森井健太

森井健太は早稲田大3年時に特別指定選手として加わった新潟アルビレックスBBで3シーズン半を過ごした。経験がモノを言うポイントガードのポジションで、五十嵐圭、柏木真介と百戦錬磨のベテランとともにプレーし、今シーズンは41試合すべてに出場して、うち12試合で先発を務めた。平均プレータイムは新潟の日本人選手では4番目に長い20.6分に。若返りを図るチームで立ち位置を確保していたが、今オフに横浜ビー・コルセアーズへの移籍を決めた。その彼に今の心境と今後の目標を語ってもらった。

「今回の移籍は、理想に近づくためのチャレンジでもあります」

──新潟で出場機会を伸ばしていただけに、このタイミングでの移籍は少々驚きました。

正直な話、新潟を出ることは本当に悩みました。特別指定も含めて大学3年生の頃からプレーしていますが、この4年間でたくさんの経験をさせてもらって、チームにはすごく感謝しています。それにルーキーの頃からチャンスを与えてもらい、徐々に信頼を勝ち取ってプレータイムも伸びていたので、それを手放すのかと悩みました。

ただ、今後のことを考えた時に、違う環境でチャレンジしたい思いが強かったです。もちろん、新潟もヘッドコーチやロスターも代わって、ずっと同じ環境というわけではありません。でも、今まで新潟で頑張ってきたことを違うチームでどれだけ発揮できるかチャレンジしたい、さらに自分を磨きたいという思いが強く、移籍することに決めました。

──「自分を磨きたい」とのことですが、どのようなポイントガードになりたいと考えていますか?

僕が思う良いポイントガードは、どんなコーチにも使われて、信頼される選手です。例えば「このスタイルならこの選手だけど、こっちの時はダメ」という選手にはなりたくなくて。どこに行っても、どんなコーチの下でも信頼されて、コンスタントに結果を残すポイントガードが僕の理想です。今回の移籍は、その理想に近づくためのチャレンジでもあります。

──新潟で3シーズン半を過ごす中で、一番成長した部分はどこでしょうか?

若手のポイントガードはなかなかプレータイムをもらえないことが多いですが、僕は恵まれていてプレータイムをたくさんもらえていました。試合に出るのはうれしかったですが、それと同時に責任感を養うこともできました。ポイントガードは結果が求められるポジションで、そういった責任感は学生の頃とプロとでは全然違います。プロの世界でずっと生きてきている先輩方を新潟で見てきて、普段の生活や試合への取り組み方なども勉強させてもらいました。

森井健太

「外国人ヘッドコーチの下で自分の引き出しを増やしたい」

──移籍先として横浜を選んだ理由を教えてください。

まずは僕を必要としてくれているのがすごく伝わってきたこと。それと、僕は日本人のヘッドコーチの下でしかバスケットをしたことがなかったので、外国人ヘッドコーチの下でチャレンジしたいと思いました。僕はヨーロッパのバスケットが好きで、リッキー・ルビオとかファクンド・カンパッソのプレーをよく見ているんですが、どのポイントガードもすごく上手なんですよ。僕の持ち味はアシストだと思っていますが、ヨーロッパでは独創的なパスだったりプレーのアイデアが素晴らしく、「どんな感じなんだろう?」と気になっていました。横浜の新しいヘッドコーチはヨーロッパでの経験が豊富で、試合映像を見ていても、速くて5人が連動したバスケットをする印象があります。そういうバスケをやってみたいとも思いましたし、外国人ヘッドコーチの下で自分の引き出しを増やしたいとも思いました。

──Bリーグ開幕以降の成績を見ると、横浜は新潟よりも結果を出せていません。「勝てるチーム」という選択肢ではないと思いますが、優勝を争うようなチームで揉まれたいという思いはなかったのですか?

もちろん、強いチームで揉まれることも一つの選択肢だと思います。ただ、僕の中でのすごいポイントガードは、チームを勝たせるポイントガードです。それこそ新潟では、圭さんや柏木さんといったJBL時代から日本を背負ってきた素晴らしいポイントガードを間近で見てきました。特に柏木さんは、アイシン(シーホース三河)で日本一を何度も経験したポイントガードで、チームを勝たせる方法を知っていることは練習を見ていても分かります。僕も横浜でチームを勝たせられるようなガードになりたいし、「森井が入って勝てるようになった」と言われるようになりたいです。

今シーズンの横浜を見ていても、徐々にディフェンスの強度が変わってきていたりと、チームとして良い方向に進んでいるのを感じていました。メンバーも変わって、クラブからは「若い選手中心の方針で行く」と聞いているので、みんなで力を合わせれば今シーズンよりももっと上にチャレンジできると思っています。

──新潟では「自分が勝たせた」という実感を得ることは、あまりなかったですか?

昨シーズンに地区優勝した時は、僕も試合に出させてもらっていました。ただ、あのシーズンは圭さんと柏木さんがゲームをしっかりとコントロールしていて、2人を見ていて「すごいな」と思う部分があって、僕も2人のようにならなければいけないと感じました。ルーキーの頃から圭さんや柏木さんと一緒にプレーできたことは、僕にとってすごく大きいことですし、僕にしか経験できなかったことだと思います。2人とも全く違うタイプの指令塔で、圭さんは大事な場面での決めきる力やそのための気持ちがすごくて、メンタルの部分について学びました。柏木さんは、自分のスタッツには表れないプレーの大切さ、自分主導じゃなくても仲間がプレーしやすくなるゲームメーク術を学びました。これからは2人の良いところを真似しつつ、自分の良さを出していきたいです。

──来シーズンは五十嵐選手と柏木選手と対戦することになりますね。

すごく楽しみですし、やるからには倒したいです(笑)。

森井健太

「新潟でしか味わえない素晴らしい経験をさせてもらった」

──横浜からはどんなことを求められていますか?

新しいヘッドコーチがディフェンスに重きを置くコーチで、自分のディフェンス力に期待していると言われました。後はゲームコントロールの部分で、ゲームを落ち着かせること、良い配球をすること。外国籍選手が3人いるのでより良い位置でボールを持たせてあげたり、5人で上手くボールムーブメントできるようにしてほしい、と言われています。そこを強調しつつ、アップテンポな展開も得意なので、どんどん出していきたいですね。

──理想のポイントガード像は聞きましたが、今後のキャリアプランは考えていますか?

うーん……。それこそ圭さんは40歳になりましたけど、自分がそこまでやっているイメージは全くないですね。すごいとしか言いようがないですよ(笑)。

──それこそ一緒にいた3年半、五十嵐選手も年齢を重ねてきたわけですが、近くで見ていてそれを感じたことはありますか?

ないですね。僕が小、中学生の頃に、圭さんは日本代表で活躍していたんですけど、その時のイメージと今もほとんど変わっていないです。プレーもそうですけど、まず顔が変わらないですからね(笑)。本当にそこはびっくりですよ。逆に僕はよく老け顔と言われてイジられていました(笑)。

──最後に新潟ファンの皆さん、横浜ファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

新潟のファンの皆さんには、大学3年生の頃に右も左も分からない状態で入った僕に対して、どんな時でも温かい声援やサポートをしてくださって、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。アオーレ長岡でのディフェンスコールなど、新潟でしか味わえない素晴らしい経験をさせてもらいました。これからも活躍できるように頑張るので見守ってください。

横浜ファンの皆さん、僕の持ち味はハードにディフェンスをすること、どんな時でもアグレッシブなプレーをすることなので、そこを見てほしいです。横浜の勝利に貢献できるように頑張りますので、よろしくお願いします。

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