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些細な接触でファウルがコールされる現代の風潮に苦言

NBA優勝5回を成し遂げ、2016年に現役を引退したコービー・ブライアントは、現在のNBAはヨーロッパのリーグよりフィジカル面で劣っていると主張している。その主な理由として、2004-05シーズンからNBAが導入した『ハンドチェック禁止』のルールを挙げている。

現代のNBAでは、攻撃時の選手に対し、ディフェンス側が選手の身体に手と腕で触れることを禁じている。コービーはホスト役を務めるテレビ番組『Detail』で、「今はヨーロッパのバスケットボールの方がNBAよりフィジカルが強い。NBAはもっとフィジカル色を出す必要がある」と語った。

そのためにもハンドチェックを禁止すべきではないと、コービーは主張する。「フィジカルと言っても、昔のピストンズのように、相手にケガを負わせるようなプレーではない。そうじゃなくて、相手の身体に触れたり、軽いハンドチェックでファウルを取らないようにすべきだ」

コービーは、NBAのトレンドがNCAAにも影響を及ぼしているともコメント。「自分がNCAAの試合をほとんど見ない理由は、親指が相手の身体に触れただけでファウルを取られるからだ。勝敗がかかる重要な場面でのファウルになる可能性もある。そういうプレーを見ると気が狂いそうになるよ。もし自分が改革するのなら、その部分に真っ先に手をつける」

ハンドチェックに関しては、コービーの意見に近い話をするレジェンドが多い。1990年代の選手が、正確なジャンプシュートを武器に3ポイントシュート全盛期をもたらしたウォリアーズが彼らの時代にいても「恐れるに足りない」と言う理由は、ハンドチェックが許されたから。コービーがハンドチェックを禁止すべきでないと主張する理由は、なにも守備側の立場に立った場合だけではなく、オフェンス時の選手の技術向上にも繋がるからだという。

コービーは「もしハンドチェックが許されるなら、基礎的な技術をしっかり身に着けないといけない。ディフェンダーを抜き去るには、本当のハンドリングスキルが求められるからね」と語った。

過剰な保護は競技レベルの向上を妨げる、というコービーの発言には一理あるものの、NBAのマーケットはスター選手と、そのプレーを見たいファンで成り立っている。トップ選手を危険に晒すリスクを極力避けようとするリーグ側の意図も理解できる。非常に難しい問題ではあるが、これからもコービーはこの問題に向き合っていくに違いない。彼の熱意がルールを変える日は来るのだろうか。