アルバルク東京の主将を10年務めた正中岳城、誰よりもプロフェッショナルだった男の最後の言葉

アルバルク東京の主将を10年務めた正中岳城、誰よりもプロフェッショナルだった男の最後の言葉

2020/07/07

正中岳城

今シーズン限りでユニフォームを脱いだアルバルク東京の正中岳城。Bリーグが誕生したことでほとんどの選手がプロ契約を結ぶ中、正中は数少ない社員契約でのプレーヤーだった。それでも、「社員選手だからと言って、アマチュアの選手としてプレーしていたわけではありません」と断言するように、正中は誰よりもプロフェッショナルな姿を見せ続けた。13シーズンのキャリアに終止符を打った正中に、選手として最後のインタビューを敢行した。

「このチームでやり続けたいという気持ちが大きかった」

──引退会見も終え、文字通り選手としての最後を迎えますが、あらためて感慨深いものはありますか?

今はもうないですね。バスケット選手らしい感じで過ごしていないので。ロッカーの整理とか、体育館を離れたり、そういうところでリアルな終わりを感じました。さよならなのか分からないですけど、大事な区切りという感じですね。

──正中選手は数少ないアマチュア契約だったと思います。バスケ以外の仕事も並行してやっていたのでしょうか?

トヨタ自動車の業務はしていないです。Bリーグの契約で言うと、バスケットボールチームオペレーションというところに所属して、バスケットボールを主たる業務として行う会社に出向していた形です。社業そのものがバスケットなので、社業をしていたと言えばしていたことになるかもしれないですが、バスケットの仕事だけです。

──そういう意味では他の選手に比べて、トヨタ自動車愛は大きかったりしますか?

他の選手がどう思っているか分からないので比較はできないです。どちら側という『側』はチームにも会社にも存在しないので、特別な感情はないですね。

──あらためて、なぜ社員契約を選択したのでしょうか?

Bリーグになる前は全員がプロではなく社員選手で、嘱託選手か正社員選手でやるかの2つでした。Bリーグになってプロ契約とアマチュア契約があって、そこでこれまでと同じ立場で同じようにプレーできる環境が整っていたので選びました。プロになるかどうかという選択肢がなかったので、これまでと同じようにやらせてもらいました。

──リーグが成長し、選手の待遇も向上しました。その中で他チームでプレーすることを考えたことはないのですか?

お金というところでの判断基準は持ってなかったですね。このチームでプレーできるかが大事でした。

──プロ選手にとってサラリーは選手の価値を決める物差しになると思います。今の選手たちはそういった情報を天秤にかけて、クラブを選択することも多いようです。

それがリーグが目指す『夢のあるリーグ』としての姿なので良いことだと思います。僕もこれまでと同じような立場でできなかったり、もうプレーできないと言われたら多分考えた道だと思います。ただ、こうした環境を用意してもらえたので他の選択肢を持っていなかったです。

お金のために移籍するという発想を自分の中で持っておらず、今ハッと気づかされるくらいです。当時はどのようにリーグが発展していくのか見えなかったところもあるし、あまり自分に対して自信を持てていなかったからこの道を選んだかもしれないですね。ただ間違いなく言えるのは、このチームでやり続けたいという気持ちが大きかったということです。

正中岳城

10シーズン務めた主将「一つ自分にマルを付けられる」

──田中大貴選手を始め、チームメートが正中選手のバスケへの向き合い方を常に称賛していました。社員選手でありながら、誰よりもプロフェッショナルとして影響を与えていたと思います。

プロフェッショナルかどうかは分からないですけど、このチームでプレーすることはどういうことか、どうあるべきかということと向き合ってずっと取り組んできました。このチームで優勝を目指してやっていく一員としてこうあるべきだという当然のことをやってきたつもりなので、そういう姿勢が良い影響として何か与えることができたとしたら良かったです。プロフェッショナルはチームメートや周りに良い影響を与える存在だと思っているので、一つ良い仕事ができたのかなとは思います。

もしかしたらですけど、10シーズンキャプテンを任されたのはそういうところで認めてもらえたからかもしれません。「あいつじゃどうしようもない」と言われなかったことは、一つ自分にはマルを付けられるのかなと。

──強豪と呼ばれるチームがある中で、A東京はその筆頭に挙がるかと思います。普通のチームとA東京は何が違うのでしょう?

僕はこのチームしか知らないので、他のチームと比べての違いは分からないです。ただ、クラブもバスケット界を引っ張るチームでありたいと明確に伝えていて、このリーグで代表的なチームを挙げろと言われた時にアルバルクが挙がるようでありたいと思ってみんなプレーしています。

優勝争いの中心にいたいと思って毎シーズンを迎えていて、僕がルーキーとして入った当時からそういう文化がしっかりありました。きっといろいろな先輩と歴史によって作られたものだと思います。そういう気持ちでやってきたし、皆にそういう気持ちがあると思います。それがアルバルクというチームなんだと思います。

正中岳城

「コーチが難しいことだけは知っています(笑)」

──今後の業務はどういったことをするのでしょうか?

トヨタ自動車の渉外広報本部内での勤務になります。会社が関わるいろんな業務に広く大きく携わることになります。

──引退会見時に「バスケ界にいずれは還元したい」と言っていました。それに関して、見えているものはありますか?

こういう状況ですし、まだ分からないです。何かバスケット界に必要とされるのあれば、アルバルク東京というチームを中心にして全方位的に関わるチャンスは持っていたいと思います。

特にルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチと多くの時間を一緒にしてきて、コーチがどれだけエネルギーをかけて、神経をすり減らして向き合わないといけないかを一番近くで見てきました。全方位的にとしか言えないですけど、コーチが難しいことだけは知っています(笑)。

──確かにルカコーチの激しさを誰よりも近くで見てきましたもんね。もともと指導者の道も考えていたのですか?

教員や顧問としてバスケットを教えたいと思った時期もありました。こうやって専門性の高い場所でバスケットをしていくと、そういう選手を対象に教えたいという気持ちにもなりましたけど、ルカを見ていたらやっぱり無理だって思いますね(笑)。

──なんとなく分かる気がします(笑)。あらためて、最後にA東京のメンバーへメッセージはありますか?

これまでやってきた選手もいるし、戦術もあるし、今まで積み重ねてきたモノもあるので、彼らに関しては心配いらないのでもう何もないですね。ただ、全部がこのままでいいわけではないはずなので、より良いチームになっていくために、どういうプロセスで自分たちに向き合って戦っていくかがすごく楽しみです。

──ちなみに会見で自分にできることがあればサポートすると発言していましたが?

今は求められてないですからね。何かあったら言ってくれればいいですけど、みんなちゃんとやりよるから(笑)。

──逆に安心ですね(笑)。ではリーグに向けて、本当に最後のメッセージをお願いします。

Bリーグ開幕から4シーズンが経ち、ワールドカップ出場にオリンピックがあって、良い成長曲線を描いてリーグは成長してきました。スポーツ界全体に言えることだと思いますが、今は難しい局面を迎えています。それでもサッカーやプロ野球にないものをリーグ全体で見つけて、チームや一人一人の選手は進んでいかないといけないと思います。僕もそれに関わった人間として、どうゆうことができるかを考えていきます。応援したいという距離感ではなく、自分もその力になって、まずはこのリーグを見続けていこうと思います。

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