最初の2試合はプレータイムに制限があり、試合勘を取り戻す調整にあてた。ルーキーではあってもエースとしての働きが期待されるザイオンが本調子でなければ、逆転でのプレーオフ進出は望めない。グリズリーズ、トレイルブレイザーズ、サンズが西の8位を巡って熾烈な戦いを続ける中、ペリカンズは早々に脱落してしまった。
こうなるとザイオンへの批判も出てくる。よく言われるのは「太りすぎ」との指摘だ。128kgの巨体でありながら俊敏な動きと高いジャンプのできる彼の身体能力はNBAでも突出したレベルにある。だがそれでケガが続くのであれば、もっと体重を軽くしてひざや足首への負担を減らすべきだ、という意見だ。
ザイオンは先日の会見で、その意見があることを認めながら、「戦う上でこの身体が必要だとコーチ陣と話し合った結果だ。僕がより良いプレーをするためには何が必要か、話し合って決めている」と反論した。
「ケガから復帰するのは大変だし、そこで上手くいかない部分もあった。その意味では僕を導いてくれたコーチ陣やトレーニングスタッフに感謝したい。僕は1分であってもNBAの試合でプレーできるだけで感謝しているんだ」
ザイオンはシーズン再開前に家族の事情で『バブル』を2週間離れたことで、コンディション調整が遅れた。それがなければ、また違った展開になっていたはずだ。
シーズンオフにザイオンは身体を作り直し、2年目のシーズンに備えることになる。『バブル』では不振に終わったペリカンズにも、また新たな可能性が出てくるはずだ。「僕たちはまだ粗削りだけど、ケミストリーはすごく良くなっていると感じている。楽しみながら継続していけばきっと大丈夫。僕たちの未来は明るいよ。ただ、そのためにはもっともっと努力が必要だ」との言葉で、ザイオンのデビューシーズンは幕を閉じた。ポテンシャルは感じさせたが、ケガに阻まれた1年だったのは事実。来シーズンの『完全燃焼』を誓い、彼は再びトレーニングに没頭する日々を送ることになる。