
2023-24シーズン、4勝56敗でB1最下位となりB2に降格した富山グラウジーズ。悪夢から1年、浮き沈みを経験しながらもB2優勝(アルティーリ千葉との同時優勝)に輝き、最短でのB1復帰を果たした。常に富山の中心にいる宇都直輝に昨シーズンの振り返りと、新シーズンへの展望を聞いた。
「水戸さんをB1の舞台に戻せたのがうれしかった」
──B2優勝とB1復帰おめでとうございます。少し時間が経って振り返ってみると、どんなシーズンでしたか?
ありがとうございます。チームとして右肩上がりに良くなっていったシーズンでした。自分自身もプレーオフに焦点を合わせてやれたので、本当に充実したシーズンになりました。
──確かにプレーオフで宇都選手のギアは一段も二段も上がっていると感じました。どのような気持ちで戦っていましたか?
正直なところ、その前の降格したシーズンはチームに合流するのが遅かったこともあって、気持ち的に「自分が背負う」と思えない部分もありました。本当に申し訳ないですけど、チームがB2に落ちていくのをただただ見ていたみたいな感覚もありました。どうにかしようという気持ちは当然ありましたが、今まで経験した入れ替え戦や降格プレーオフの時のような『絶対に残留する』という気持ちよりも、一歩引いたところから見ていたシーズンでした。
それもあって、本当にチームをB1に戻したい気持ちは人一倍強かったですし、1年でしっかり戻せたのでホッとしました。富山は2026年からBプレミアに参入するので、今シーズンB2だったとしてもトップリーグに戻ることは決まっていましたが、最後のシーズンをB1で過ごすのはチームにとって大きいことだと思っています。
──昇格が決まったライジングゼファー福岡戦の最終盤、フリースローの場面で涙を浮かべていました。それだけ背負っていたものが大きかったのだろうと思いながら見させてもらいました。
あれは自然と出てきた感じでしたね。昇格の安堵もありましたけど、1本目を打つ時は我慢していて、打ち終わってみんなとハイタッチするために後ろに振り向いたら、水戸(健史)さんが交代で入ってくる準備をしている姿が見えて、それで涙が止まらなくなっちゃって……。チームの昇格もうれしいですけど、僕は水戸さんとずっと一緒にやってきたから、水戸さんをB1の舞台に戻せたのがうれしかったですね。
──ファイナルはアルティーリ千葉との対戦でした。もちろんB2優勝を目指していたと思いますが、B1昇格を達成した後で気持ちを保つのも簡単ではない部分もあったかと。どんな意気込みで試合に臨みましたか?
『絶対に優勝するぞ』という気持ちよりも、多くてあと3試合、少なければあと2試合で終わるので、2チームしか味わうことができない状況を『楽しんでいこう』という感じでした。とにかく1戦目を気合い入れて取りに行こうと考えていました。

「ダビーがしつこいから全員でやり切れた」
──宇都選手個人だけでなく、チームとして楽しんでいくという雰囲気でしたか?
ダビー(・ゴメスヘッドコーチ)がみんなに言ってましたね。B1復帰はクリアしたので、「楽しくプレーできれば俺たちなら勝てる」って。アルティーリさんのほうが負けられないプレッシャーがあるから、思いっきり楽しんでやったら勝てましたね。第2戦は温存とかも考えて戦って、第3戦で勝負だと思ったら停電で試合がなくなっちゃいましたけど。
──その雰囲気や流れであれば、第3戦はやりたかったですね。
そうですね。そのために第1戦を絶対取りにいく気持ちで臨んだので。そもそもアルティーリさんに2連勝する発想がなかったんですよ。例えば、1戦目を取られてしまうと、2戦と3戦で連勝するのは難しい。逆に1戦目を取れれば、2戦目を落としても3戦目がある。1戦目と2戦目の連勝もないし、2戦目と3戦目の連勝もない。1戦目と3戦目で勝つプランで、その通りに進んでいました。
──最終的な結果も出せましたが、それと同時にトランジションやセカンドチャンスなど自分たちのやりたいバスケをシーズンを通じてやり切った印象です。特にプレーオフはスタイルを徹底できていました。最後までやり切れた要因はなんでしょうか?
