西川貴之

開幕から16連敗を喫し、指揮官交代があっても勝ち星は伸びない。三遠ネオフェニックスにとっての2019-20シーズンは苦難の年となった。5勝36敗と大きく負け越し、残留プレーオフは避けられない状況ではあったが、平均2桁得点を記録して復活を印象付けた西川貴之の活躍は明るいニュースだ。スコアラーとしての輝きを取り戻した西川に、今シーズンを振り返ってもらった。

「ゾンビをコロナに見立てて倒しまくってます(笑)」

──緊急事態宣言が発令され、チームの活動もストップしているかと思いますが、現在はどのような生活を送っていますか?

体育館も閉鎖されているのでバスケットは全くできないですが、ヨガマットを敷いてコアトレーニングをしたり、自重でスクワットをしたり、家の中でできるトレーニングをしています。リングがないのでシューティングはできません。それでも寝っ転がって上に打ったりはしています。何もやらないより意味はあるので、真上に投げるように意識してやると良いですよ。

──外出自粛もまだまだ続きそうですし、子供たちにとっても良い練習になりますね。

今までの生活に戻るためにはどれだけ人に会わないで家にいられるかが大切だと思うので。早く元の生活に戻るためには仕方ないですが、少なからず飽きてきますね。

──その中で楽しんでいることは何ですか?

テレビを見てもコロナ関連ばかりなので、YouTubeを見たり、本を読んだりしています。あと、最近は『Days Gone』というゾンビを倒すゲームをやっていますね。ゾンビをコロナに見立てて倒しまくってます(笑)。

──コロナに負けるなを体現してますね(笑)。緑色のマスクをしているようですが、それはコロナに特化したマスクですか?

いえ、花粉症用のようです。家にあったやつを使っていますが、確かに見たことのない変な色してますね。洗って使い回しもできるので重宝してます、花粉症ではないですが(笑)。

西川貴之

連敗が続き「今思えば、まともな精神状態ではなかった」

──三遠の今シーズンは5勝36敗と苦しいものになりました。ここまで苦戦すると予想していましたか?

全くしていなかったです。想定と違ったことを一言で表すことは難しいですが、最初の頃はチームとして何をすべきなのかというのが全然明確になっていませんでした。それぞれがゴールに向かうだけになっていて、失点も多く、得点も取れず、チームになっていなかったと感じています。

──ヘッドコーチも途中で代わり、加入したばかりの西川選手にとっては特に難しかったと思います。

そうですね、新しいチームに来て知らないメンバーとプレーすることになったので。昨シーズンまでいたシーホース三河とは地区が同じだったので、何となくのプレースタイルは分かっていたつもりでしたが、いざやってみると合わない部分が多くあったので苦労しました。

──正直、開幕から1勝が遠く、メンタルを保つのが相当難しかったのではと想像しますが。

そうですね、琉球に負けて開幕から10連敗した時にコーチが代わって、そこから16連敗まで行くんですが、そこからの6試合は本当にキツかったですね。

レバンガ北海道にいた時に8連敗くらいはしたことがあって、その時は次に切り替えようという思いでやっていましたが、10連敗を超えたあたりから感覚が麻痺してきた部分がありました。「今日も勝てないんじゃないか」ってネガティブに思ってしまったり、今思えば、まともな精神状態ではなかったと思います。天皇杯でもB2の信州(ブレイブウォリアーズ)に負けて、心が折れかけました。

──勝てない期間が続いたことで本当に苦しかったと思いますが、その中でも平均10.5得点を挙げた西川選手の活躍は明るいニュースだったと思います。

チームとしてはズタボロの状態でしたが、試合に出るからにはしっかりプレーをして、簡単にあきらめるわけにはいかないと思っていたので、それが結果に反映されたと思っています。

──日本人で2桁得点を挙げているのは18選手だけで、西川選手個人としては、復活を印象づけるシーズンだったとも思います。

そうですね、三遠に来て30分くらい使ってもらえるようになりましたが、三河では5点くらいしか取れていませんでした。2桁取れるかという不安というか、開幕前はどれだけできるのかを自分でもイメージできない部分もありました。

数字だけを見れば10.5得点なので、得点力が落ちていなかったことは証明できたと思います。チームとして上手くいかなかった中で踏ん張れたのは、三河の2シーズンで良い時も悪い時もあって、どんな時も腐らないで自分のプレーに集中することが大事と教わったからです。三河に行ったのは失敗だという意見もあるでしょうけど、自分ではそんなことはないと思っています。

西川貴之

「同じことを繰り返すことはできない」

──過去2年の三河での経験が糧になっていたのですね。プレータイムが与えられず結果も出ない時に話をうかがった当時は、「出口の見えない暗闇の中にいるようです」と話し、かなりネガティブでした。

そうですね……(笑)。でも、それがあったから前向きになれたと思っています。昨シーズンの三河では終盤に試合に出れなくなって、ベンチに座っているキツさも分かりましたし。

──そうなんですね。個人としては結果を出しましたが、今度はチームとして結果を出すためにも来シーズンへの思いはどのチームよりも強いのではないでしょうか?

落ちるところまで落ちたと思っているので、あとは這い上がるだけです。開幕まで時間があるので、良い準備をして今度こそはチャンピオンシップを狙えるようなチームになる必要があります。今シーズンがあんな成績でも、チャンピオンシップに行けば周りの見る目も変わると思うので。同じことを繰り返すことはできないし、残留回避ではなくチャンピオンシップ進出を争うくらいまでステップアップしたいです。

──無観客試合も経験し、思うところもあると思います。最後まで応援を続けてくれたファンの方へメッセージをお願いします。

無観客試合はシュートを決めても盛り上がらないし、練習試合をしている感覚に近かったですね。お客さんがいないと、こんなに試合じゃないような感じになるんだって思いました。

普段どれだけ応援されている中でプレーできていたかをあらためて感じましたし、ファンがいてこそのバスケット、リーグだと思いました。ヒーローインタビューで「ありがとうございます」と言うと思うんですけど、あれは挨拶として言うわけじゃないんです。

こういう形でシーズンが終わってしまって、僕も心の整理ができていませんでした。一刻も早くこの状況を終わらせて、皆さんが健康で安全に会場でバスケを楽めるようにと思っているので、また会場でお会いしましょう。

──ありがとうございました。今日の取材は以上ですか?

今日は終わりです。なので、家に帰ってコロナ(ゾンビ)を倒してきます(笑)。

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