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サイズの不利を逆手に取る厄介なディフェンス技術

一般的に、小柄な選手とのマッチアップとなれば、サイズに勝る相手はミスマッチを生かそうと積極的にオフェンスを仕掛けてくる。だが、これを逆手に取ることも不可能ではない。ボールを持って仕掛けてくる相手と接触した場合、サイズで劣るディフェンダーのチャージではなく、身体をぶつけに行った大柄なオフェンス側の選手に対し審判もついついファウルを取ってしまうのではないか。

言わば印象の問題ではあるが、これをうまく活用している選手がいる。ラプターズのカイル・ラウリーだ。

今シーズンの平均失点はリーグ13位の104.1点にもかかわらず、ラプターズは15勝7敗で東カンファレンス3位につけているのだが、好調を支えている要因の一つが、ガードのカイル・ラウリーのファウル誘発術だ。

プロフィールでは183cmとなっているラウリーだが、実際にはもう少し身長が低いようだ。その彼は今シーズンここまで22試合に出場し、リーグで最も多くオフェンシブファウルを誘発している。気になる被オフェンシブファウル数は17で、2位のウィリー・リード(クリッパーズ)の10回と大きな開きがある。ちなみにトレイルブレイザーズはチームの被オフェンシブファウルの総数が5回。そう考えるとラウリーの数字がいかに突出しているかが分かるだろう。

ラウリーの動きには、ポジショニング、攻めてくる相手の進路を予測する能力を含め、一言では説明できないほどの高等技術が含まれている。一歩間違えればフロッピング(審判を欺いてファウルを得ようとする行為)と判断されてしまう。小柄なラウリーとはいえ、巧みに相手からオフェンシブファウルを誘う行為は、『綱渡り状態』も同然なのだが、うまくやっている。

まんまと相手のプレーを止める技術を持つラウリーに加えて、ラプターズには、逆のオフェンスで相手からファウルを誘えるデマー・デローザンという『曲者』もいる。彼ら2人に支えているラプターズは、対戦する方からしたら、この上なく厄介だ。今シーズンのデローザンは、ロケッツのジェームズ・ハーデン(44回)に次いでリーグ2位となる35回もパーソナルファウルを対戦相手から引き出している他、平均23.3得点という決定力も備えている。

ラウリーも平均16.6得点、そして3ポイントシュート成功率はキャリアハイの41.7%と好調。

セルティックスとキャブズの影に隠れてはいるものの、今シーズンもラプターズは東カンファレンスの『サイレント・アサシン』として、順調に勝ち星を積み上げていきそうだ。