写真=足立雅史

年齢も実績も関係ない『自然体』のリーダーシップ

リオ五輪世界最終予選(OQT)に挑む男子日本代表の最終メンバー12名が決まるとともに、チームのキャプテンを田臥勇太が務めることが発表された。

チーム最年長の35歳。もっとも、年齢に関係なく自然とリーダーシップを発揮し続けてきた田臥にとって、キャプテンだから特別に何かをやるわけではない。「チームのために自分がやれることは、いつでも変わらないので」と話す口調は淡々としたものだ。

これまでは小野龍猛がキャプテンを務めてきたが、そこは圧倒的キャリアを持つ田臥のこと。誰もがリスペクトを持って田臥に接するし、彼もまた自然体でアドバイスを与えたり、コミュニケーションを取ってきた。「自分はキャプテンとしてやりますが、他の選手もリーダーシップを持ってやってもらいたいと思っています。全員がリーダーシップを持ってやれれば、良いチームになります」と田臥は言う。

かつて田臥は日本代表で10歳以上も年下の選手たちと一緒にプレーする気持ちを問われ、こう答えている。「何かアドバイスを求められたら、自分の持っているものはすべて伝えたいと思います。何一つ隠すようなものではないので。でもこういう場所に来ると、逆に僕が若い選手から何かを気付かせてもらったり、刺激をもらうことが本当に多いので、ありがたいですね」

世界を含む圧倒的な経験を持つ田臥だが、自分が「ベテラン」だという認識はほとんど持っていないように見える。少なくともコートにいる時は、若手も含むすべてのチームメートと同じ立ち位置で、同じ目線で一つの目標を視野に入れている。

最後の粘り、強さや激しさを普段以上に出していくこと

そんな田臥にとっても、『世界への挑戦』は久しぶりのこと。昨年の『アジアへの挑戦』では、優勝は果たせなかったがOQTへの出場権を得た。そして今回は世界が舞台となる。「厳しい大会であることは自分たちも分かっています。ただ、それだけにチャレンジしがいのある、価値のある大会です」

代表の本格始動からまだ半月。国内でのトレーニングに加え、中国遠征で実戦を重ねて急ピッチでチーム作りを進めている日本代表の今の手応えについて、田臥はこう語る。「このメンバーでどんなバスケットをやらなきゃいけないのか、できるのかというのは試合を通して分かりました。チームにとっては非常に意味のある試合でした。本番前に他国のチームと戦って、良い部分も悪い部分も見付けて修正して挑めるというのは、とてもプラスだったと思います」

中国での大会で分かった他国との差は、『勝ち切る力』だ。チームとしてまだ成熟しておらず、選手ごとのコンディションにばらつきがある状態で、どうしても試合の後半、特に勝負どころである第4クォーターに失速する展開が多くなった。

田臥もその点を指摘する。「最後の粘りですね。シュートの確率もそうですし、ディフェンス、リバウンド、ターンオーバーと。最後の最後でゲームをしっかり支配する、しっかり勝ちきることできなかった試合が多かった。逆にそれは課題が明確なので、しっかり克服していきたい」

その課題も、海外のチームと5試合を戦うという中国遠征があったからこそ、身を持って感じることができたことだ。田臥は言う。「相手は集中力を最後まで切らさずに激しくタフに戦ってきます。そこは海外のチームとやらないと肌で感じることができない部分です。その強さや激しさが自分たちには足りなかった。それをあらためて感じました。普段以上にそういうところを出さないと、とてもじゃないけど勝つチャンスはないと思います」

「技術的なことだけじゃなくて精神的なことも含め、勝つために最後まで泥臭いこともすべて全員で40分間やり続ける。そうしないといけないことを教えられた大会でした」

年齢こそチーム最年長の35歳だが、気持ちは全く老け込んでいない。日々の練習でも、誰よりもバスケットに全力で取り組み、それを楽しんでいる田臥の姿を見ることができる。

刺激を受けている、だからこそ『勝ちたい』

チーム最年長のキャプテンはポジティブな気持ちで『世界への挑戦』に向き合っている。「僕にとっては全部が新鮮です。バスケットの難しさが楽しさになってやれています」。NBAに挑戦した時もそうだったか、と問われた田臥はこう続けた。「そうですね、そういうのはしょっちゅうでした。今もこうしてステージは違えど、そういう刺激を受けること、日本代表としてこうやって経験できていることは本当にありがたい。だからこそ勝ちたいと思いますね」

田臥にとってオリンピックとは? 「一度は出てみたい大会」という答えが返ってきた。「OQTだったり、この前のアジア大会もそうですけど、そういう大会を目の前にすると、やはり出てみたいという気持ちが強くなります」

「とにかく勝負にこだわって、必ず五輪の切符を手にできるように、この12人でベストを尽くします。応援よろしくお願いいたします」

キャプテンの田臥を始めとする男子日本代表の選手12人そしてスタッフは今日、フランスへと旅立つ。フランス代表との練習試合を行い、そしていよいよOQTの舞台となるセルビア・ベオグラードに入って本番を迎える。