文=丸山素行 写真=鈴木栄一
100点ゲームを演出したゲームメーク
天皇杯準決勝、千葉ジェッツは100点ゲームで京都ハンナリーズに快勝し、決勝に駒を進めた。千葉が理想とする『堅守速攻』を体現した結果が100-63というスコアに表れた。その『攻』の部分を牽引したのは、ケガの富樫勇樹に代わり先発を務めた西村文男だ。
昨日の試合では自身を含む5人が2桁得点を挙げた。「僕は周りを生かしながら、周りの点数を増やしたいプレーヤーなので、10点を超える選手がたくさん出てくる試合は自分としてはベスト」と納得のパフォーマンスを振り返る。
西村はボールをプッシュしハイテンポなゲーム展開を作り出し、パスを散らして味方の得点シーンを演出している。それでも試合全体を通して一番良かった点として「リバウンド」を挙げている。「今日は40分通してディフェンスリバウンドが取れたのが大きかったです。それができない限り走れないので、そこが特に良かったです」
速攻はディフェンスリバウンドから始まる。そのことを端的に表現する西村らしい言葉だった。リバウンドの総数は42-34と上回ったが、点差を考えればそれほど圧倒してはいない。それでも誰かに偏るのではなく、出場した全選手がリバウンドを記録していることがリバウンドへの高い意識を表していた。
また西村自身は15得点を記録。どうしても富樫と比較されるが、西村の得点力は決して低いわけではなく、ポイントガードとしてはむしろ高い部類に入る。西村も「自分が得点力がないとは思っていない」と断言する。ただ、「僕がそんなに頑張って得点を取らなくても、周りに得点能力に長けた選手がたくさんいる」と語るように、他を優先しながら2桁得点を挙げる得点力は相手にとっては脅威だ。
「去年は1秒もコートに立てていない」
決勝の相手はシーホース三河。準決勝のような楽な展開になることはないだろう。優勝するには自分たちのバスケットをすることだけでなく、プラスアルファの上乗せが求められる。「リバウンドから走るというバスケットを前提として、相手にやらしてはいけないこと、今まで負けた試合での反省点を出さないようにしないといけない」と、これまで積み上げてきた経験をいかに生かすかをポイントとして挙げた。
「あと一つなので、気を抜かずにやっていきます」と淡々と話す西村だが、その口調とは裏腹に優勝への思いは誰よりも強い。というのも、昨年の天皇杯で千葉は優勝しているが、その大会での西村はケガのため出場していないのだ。「去年は1秒もコートに立てていないので、純粋に出れるうれしさがあります。出る限りはチームを優勝に持っていきたい」
他の選手と同じく、あくまで『チームファースト』を貫くが、選手であれば誰しも自分の力でタイトル獲得に貢献したいもの。前回は見守る側に回ったが、今回は富樫のケガというアクシデントにより『主役』が回って来た。彼自身もケガ明けだけに、これは思ってもないチャンス。否が応でも西村に期待が集まる。
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