文=鈴木栄一 写真=鈴木栄一、野口岳彦

琉球に『勝者のメンタリティ』は根付いたか

琉球ゴールデンキングスは先週末、ホームの沖縄市体育館で大阪エヴェッサ相手に連勝を収めた。この2日間、琉球はともに前半はローコスアで推移するも、後半に入って地力の違いを見せるかのように猛攻を仕掛けて勝利。特に3日の試合については、前半を終え19-27とオフェンスが沈黙したが、第3クォーターに27-7と圧倒して逆転勝ちを収めた。

今節から坊主頭になってブースターを驚かせた古川孝敏を個別の取材で呼び出すと「バスケット・カウントさん、どうせ頭のことをイジるんですよね(笑)」と先制パンチ。もちろんそこはイジるのだが、「理由は特にないです。単純にすっきりしたかったです」とのこと。

すっきりした髪型で勝利した2試合について「自分たちは出だしからリードを奪っていくのが得意なところで、なかなか重い展開ではありました。乗り切れないところがありながら、2日間とも勝てたことは良かった」と振り返る。

古川が言うように、琉球の持ち味の一つには、オン・ザ・コート「1」で臨むチームが多い第1クォーターに日本代表アイラ・ブラウンという大きな強みを生かして主導権を握る、先行逃げ切りパターンがある。しかし、今回の2連戦では前半に苦労してもしっかり我慢することで、後半の猛攻につないだ。

劣勢でも動じることなく、40分間の中できっちり勝ちへとつないでいく。琉球にはそうした『勝者のメンタリティ』が根付きつつあるように感じるが、古川はまだまだという考えだ。「シーズンが始まった当初に比べれば雰囲気は違いますし、戦っていく中で押さえるべきポイントはみんなが意識し始めて、やれる部分は多くなりました。しかし、そこをもっと突き詰めてコートに出ている5人だけでなく、チーム全員が理解しながらやっていきたい。もっとやっていく必要はあります。ネガティブなことは言いたくないですが、『勝者のメンタリティ』には到達していない。良い時は良いのですが、それをどれだけ出し続けていけるのか大事です」

「立ち止まるわけにはいかない」という覚悟

言うまでもなく、古川は琉球の中心選手であると同時に日本代表の常連でもある。代表活動はBリーグでのシーズン終了後に再開となる。これでリーグ戦を戦いながらの代表合宿という過密日程からは解放されるが、古川にとっての代表との向き合い方に変化はない。

「代表は代表、チームはチームという区切りではなく、一つにつながっていると考えます。結果を残せなかったことには責任を感じますが、立ち止まるわけにはいかない。結果を踏まえてチームのために何ができるのか、個人としてどう成長していけるのか。きっぱり割り切っている感覚ではないです」

古川が現在抱えている課題で言えば、琉球と日本代表の両方で、堅実なディフェンスでは貢献するものの、昨シーズンのチャンピオンシップMVP受賞をもたらした得点力が長く影を潜めている。琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、「ディフェンスは頑張っています。ただ、オフェンスでシュートが入らなかった時、どういう仕事をするのか」と、今の古川に疑問を投げかける。

「はっきりしたスペーシングを取るのか、中にカッティングするのか。そういう意味では田代(直希)の評価は高いです。いつでも縦の動きをしてくれる。石崎(巧)も点数は取らないですけど、縦の動きをしてくれる。そういう動きをしないと、相手としては守りやすいです」

「古川は点取り屋で、点を取らないと気持ち的に乗ってこないところもあると思います。そして、縦の動き、オフェンスリバウンドに飛び込むとかは、シュートという自分の仕事ができてない中で難しいのも分かります。それでも古川がスタッツに残らないプレーをどう行っていくのか、それが彼の成長につながっていきます」。大学時代から古川を知る佐々だけに、その指摘は的を得ている。古川には耳の痛い言葉かもしれないが、良い気づきになるに違いない。

「代表でも個人として結果を出せなかったところはある」

古川自身は現状について、「フィニッシャーとしての役割は意識していますが、こだわりすぎても良くない。他にもできる選手がいます。ウチは全員で攻めるバスケをやっていて、『自分が』よりも『チームでどうやっていくか』が大事です」と語る。

ただ、進化に貪欲な姿勢は今も変わらない。「自分に足りない技術はあります。30歳となり年齢的にすべてを大きく変えることは不可能に近いですが、ダメだとも思っていないですし、少しずつ変化をつけていきたい。向上心は持ち続けています。代表でも個人として結果を出せなかったところはあるので、もう一回見つめ直して、そこを常に意識していきたい」

レギュラーシーズンも残り20試合といよいよ終盤戦に突入する。「シーズンの最初は『当たって砕けろ』のような勢いはあっても、うまくコントロールできない部分がありました。そこからチームとしてのコンセプトを2日間、40分間どう実行していくのか。誰にアドバンテージがあって、誰がどこで何をできるのかなどを、みんなで意識できるようになってきています。それをもっと明確にしていくためにも、コミュニケーションを取っていかないといけないです」

琉球の進歩、今の課題をこのように見ている古川が、これからどんなプレーであり、リーダーシップでチームをさらなる高みに導いていけるのか楽しみにしたい。