2019-20シーズン、BリーグからNBA入りを目指した馬場雄大はテキサス・レジェンズと契約し、Gリーグの舞台で戦った。シーズン序盤はプレータイム確保に苦戦したが、次第にコーチの信頼を勝ち取ると、41試合に出場し平均19.8分のプレータイムで、6.3得点、2.5リバウンド、1.3アシスト、1.0スティール、3ポイントシュート成功率41.1%を記録した。新型コロナウイルスの影響でシーズンは中止となり、帰国した馬場に1年目の挑戦を振り返ってもらった。
「ウイングの選手の1on1のスキルはリスペクトに値する」
──海外挑戦の最初のシーズンが終了しました。振り返るとどのようなシーズンでしたか?
基本的に1年目は慣れるというか、フィットすることを大事にして、数字ではなくどうやればチームに貢献できるかを考えながらプレーしていました。
──GリーグはBリーグよりもスタッツが求められると思いますが、数字に関しての評価はどうでしょう?
リーグを知ることを前提にプレーしていたという意味ではBリーグと同じですね。アメリカ人以上の数字を残さないといけないと思っていますが、スタッツを稼ぐ意識でプレーしてはいません。練習の成果もあって、3ポイントや2ポイントの確率は上がりましたが、まだまだ納得していないです。それでも夢から目標になった、NBAが見えてきて次に繋がるシーズンになりました。
──3ポイントシュートの向上が顕著に表れていましたが、成功率以上にBリーグの時よりも積極的に打つ姿勢が目立ったように感じます。アテンプトの意識は変えましたか?
リーグの流れとしてボールを持ったらまず攻める、自分の得点を重視するというのがありました。ノーマークを探すだけじゃまずいと感じて、シュートを常に意識するようになりました。そこの迷いは試合ごとになくなって、確率向上に繋がったと思います。周りのプレーヤーからも「入るのに何で打たないんだ」と言われ続けました。自信を持たなければと、意識から変えましたね。
──結果は残せたと思いますが、課題となるのは具体的にどういったところでしょうか?
ディフェンスで安易に抜かれたケースもありましたし、「あいつにつかれたらヤバい」と思われないとダメです。守るなら徹底的に守らないとと思いました。特にウイングの選手の1on1のスキルはリスペクトに値するほどで、そこで僕が食い込むにはディフェンスと走るプレーだなと感じました。
あとは状況判断、ピック&ロールのクリエイトの部分です。自分のマークマンの反射神経が半端ないですし、守備範囲が広いので。Bリーグとはウイング陣のレベルが比べ物にならないと痛感しました。その中でこのパスコースは見えてるけど、ミスを恐れて出せないこともありました。
楽しみは食事「日本食を食べて、また頑張ろうって」
──海外挑戦する日本人選手は総じてコミュニケーションの部分で苦労すると感じます。馬場選手はルーキーのダンスチャレンジで優勝するなど、積極的にコミュニケーションを取っていたように感じますが、そこでの苦労はなかったですか?
もともとこういう性格なので、それが生きたとは思います。ただ、選手とコミュニケーションを取るにはプライベートを知ることが大切だと思うのですが、言葉の壁もあってそれができずに苦労したのはあります。
──なるほど。そうした苦しい時に相談できる相手はいましたか?
伊藤拓摩さんがレジェンズのコーチをしているので、本当に苦しかった時はご飯に連れていってもらって、相談しました。12月中旬のラスベガスのショーケースの時に、(渡邊)雄太とご飯に行ったんですが、その時に大変だって打ち明けました。「俺も今、グリズリーズで苦労してる。お前の気持ちは分かる」って言ってくれて。近い存在がいることを感じられたし、それを聞くだけで安心しましたね。
──大いなる夢があるからこそ頑張れると思います。それでも時には息抜きも必要で、どのようにリフレッシュしていましたか?
アルバルクにいる時から食事を大切にしていたので、自分でリサーチして日本食のお店さんに行くのがリフレッシュでした。日本食を食べて、また頑張ろうって。空いてる時間は英語の勉強をしてましたし、完全なオフの時間はほとんどなかったですね。映画を見るのも英語で見ていたので、リラックスにはなってなかったです(笑)。でも、そこまでストレスを溜めずにやれていたので、娯楽が絶対に必要とまではならなかったです。
──日本に帰ってきてあらためて良いと思うことはありますか?
やっぱり一番は食事ですね。繊細さを味わえるのは日本だけだなと。最近は鯖寿司にハマっています。あとは味噌汁にもこだわっていますね。
「誰でも期待をしてもらえるわけじゃない」
──NBAでさえシーズンの再開が不透明ということもあり、当分は日本で来シーズンの準備をすることになりそうですね。
そうですね、アメリカのシーズンがどうなるかによって行動も変わっていきます。過去にここまでバスケに触れない期間はなかったので困惑はしますが、次に全開でやれるよう身体を休めています。NBAに行くための休憩だと思って、今は割り切っていますね。
アメリカで空中で押し負けるケースがあって、身体のコアの部分をもっと鍛えれば、もっと戦えるって思ったんです。トレーニングもやりにくい状況ではありますが、逆に体幹を徹底的に鍛えられる時間になっています。
──どんな状況でも前向きですね。今シーズンはGリーグでやれることを証明しましたが、来シーズンはNBAに定着するためのチャレンジとなると思います。そこで必要になってくることは何でしょうか?
NBAでプレーしてる選手は「自分の強みはこれだ」というのが最低一つはあるのですが、満遍なくできる選手はあまりいないと思っています。なので何かを極めることが必要だと思っていて、その中で自分はディフェンスと3ポイントを極めないといけないなと。徹底的に守って、3ポイントシュートも確実に決めて、馬場雄大はこういう選手だというのを彼らに見せられるかだと思っています。
──Bリーグでは『3&D』のイメージではありませんでした。そういう意味では驚きです。
ゲームメークではルカ・ドンチッチみたいな化け物もいるし、僕がNBAで活躍するには『3&D』かと。
──そうなると、渡邊選手はライバルになりますね。
雄太のほうがサイズがありますし、彼以上に「馬場はこうだ」っていう輝きを見せなきゃダメですね。
──渡邊選手もそうですが、BリーグからNBAを目指すパイオニアとして、馬場選手への期待はかなり高まっています。
誰でも期待をしてもらえるわけじゃないので、プレッシャーをポジティブに変えられる人間になりたいと思っています。性格も含めて、それができると思っているのでどんどん期待してくだい。その期待に応えられる人間になります。
──では最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
新型コロナウイルスの影響で毎日ストレスが溜まったり、我慢する日々が続いていると思いますが、今を無駄にしてはいけないと思っています。この瞬間は人生に一度しかないので、無駄にせず今を生きてほしいです。僕もNBAに向けて頑張っています。それが必ず自分の将来を明るくすると思うので、立ち止まらずにこの時間を大切にしてほしいです。