古川宏一郎

「新シーズンは視聴というところで仕掛けたい」

──リーグとしてのメッセージはこれまでも出してきたように思いますが、フェイズ2で変えるべきものはありますか?

何かを変えるというよりも、これまでの強みに加えて、新規ターゲットに合わせた新しいコミュニケーションが追加されていく、ということになると思います。これまでのBリーグのコミュニケーションでの強みで言うと、例えばリーグのロゴであったりもそうですが、 様々なプロモーションでのビジュアルなどのクリエイティブのレベルが高いと評価をいただくことが多いのですが、Bリーグ内部に優秀な専任のデザイナーを抱えていることが大きな要素の一つだと思います。内部にいることで、各部署の企画に込められた思いも汲むことができます。自分自身のバスケットボールへの情熱も込めて作ってくれていることもあり、クール&スタイリッシュという我々が目指す方向性も認知されていると思います。また『BREAK THE BORDER』というスローガンを合言葉に、若くて優秀な スタッフたちの意見を積極的に取り入れてきたことで、若い世代のファンの方々の共感を得られてきたと思います。

新しいファン層を獲得するために、これまでのアプローチを変えてコミュニケーションを全体的にそこにシフトするというよりも、新規で獲得したいファン層に対して、その層の価値観と重なる部分をターゲットとして、心に留めてもらえるメッセージを出していきたいと思っています。40代の人たちをターゲットとすれば、その世代の人たちの価値観で『クール&スタイリッシュ』だと認識してもらえるよう目指していくということですね。Bリーグに関心がない人にどう関心を持ってもらうかがチャレンジです。

──興味のない人に興味を持たせる、すごく難しいミッションだと思います。

興味関心を持っていない人を振り向かせるのに費やす時間とコストは膨大になります。興味関心が近い層を対象に、興味関心を持てるポイントをまずは探っていくことから始めたいと思っています。40代はスポーツ関心層としても大きいセグメントですので、まずはそこへのアプローチを狙っていきます。

電気自動車のマーケティングをやっている時に難しかったのは、環境に対する関心がそれほど高くない方々に、環境に優しいという部分を伝えてもなかなか振り向いてもらえないことでした。当時は価格が高い、走行距離が短い、充電できる施設が少ないという3つの購入障壁があり、これらを払拭するためのコミュニケーションを最初は行っていたのですが、ネガティブな要因はどういうコミュニケーションを行っても完全に払拭することはできないということです。お客様によっては懸念が解消できたとしても、ガソリン車と同じ土俵に立つだけで、そこからメリットの説明を始めるのでは購入に至るまで時間もかかり、なかなか難しい。日本全国の販売ディーラーを周り、電気自動車を購入されたお客様のお話をうかがったり、電気自動車の販売成績トップを収めている販売員の方々にヒアリングして、どのようにお客様にコミュニケーションしているのかを探りました。共通していたのは長所を伝えることに特化しているということでした。 静音性能、維持費の観点でガソリンよりも電気代の方が安い、といった部分ですね。

バスケも同じで、良い面やユニークな面にアプローチしていきたいです。関心を持っていない人に費やす時間とコストは膨大なので、そこはスポーツに関心がある層を狙っていきます。

今シーズンは、新型コロナウイルスの影響もあり、アリーナでの生の観戦の迫力や臨場感といったところを前面に訴求することが難しい状況ではあります。ですが新シーズンは視聴というところで仕掛けて、他のスポーツとの違いを出していきたいと思っています。

Bリーグはまだまだ新しく、成長しているリーグですし、男子日本代表としてもアジアで多くの強豪がいる中で、将来有望な選手も多く生まれ、これからさらに上位ランクをうかがうことができる位置に来ていると思います。今のバスケファン、Bリーグファンの方々は、これからの成長の軌跡を追っていくことができると思うんですよね。これからさらなる成長を楽しみにしていただきたいですし、ファンの方々と是非一緒に作っていきたいです。