文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

ポイントガード兼シューティングガードでフル回転

昨日行われた三遠ネオフェニックスと栃木ブレックスの第2戦は、ビッグラインナップが功を奏し三遠が接戦を制した。ローレンス・ブラックレッジのシーズンハイのパフォーマンスを筆頭にビッグマンの活躍が勝因となったが、それを支えた影の功労者は間違いなく田渡修人だった。

三遠はここまで全試合に先発出場してきた鈴木達也が欠場。川嶋勇人と大石慎之介も戦列を離れているためポイントガード不在という厳しい状況に追い込まれていた。その中でゲームをコントロールする役目を担ったのが田渡だった。

田渡は言う。「ポイントガードが出れないということで、意識したのはみんなで一つになって良い時も悪い時も声をかけ続けようということです。プレーの部分は出てきたらパスする、空いたら打つ。それしか意識してなかったのがうまくいった部分もありました」

本来はシューティングガードとして、周りから生かされシュートを放つことを生業にしている田渡だが、昨日はゲームコントロールをしながらシューターとしての役割も果たし、まさにフル回転と呼べる出来だった。

指揮官の藤田弘輝も「本当によく頑張ったと思います。スタッツを見ても32分出て、栃木さんのあれだけの激しいプレッシャーの中、一人でポイントガードをして、ツーメンゲームでクリエイトもして、ディフェンスでも気持ちを見せてくれた。ハートの強さを前面に出してくれたと思いますし、本当に誇りに思います」と最大級の賛辞を送った。

田渡自身はこの緊急事態を良い機会と受け止め、楽しむことで結果を出した。「普段はみんなに生かしてもらっていますけど、今日はピック&ロールを使うとか自分がやりながら周囲を生かすのができて純粋にバスケを楽しめました」

初のダブル・ダブルも「気づいてなかったです」

彼の活躍はそれだけではない。ポイントガード兼シューティングガードとして10得点4アシストを記録しつつ、今シーズン最多の10リバウンドを挙げ、自身プロ初となるダブル・ダブルを達成した。

「栃木さんはオフェンスリバウンドが強く、セカンドチャンスからポイントを取られるとあっちは乗るっていうのを僕も分かっていたので」とリバウンドの意識は高かったと話しながらも、スタッツは意識の外だった。「センター陣が良いボックスアウトをしてくれて、そこに落ちてきたのを取っただけなので。10と言われても自分では気づいてなかったです」

結果として転がり込んだ自身初のダブル・ダブルよりも、チームの勝利を田渡は喜ぶ。「うれしいですけど、それ以上にチームが勝ててない状況が続いていたので、最後まで全員が集中して勝てたのがうれしいです」

「ルールを遂行しながらバスケットを楽しまないと」

三遠は直近の5試合で1勝4敗と負けが込み、5試合すべて70点以下と得点力不足に陥っていた。だが、昨日の試合では71-65と攻守ともに向上が見られる理想的な内容となった。

「普段みんながガード陣に頼ってしまってる部分があって、みんなが助け合ってやれて70点に乗ったっていうのはすごい大きいです。チームディフェンスとしてうまくいった部分があって、相手を60点台に抑えられたというのも収穫ですし、ここからもっと詰めていけば、勝ち星ももっと重ねられると思っています」

そのハイパフォーマンスの裏には、バスケを楽しむという原点回帰が大きく作用していた。「練習もそうなんですけど、正直キツイことばっかりです。でもチームのルールを遂行しながらバスケットを楽しまないと、とよく言っています。今日はそれをみんなで話し合ってしっかり遂行して、その中で全員で楽しめたので、良いメンタリティで全員が共有してできました」

ガード陣不在のピンチにチームがまとまり、楽しむことで本来の強さを取り戻した三遠。現在13位と昨シーズンに比べ出遅れている感は否めないが、昨日の勝利は浮上のきっかけになり得る。チームが軌道に乗った際には、屈託のない笑顔で楽しみながらシュートを沈める田渡の姿があるはずだ。