中山拓哉

秋田ノーザンハピネッツは19勝22敗で今シーズンを終えた。B1に復帰した昨シーズンはB1残留が課題だったが、今シーズンは上位チームとも互角の戦いを見せるなどチームとして成長の感じられるシーズンとなった。強豪が集う東地区での戦いを終えた今シーズンを、在籍4年目を迎えて『チームの顔』になりつつある中山拓哉が振り返った。

「秋田のバスケットとしてディフェンスを確立できた」

──今シーズンは19勝22敗という結果でした。チームとしてはどのようなシーズンでしたか?

B1に戻って来て2シーズン目でしたが、昨シーズンよりも手応えがありました。今までの秋田で、B1では一番勝てたシーズンでした。ただ、もっと勝てた試合があったなという印象です。勝ちゲームを落としてしまう、そういう試合でしっかりと勝っていれば、勝率5割は行けたと思います。

秋田はB1にいなければいけないチームだと思っています。まだ戻って来て2シーズンを終えただけで、B1に定着したとは言い切れません。それだけではなく、B1でも上位に定着できるチームを目指したいです。

──秋田と言えば『ディフェンスのチーム』という印象が年々強くなっています。失点数はアルバルク東京、宇都宮ブレックスに続いてB1で3位になりました。

今シーズンもスティール数はリーグでも1位ですし、『ディフェンスのチーム』としてやっていた中で、秋田のバスケットとしてディフェンスを確立できたことは良かったです。シーズン中には失点が多かったり、ビッグクォーターを作られてしまう試合もありました。ただ、終わってみればリーグで3位の失点数で、そこは自分たちのディフェンスがしっかりできていた結果なので自信にしていきたいです。

──秋田のディフェンスの激しさは見ている側にも厳しさが伝わります。もう慣れましたか?

いや、本当にめちゃめちゃキツいですよ(笑)。キツすぎてヤバい時もあって、そういう時は「交代させてください」と言っています。お互いにトランジションの展開になると、もう大変です。ボール運びのところからプレッシャーをかけないといけないので、特にポイントガードはキツいです。基本的にはタイムシェアをしているのですが、プレータイムが伸びた時の試合後のガードはだいたい疲労困憊ですね。本当に疲労度が目で見て分かるぐらいです(笑)。

中山拓哉

「正直、スティール王になれないのは悔しいです」

──今シーズンは指揮官が前田顕蔵ヘッドコーチに代わりました。ディフェンス重視の部分はペップ(ジョゼップ・クラロス・カナルス)ヘッドコーチの時から引き継いでいたと思います。

ディフェンスはよりクリアになりました。顕蔵さんは選手の意見にすごく耳を傾けてくれるので、僕たちも思ったことを伝えていました。内容の善し悪しは顕蔵さんが考えてくれて、良かったら僕たちに還元してくれます。やらされるバスケットではなくて、一緒に作っていく感じがすごくやりやすかったですね。

あとこれは僕の個人的な感想ですが、日本語でヘッドコーチと会話できるのが一番大きかったです。それこそ顕蔵さんは英語も話せるので、全選手に自分の言葉で伝えることができます。昨シーズンまでは通訳を挟まないといけなかったので、試合中にパッと言われたことがすぐに理解できないこともありました。もちろん外国人ヘッドコーチやペップが悪いわけではありません。僕たちも英語をもっと勉強しなければいけないですけど、コミュニケーションは大きく変わりました。

──では、中山選手個人としてはどんなシーズンでしたか? ケガで1カ月ほど戦線離脱していた時期もありました。

プロになってから初めての長期離脱でしたが、チームを客観的に見ることができたのは大きな経験になりました。戻った時に「何をしなければいけない」ということを考えながらチームを見ていました。中でも、古川(孝敏)選手や細谷(将司)選手はシュートが上手いので、彼らをどう生かすべきかをすごく考えていましたね。

秋田にはアタックしてクリエイトする選手がまだ少なくて、ドライブしてキックアウトすること自体がチームとしても多くないんです。僕はそこを意識してするようにして、シューターにより気持ち良く打たせることを考えていました。

あと、今シーズンはストレスが少なかったです。すごくキツいバスケットをしているのに負けが続くと、メンタル的にも本当につらいんです。特に昨シーズンはプレータイムも30分ぐらいあったので、毎回しんどかったです(笑)。負けが続くと自分たちのプレーが正しいのかも分からなくなってどんどんナイーブになってしまうのですが、勝てばうれしいので疲労もあまり感じないんですよね。

バスケットをしているとストレスは溜まりますけど、僕はストレス発散もバスケットでしているので(笑)。特に今シーズンはそんなにストレスなく過ごせました。

──まさにバスケットマンですね。ちなみに中山選手は2シーズン連続のスティール王で、今シーズンも数字はトップでしたが、試合数が規定に届かず3年連続とはなりませんでした。そこへの悔しさはありますか?

正直、スティール王になれないのは悔しいです。ただ、ケガも実力のうちなので仕方ありません。賞という形にはならなかったですけど、僕のプレーを見て評価してくれている人はいるし、スタッツとしてはしっかり残せたと思います。それにスティール王は毎年狙えるので大丈夫です。

中山拓哉

「秋田はブースターさんも含めてチームメート」

──新型コロナウイルスの影響でシーズンは途中で終わってしまいました。

個人的にはケガから復帰してコンディションも上がっていたので、続けたかった思いはあります。ただ終盤の頃は、首都圏でちょっとずつ感染者が増えている時期でした。秋田には感染者がまだいなかったですが、僕たちが遠征先からウイルスを持って帰ってしまったらどうしようという怖さはありましたね。地域の人も含めて、いろいろな人の健康を考えるとシーズン終了は仕方がないことだと思います。

──今はどのような生活を送っていますか?

毎日つまらないですね。家でトレーニングをしてNetflixを見て、Nintendo Switchで『どうぶつの森』をしています。トレーニングは自重がメインですね。体幹や腕立て伏せなど家でできることをしています。ただ、この状況がいつまで続くのか分からないので最近ダンベルも買いました。重さを変えられるタイプなので、家でできることを続けていきます。ゲームは家での時間が増えるので、Switchを慌てて買いました(笑)。

──それでは最後にクレイジーピンクの皆さんへのメッセージと、来シーズンの意気込みをお願いします。

ブースターさんには本当に感謝しています。ホームだけでなくアウェーにもたくさん来てくれて、どの会場でもホームのように応援してくれました。無観客試合をした時にあらためて皆さんの存在の大切さを感じました。来シーズンのことはまだ分からないですけど、秋田はブースターさんも含めてチームメートだと思っています。なので、皆さんもしっかりとシーズン開幕に向けて心の準備をしておいてほしいと思います。

個人的にはシュート確率をもっと上げたいです。練習できる日常がいつ戻ってくるかは分からないですが、今できることをして、シーズンが始まる時にはより成長した中山をお見せできるように頑張ります!

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