文=丸山素行 写真=野口岳彦

「要所のポイントで自分が絡んでやられてしまった」

10月10日に行われた新潟アルビレックスBBとの第2戦。アルバルク東京は延長戦の末に敗れ、開幕からの連勝が3で途切れた。

敗因はいくつか考えられるが、A東京を指揮するルカ・パヴィチェヴィッチはダバンテ・ガードナーに40得点を奪われたことではなく、それ以外の選手に多くの得点を許したことを挙げた。実際、ゴール下のガードナーの印象は強烈だが、新潟のツーガードである畠山俊樹に18得点、五十嵐圭に14得点を許している。

ポイントガードの安藤誓哉も試合後に同じことを語った。「両選手ともクリエイトできるポイントガードなので守りにくかったです。要所のポイントで自分が絡んでやられてしまったので非常に反省しています」

「顔を上げて、来週は何が何でも2連勝を取りに行く」

初戦では速攻が勝因となっており、安藤は第2戦に向け「前半からプッシュしていきたい」と意気込みを語っていた。だが第2戦では新潟の巧みなテンポコントロールによって速攻を封じられ、ファストブレイクからの得点は0に終わった。「今日はブレイクがなかなか出なかったです。昨日よりも向こうのインサイドの攻め方がゆっくりで、個人技をスローペースに決められていたので、出しづらかったのかなと思います」と振り返る。

ルカコーチ曰く「ガードナーにやられるのは想定内」。つまりは相手のストロングポイントであるインサイドではなく、A東京のバックコートに強みがあると見ていたのに、ガード陣が期待に応えられなかったということだ。安藤もそれを感じていたが、会見場にやって来た時には指揮官のアドバイスにより気持ちは切り替わっていた。

「ビッグなポイントガードは絶対に下を向かない、と言われました」と安藤が明かす。

現役時代にヨーロッパリーグで3度の優勝を経験しているパヴィチェヴィッチを安藤は『ビッグなポイントガード』に見立てている。「ビッグなポイントガードの人にそう言われたので、強気に顔を上げて、来週は何が何でも2連勝を取りに行く気持ちでいます」

存在感を出すために『無難』では満足せず

この新潟との2試合、安藤のパフォーマンスは決して悪くはなかった。初戦では2桁得点を記録し、第2戦では37分間の出場でターンオーバーなし。それでも「無難って言っちゃえば無難なので」と、彼は負け試合での収穫を語ろうとはしなかった。

これは今シーズン、勝利を義務付けられた名門チームに身を置いた安藤が、そのことだけに満足せず、さらに上のレベルを目指すという意欲の表れだ。「アルバルクはタレントも多いし、それぞれ技術があって、得点も軽く取れる選手が多いです。その中で自分としては、『ここで取るか』という大きな得点を決められるようなポイントガードにならなければいけないと思っています。そういうのが優勝につながっていくと思うので」

自分に高いハードルを課すことが己の成長を早め、ひいてはチーム力の底上げになる。それをシーズンを通して積み重ねることで、Bリーグの優勝という目的に手が届くようになる。優勝を見据えているからこそ、自分にシビアに向き合う。ガードナー、五十嵐と畠山、そして土壇場で力を発揮したオースティン・ダフォー。新潟はカギとなる選手が揃って絶好調だった。それに対してA東京も食い下がったが及ばず。延長までもつれる大接戦の結果を左右したのは何かと問われた安藤は、「勝負どころになれば強いメンタリティを持ってやらないといけない」とメンタルを課題に挙げた。

A東京は高い実力を備えたエリート集団だが、どこか勝ち切れない部分がある。足りない部分を補うのが新加入選手に求められることだとすれば、安藤には強烈な勝利意欲、何が何でも勝つひたむきなプレーが欲しいところ。「大きな得点を取る」、「何が何でも取りに行く」というハッスル。最後のプレーを託されて、それに応えるクラッチプレー。安藤がその要素をもたらした時、A東京は真の常勝チームへとステップアップするはずだ。