ダビーがしつこいからじゃないですか(笑)。本当に徹底していて、ダメなことはダメと怒られるし、ひたすら言われ続けたから、それに対してやるべきこと、やってはいけないことを理解してプレーできたのが要因かと。ダビーはどの選手にも同じだけの熱量で言うから、選手同士も助け合わなきゃいけないです。実際にダビーがダメと言うこと自体は正しいので、それを受けて選手間でいろいろと話し合って、指摘し合うことでコミュニケーションが生まれたので、チームとしては良かったですね。
──ゴメスヘッドコーチの熱さは試合だけでなく練習でも同じということですね。
まぁでも、ダビーはただ怒るだけではなく、プライベートでは食事会を開いたりもしてくれたりして、みんなから嫌われるようなことは全然なかったです。試合や練習とプライベートでメリハリがしっかりあって、バランスよく関係が築けていたと思います。

「応援されるべきチームを作ってこそ」
──今シーズンは2シーズンぶりのB1となります。プレッシャーよりも楽しみが勝りますか?
本当に楽しみですね。降格がないからというわけではないですが、当たって砕けたとしてもまた組み直せるシーズンです。いろんなB1の選手たちとマッチアップできるのも楽しみですし、シンプルに強いチームと戦うことができるのは楽しいです。
──外国籍選手と帰化選手が全員入れ替わるなど、ロスターに変動がありました。どんなバスケを見せていきたいですか?
昨シーズンより速くしたいとダビーと話しています。ガードに岡田雄三選手や、長身で外が打てる宮本一樹選手が入ってきたので、彼らの出ている時間を増やして、テンポを良くしていきたいですね。あとは、外国籍選手も外を打てるので楽しみだなと思っています。やっている練習は大きく変わらないので、これまでやってきたことの質を上げていければと。
──宇都選手個人としては、どのようなプレーをしていきたいですか?
バスケットの幅を広げていくのは常に思っていることなので、苦手なアウトサイドを克服することは重要になってきます。なんだかんだでポストアップやドライブで得点できてしまうんですが、年もとってきて疲れるので(笑)。アウトサイドで得点ができれば、もう少し負担も減ると思います。
──アウトサイドも重要ですが、ドライブやボールプッシュなど宇都選手のアグレッシブなプレーをブースターは期待していると思います。
良い意味でエゴを出していければと思っています。自分のアグレッシブなプレーで熱さを出していきながらも、ベクトルを間違えないようにしなければなりません。自分をコントロールしつつ、しっかりとまわりを見てやっていけたらいいかなと。
──個人やチームとしての目標はありますか?
あまり個人の目標は決めないのですが、例えば世間が見た時に『今シーズンB1で印象に残った10人』とかに入れるぐらいのインパクトを残せるシーズンにしていきたいですね。チームとしては今の時点で優勝以外を語るチームはないと思うので、優勝ですね。
──今後、Bプレミアへリーグは移っていきます。富山グラウジーズをどういうチームにしていきたいですか?
強いチームはカルチャーがしっかりあると思います。グラウジーズとしてのカルチャーを将来に向けて作っていかなければなりません。ただ、現状は環境面などの問題もあって長くチームに在籍する選手が多くないチームになっているので、僕のような選手がしっかりと伝えていく必要があります。
──では、最後に応援してくださっている方へメッセージをお願いします。
いつもは「応援お願いします」と言ってしまうのですが、やはり自分たちで応援されるべきチームを作ってこそ、応援してもらえると思っています。また今シーズンの僕たちを見ていただき、応援するにふさわしいと思ってもらえるように頑張っていきます。