文・写真=鈴木栄一

田臥の12得点を筆頭に攻守にバランスの取れた栃木

3月30日、栃木ブレックスが敵地の墨田区総合体育館でサンロッカーズ渋谷と対戦。持ち前の攻守における激しいプレーで流れを引き寄せると、第2クォーターで一気に突き放し、そのまま87-64と危なげない勝利を収めた。現在、チャンピオンシップ出場枠の最後の切符となるワイルドカード2位の座を争っている両チームだが、この勝利で栃木がSR渋谷とのゲーム差を3に広げている。

第1クォーター中盤、栃木は田臥勇太の得点で11-6とリードを奪うが、渋谷は終盤に杉浦佑成、ルーベン・ボイキンの連続3ポイントシュートで反撃。栃木の16-15と互角の展開でこのクォーターを終える。第2クォーター、栃木は20-20から渡邉裕規のシュートなどで連続7得点。これで流れをつかむと、さらに攻守の素早い切り替えからの的確なパス回してSR渋谷のディフェンスを翻弄。このクォーターで8得点を挙げた田臥を筆頭に、チーム全体で計18本中12本成功と高確率でシュートを沈め、45-26と一気に突き放して前半を終えた。

第3クォーター、反撃のきっかけを作りたいSR渋谷はロバード・サクレ、満原優樹とゴール下のアタックで得点を挙げる。しかし、栃木も内と外のバランスの取れたオフェンスで応じ、さらにリードを広げることに成功する。最終クォーターは田臥、喜多川修平の先発2人が出場なしとベテランを温存しつつもベンチメンバーが奮闘し、余裕の展開で同地区対決に快勝した。

「やってきたことを出せた試合でした」

この試合、栃木はチームトップの得点が田臥、ジェフ・ギブスの12得点など計7人が8得点以上をマーク。また、11得点12リバウンドのライアン・ロシターが8アシストと、トリプル・ダブルにあと一歩と迫る活躍を見せた。逆にSR渋谷はサクレが23得点と奮闘するも、他に2桁得点の選手はおらず後が続かなかった。

栃木の安齋竜三ヘッドコーチは、「(水曜日に行われた)東京戦では選手がプラン通りにプレーしてくれて、負けはしましたが今日につながるゲームでした。それだけに今日は本当に勝たないといけない中、僕たちがやるべきこと、やってきたことを出せた試合でした」と、28日に行われたA東京戦でつかんだ好感触をうまくつなげることができたと語る。

ただ、一方でもっとチーム力を高めることはできると、気を引き締めることの大切さも強調している。「まだまだ、突き詰めないといけないところがあります。ディフェンスでコミュニケーションミスや、ルーズボールに飛び込まなかったことなどありました。100%できることは不可能に近いと思いますが、やろうとしているか、どうかについてはまだまだ足りない。そこはもっとやれます」

完敗を喫したSR渋谷「1対1のバトルで負けた印象」

厳しい敗戦となったSR渋谷の勝久ジェフリーヘッドコーチは、個々の戦いで後手に回ったことが敗因だったと振り返る。「一つひとつのボールプレッシャー、リバウンドといろいろな部分での1対1のバトルで負けた印象がありました。そこは栃木のファイトを見習わないといけない」

そして、「オフェンスがうまくいかないことで相手に走られてしまい、ディフェンスが弱気になっているところが現実としてあります。オフェンスでアタックできないとディフェンスにも響く悪循環になる。そこは1対1の戦いから、もらいたいところでボールをもらう。アタックしたいところでしっかりフィニッシュまでいくところが大事です」と、巻き返しのポイントを挙げる。

図らずも安齋ヘッドコーチは、本日の2試合目に向けては「明日は渋谷さんも、もっとアグレッシブに来ると思うので、それに受身にならないで自分たちもさらにアグレッシブに行きたいと思います」と語っていた。両指揮官が言及したように、安定した守備を構築するためにもどちらがより攻撃で積極的にアタックできるかが勝敗を分ける大きな要素となりそうだ。