日本代表候補の15歳、田中力はキャリアに物怖じせず「バスケに年齢は関係ない」

2018/01/17
日本代表
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文・写真=古後登志夫

ウォーミングアップの途中で緊張を闘志が上回る

昨年秋に15歳にして日本代表候補に選ばれた田中力。今週行われた今年最初の強化合宿にも彼はその名を連ねた。Bリーグのオールスター選手が居並ぶ中での練習でも、さほど違和感はない。それは年齢やキャリアの差に物怖じすることなく、コートに立てば一人のプレーヤーとして向かっていく精神のおかげだろう。

「前回は緊張しすぎて自分のプレーを抑えながらやっていました。今回も緊張はしていますけど、できるだけ自分のプレーを出せるように、自信を持ってアピールできるようにとやっています」と彼は言う。それでも、これは単に慣れの問題。日本のトッププレーヤーと一緒に練習することについても「バスケに年齢は関係ないので」とあっさり。「大人とやる機会はそう多いわけじゃないですが楽しいので、年齢は気にせず自分のプレーをやろうとしています」

今回はウォーミングアップの途中で「やるしかない」という闘志が緊張を上回ったそうだ。練習の冒頭での1on1が彼のハイライト。オフェンスでは比江島慎を抜き、ディフェンスでは橋本竜馬を止めた。「最初はディフェンスだったんですけど、『絶対止めてやる』と。オフェンスでは自分のハンドリングを見せてやろうという気持ちでやりました」

動画が拡散されて一般的に知られている田中のプレーは、同世代の選手たちを卓越したハンドリングで振り回し、トリッキーなダブルクラッチなどのシュートを簡単に決める姿だろう。それでも田中は横浜ビー・コルセアーズのU-15チームでの教育も受けている。「ディフェンスはどこに行っても大事だし、結構練習しているので自信はあって、オフェンスが悪くてもディフェンスで取り返そう、そういう気持ちがあります」。技術とは別に、中学生でこう言える選手は決して多くはない。

一方でオフェンスについてはまだ課題も。「ハンドリングには自信がありますが、そこでシュートが入ればの話ですよね」と照れ笑い。練習の冒頭で比江島を抜き報道陣を驚かせたが、抜いた後のシュートを落としていたことを彼は気にしていた。

日本代表で「できないこと」が新たな刺激に

もちろん、代表に加わったばかりの15歳がすべての面で通用するほど日本代表は甘くない。「フィジカルが本当に強くて自分のできないことが多いです。悔しいですが、それが現実なので」と、むしろほんの一部しか通用しない、と受け止めている。

1on1ではまだ勝負できるが、これが2対2、3対3と人数が増えていくことで、フィジカルやIQが問われるようになる。まだ成長過程にある田中はフィジカルでは勝負にならないし、IQは経験を積む中でしか高められない。「スクリーンでディフェンス、ディフェンスを見てオフェンスをどうするか。細かくて地味なところですけど、スマートなバスケを覚えたいです。中学では自分がやらなきゃ点が入らないチームにいたのでやっていましたが、こういうところに来ると周りを生かすプレーを覚えたいと思います」

その点でお手本にしたい選手として、比江島と古川孝敏の名前を挙げた。「ディフェンスもすごいし、オフェンスでも最後までしっかり決めてくる選手。そういうところはすごいと思います」と田中。中学ではライバルと呼べる相手が存在せず、「自分の道を進むだけです」と言っていた田中だが、それだけに実力も実績もはるかに上の日本のトッププレーヤーとプレーする刺激は大きなプラスになるはずだ。ちなみに今回の合宿で2人部屋をシェアしたのは古川だったそうだ。

NBAを見据えて、文武両道のバスケ道

努力を重ねていく先に見据えるのはNBAだ。その過程で自分がどんな選手になっていくかのイメージを問うと、田中はこう答えている。「2番(シューティングガード)か1番(ポイントガード)になると思います。選手としては、ディフェンスから見て嫌な選手になりたいです。第4クォーターの厳しい場面で、あいつにボールを渡せば絶対に決めてくれると思ってもらえる選手ですね」

「その間にU-16だったら世界大会の出場権を取ったり、A代表にもしっかり入りたいです。2020年のオリンピックにももちろん出たいと思っています」

間もなく中学を卒業するが、進路についてはまだ検討中。おそらく田中はこの春から海外に出ることになるだろう。そしてアメリカの大学でプレーし、NBA入りのチャンスを狙う。高校についてはバスケ優先での進路選びになるが、勉強をないがしろにするつもりはない。「アメリカの大学に行くのであれば勉強しないと入れません。それに、もしケガしてバスケができなくなったらただアホじゃ済まないので。勉強は今はちょっと休んでますが、高校でもしっかりやるつもりです」

田中力の進む道は可能性に満ちている。ただ、新たな挑戦に進む前に果たしておきたい夢もある。2月のワールドカップ予選に出場することだ。「横浜は僕の地元なので」と田中は意気込む。2月22日のチャイニーズ・タイペイ戦は、横浜ビー・コルセアーズのホームアリーナである横浜国際プールでの開催。年齢やキャリアは別として、そこを譲るつもりはない。12の代表枠を争いは横一線でのスタート。『地元での代表デビュー』を目指し、田中はより一層の努力を続ける。