日本初のJBA公認プロレフェリー加藤誉樹が語る『審判のお仕事』(中編)「審判ではなく選手が注目されるのが一番です」

2017/10/15
NBA&海外
995

文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

日本初のJBA公認プロレフェリー加藤誉樹が語る『審判のお仕事』
(前編)「プレーヤーとしての後悔や劣等感を力に変えて」

起きたことに忠実に、『公平性と一貫性』を持って

──JBA公認のプロフェッショナルレフェリー第1号に選ばれたことを、率直にどう思っていますか?

責任の重さが重圧になっているというのが正直なところです。やっぱり注目も浴びますし、他の審判仲間が他の仕事とやりくりしながら歯を食いしばってコートに立っているところを、私は専念させていただいているわけですから、準備にかける時間も一緒ではいけないと思っています。そこは向き合う時間や姿勢、すべてにおいて高いレベルを求めていかないといけない。審判のスキルはやればやるだけ身に付きます。それを結果として出さなければいけないという責任を感じています。

──基本的に加藤さんが審判を担当するのはBリーグだけですか?

いえ、Bリーグが優先ですが、もともと実業団連盟所属の審判ですので、日常的に吹くのはBリーグと実業団になります。日程がかぶらなければ大学や高校の担当もあり得ます。先日、海外から帰って来た週には関東大学リーグにも割り当てていただきました。

──審判は3人でチームを組みますが、役割分担はどうしているのですか?

呼び方としては主審と副審ですが、基本的には主審が副審よりも権限を持っていることはなくて、3人が対等です。副審が見て下した判定を、主審だからといって覆すことはありません。私が主審を担当していても、それぞれコートに立てば判定する権限を持っているわけですから、すべてを指示することは個人的にしないようにしています。

──男子がプロリーグになったことで、審判のジャッジも観客から注目されるようになってきました。審判をする上で試合中に意識していることはありますか?

審判ではなく選手が注目されてゲームが進んでいくのが一番です。お客様には審判ではなくプレーヤーを見ていただくべきです。その中で審判みんなで取り組んでいるのが『公平性と一貫性』です。一つは前に起きたことと同じことが起きれば、同じようにコールする。それがどちらのサイドで起きても同じようにコールする、ということです。

今の時代はインターネットやテレビでリプレイを見ることができて、スローモーションも流れます。ですから私たちはよりシビアに起こった事実に忠実に判定しなければなりません。ジャッジに対して「あれっ?」と思うこともあるかもしれませんが、その時は前に似たようなプレーがあった時にどうコールしていたか、さっきこうだったから、今回もこうだね、という見方をしてもらえればと思います。

──昨シーズンのBリーグファイナルでは1万人の観客がいる中で審判をやりましたが、堂々としているようで内心では心臓ドキドキだったりしますか?

数えられるぐらいの観客しかいなくても、1万人を超えていても、緊張の度合いは変わりませんね。緊張しないわけじゃなくて、どんな試合でも緊張するんです(笑)。そこは全く一緒で、ドキドキします。30点差のゲームだろうと延長戦だろうと、それもまた変わりません。ゲームを最初から最後まで、起きたことに忠実に、『公平性と一貫性』を持って進めることには変わりません。

今夏はU19男子ワールドカップ、そしてユーロバスケット

──国際大会の話も聞かせてください。この夏はかなりあちこち飛び回っていましたよね。

まず男子のU19ワールドカップ、その後に中国でスタンコビッチカップという大会があって、ユーロの前には日本とドイツのバスケットボール協会の提携事業として、ドイツでの大会を担当して、そしてユーロバスケットですね。しかし、やることは変わりません。言葉が日本語から英語になるくらいです。

──細かいところでジャッジの基準が変わってくるようなことはありませんか?

ルールは一つで、FIBAルールですので、基本的には日本でやっていることをそのまま海外でやるよう意識しています。それでもバスケットのタイプが違って、日本人独特のプレーだったり、海外で体格的に恵まれている選手がやるプレーはありますから、同じルールをそこでどう適用するか、必ずしも同じでないところは出てきます。

ちなみに、今はFIBAの大会前には少なくとも3日間、この間のユーロバスケットだと4日間は朝から晩までみっちり研修があります。そこで審判の動き方、何を吹いて何を吹かないということを学び、ジャッジの基準を統一する作業をします。あとはメンタルの準備、体力テストのプログラムもあります。FIBAはそういった準備を通して一定の基準で大会が最初から最後まで進むように取り組んでいます。

なかなか精神的に休まらない、国際大会の難しさ

──国際大会となると大会期間が長いので、ずっと張り詰めてもいられないと思います。リラックスのために、例えば今回のエジプトだとスフィンクスを見に行ったりすることは?

大会中には試合が全くない休息日があります。今回のU19男子ワールドカップ(エジプト開催)だと2日間あって、2回目の休息日には主催者が観光バスを用意してくれて、レフェリーと運営スタッフみんなでピラミッドに行きました。しかし、海外では治安があまり良くないことが多く、日本と同じように街を出歩くわけにはいかないですね。ユーロバスケットが行われたトルコでは親しいトルコ人のレフェリーがいたので、一緒にコーヒーを飲みに出かけたりしましたが、それでもホテルから500m圏内でした。

やはり、事件や事故など不要なトラブルに巻き込まれて精神的に良くない状態でコートに立ってはいけないと考えます。また、外で口にするものが衛生管理されているのかも分からないですし、そういう意味ではなかなか休まりませんね。オフィシャルな行事以外はホテルの部屋にいて、自分で持ち込んだ米とみそ汁で食事したり、Youtubeを見たりしながらリラックスしています。

日本初のJBA公認プロレフェリー加藤誉樹が語る『審判のお仕事』
(後編)「当たり前のファウルであれば審判はいらない」