「下級生ならではのアグレッシブさ」で躍動
史上2校目となるインカレ4連覇を目指した筑波大学は、決勝戦で大東文化大学の勢いに飲み込まれた。大東大のモッチ・ラミンに8本のオフェンスリバウンドを含む16本のリバウンドを奪われ、30点得点を許したことは大きな敗因となった。
2年生ながら得点源として筑波大を支える増田啓介も、インサイドの攻防がカギとなることを理解していた。「相手には留学生がいてリバウンドを支配されると負けてしまうので、積極的にチームでディフェンスリバウンドを取ろうと話していました」
それでもモッチに注意が行き過ぎてしまい他の選手に飛び込まれ、リバウンドでは35-49と大きく水をあけられた。「オフェンスリバウンドからのゴール下でほとんど取られてしまって。今思えばもっとボックスアウトして抑えられたんじゃないかと」と増田は悔いる。
リバウンドでは劣勢を強いられたが、それでも筑波大はチーム力で接戦に持ち込んだ。最後に勝負を分けたのは気持ちの差だった。優勝した大東大の監督や選手たちも「気持ちで上回った」と口を揃えたように、筑波大は慎重になりすぎていた感があった。
その中で増田は唯一アグレッシブな姿勢を見せていた。「決勝とか準決勝は気持ちの勝負になってくると思っていたので。自分はまだ下級生なので自分ができることを全力でやろうと思っていて、下級生ならではのアグレッシブさを出していこうと思ってました」
吉田監督「増田が5ファウルとなった時点でジ・エンド」
チームハイの16得点を挙げた増田の活躍もあり、拮抗した展開が続いていた。だが最終クォーター残り4分、増田が痛恨の5ファウルでコートを去る。
「何やってんのかな。せっかく4つファウルしてるのに出してもらったのに、すぐファウルしてベンチに戻るっていう、情けないプレーでした」と増田はその場面を振り返る。
これを機に筑波大は崩壊してしまった。大東大のオールコートプレスで足が止まり、攻め手を失うと、増田が退場してからの4分間で3-17、これまでの接戦が嘘だったかのように失速した。筑波大を率いる吉田健司監督も「増田が5ファウルとなった時点でジ・エンドという感じになってしまった」とのコメントを残している。
「日本一を目指して」再出発
頼りになる4年生はこれで卒業し、増田は上級生となる。これまでのようにただ先輩についていくのではなく、後輩を引っ張っていくような存在にならないといけない。「牧(隼利)がこの学年ではリーダーシップをとってくれて、自分はついていくって感じなんですけど」と増田ははにかんだ笑みを見せる。
声を出しチームを鼓舞することだけがリーダーシップではない。そういう意味では強い気持ちを持ってプレーし、その姿勢を伝えることが、増田にとってのリーダーシップになるのだろう。
敗戦直後にも関わらず落ち着いた口調で取材に対応した増田は最後に、「日本一目指して頑張ります」と力強く目標を口にした。
チームの中核を担い、内に秘めた強い気持ちをコート上で表現する増田。自身の影響力を改めて認識し、筑波大の王座奪還のため再び歩み始める。