文=鈴木健一郎

「出だしでどれだけ相手のバスケットを抑えるか」

今シーズンのWリーグで台風の目となったデンソーアイリス。昨シーズンはレギュラーシーズン5位と平凡な成績で終え、プレーオフではセミファイナルでJX-ENEOSサンフラワーズに敗れると、昨夏には15人中7人が新人選手となる大幅なチーム刷新を行った。結果を出すには時間がかかるとの予想に反し、エースの髙田真希を中心に若いチームは結束し、レギュラーシーズン26勝7敗の2位と躍進。皇后杯でも準優勝しており、新チームがいきなり結果を残している。

先日、4強進出チームのキャプテンが集まって行われた会見で、髙田は今シーズンの躍進について「今までいた選手が着実に成長してくれたからこそ、そこにプラスアルファで新人選手が自分たちのパフォーマンスをしてくれてのレギュラーシーズン2位だと思います」と語った。

あとは今週末、丸善インテックアリーナ大阪(大阪市中央体育館)でのセミファイナルとファイナルがシーズンの総決算となる。プレーオフはすべて一発勝負というレギュレーション、トヨタ紡織を破ったクォーターファイナルでも「一発勝負の緊張感がありました。相手の気持ち、雰囲気も含めて違ったものがありました」と髙田は振り返る。

若いチームだけに、シーズン最後の2試合を勢いで乗り切りたいところ。トヨタ自動車アンテロープスと対戦するセミファイナルについて「レギュラーシーズンは2勝1敗で勝ち越し。一発勝負なので出だしがすごく大事で、出だしでどれだけ相手のバスケットを抑えて、自分たちのリズムでやれるかだと思います」と髙田は言う。

大神とは「一緒のコートに立てる喜びをかみしめながら」

チームの仕上がり具合についてはこう語る。「良いと言っていいのか悪いと言うべきなのか、開幕当初から比べると断然良くなっていますけど、勝ち切るためには精度を上げたり、やりきることを徹底しないといけないです。そういった部分で、まだまだできるという物足りなさはあります。でも、ここまで勝ち抜いているのは自分たちの実力でもあるので、まずまずですね」

開幕前から十分な手応えを感じていた髙田にとって、ここまでの躍進は当然と言えば当然。周囲からサプライズチームと称賛されてもあまり意味はなく、シーズン最後の週末でどんなパフォーマンスを見せ、どんな結果を残すかがすべてなのだろう。

その上で『出だしが大事』を言葉だけでなく実践もしている。「気持ちの準備は練習からやらなければいけないので、常にその日の練習の入りをしっかり意識するようにしています」と髙田は言う。「ここからは気持ちが大事です。うまく行かなかった時に下を向くんじゃなく、やられたらやり返す気持ちも必要で、それを練習の5対5から出せるよう意識しています。そういった意識については、クォーターファイナルの前からすごく言うようにしています」

そうやって選手一人ひとりの意識の向上をうながしながらも、肝心の部分では自分がエースの期待に応える働きをする、という気概も髙田にはある。「立ち上がりの気持ちを見てもらいたいですが、若い選手が多いのでやってみないと分かりません。悪い流れになった時に、それをすぐ断ち切るのが自分の役目だと思っています。そこでどうやって声を掛けるか、どういうプレーをするか。そこは経験のある自分が流れを読んでチームを引っ張っていきたい」

桜花学園の先輩でもあり尊敬する大神雄子の現役ラストということもあり、注目はどうしてもトヨタ自動車に集まる。だが、ここで譲歩するつもりはない。大神については「一緒のコートに立てる喜びをかみしめながらプレーしたい」と髙田は言うが、勝って引退させないのも恩返し。名実ともにリーダーとしてデンソーを引っ張る髙田のプレーに注目したい。