文=鈴木健一郎 写真=野口岳彦

敗因として語るのはオフェンスではなくディフェンス

京都ハンナリーズを相手に序盤からペースを握りながら、62-51と迎えた最終クォーターに大逆転負けを喫した千葉ジェッツ。開幕からの連勝が3で途切れてしまった試合の後、千葉の司令塔である富樫勇樹は、「勝たなければいけない試合でした。第3クォーターまで良いバスケットができていたんですけど、ああいうクォーターを作ってしまうとこのような結果になってしまう。チームとしてまだ修正だったり成長が必要です」と語った。

富樫自身は17得点を挙げたが、勝負どころの第4クォーターでは2本のブロックショットを浴び、無得点に終わっている。ただ、彼が敗因として語ったのは個人ではなくチームであり、オフェンスではなくディフェンスだった。

「この2日間、今日の第4クォーター以外はオフェンスがうまく行かなくてもディフェンスが崩れることがなかったのですが、第4クォーターの残り7、8分にオフェンスがうまく行かない時にディフェンスも全く機能しませんでした。もちろんサボっていたわけではないのですが、チームとしての5人が共通の意識を持ってディフェンスしなきゃいけない。もうちょっと試合中に修正できた部分はあると思うので、それが今後のチームとしての課題です」

リスク承知のアグレッシブなプレーを貫く

富樫のスタッツに目を向けると、ここまでの4試合で平均16.0得点と7.2アシストと、昨シーズンより大きく向上している。ただ、リーグトップのアシストに対してターンオーバーがリーグ最多の平均4.2。これは少々いただけない数字だが、「ルールの変更で最近のレフェリーの笛が変わってきているので、それに合わせてアグレッシブに行ってはいたんですけど」と富樫もコメントしているように、狙ってやっている部分もあるようだ。ただ、この日の敗戦を受けて「アグレッシブに行きすぎている部分もあったり、開幕も2試合もそうですけど、しっかりスペースとか状況を把握して判断していかないといけない」と修正すべき点は認識できている。

実際、富樫は自らシュートを狙いに行くにしても、パスで味方に得点させるにしても、昨シーズン以上にアグレッシブで、あえてリスクを取っているように見える。ピック&ロールからダイブする外国籍ビッグマンへのパスのタイミングが早く、ボールがそのままラインを割る場面が何度かあった。これはリスクを承知で、新たなチームメートにこのパスに反応してほしいというメッセージだろう。つまり、より高いレベルでの連携を構築するために必要なターンオーバーだ。

敗戦という現実を受け止め、『良い薬』に変えられるか

1試合を落としたから、ターンオーバーの数が増えたからといって攻め気を失うようでは、富樫の魅力は半減してしまう。彼が無難なプレーに終始するようではチームにとってもマイナスだ。だから、大逆転負けを喫した直後にもかかわらず、大野篤史ヘッドコーチは富樫のターンオーバーについて問われて「そこは問題だと思っていません。彼を信頼しているので」と言い切った。

実際、ボールがよく回る良いオフェンスの形はできている。リスクを取りつつ、高いレベルで安定したプレーを確立していくことが前半戦には求められる。そういう意味ではこの一敗をどう受け止め、チームの向上につなげられるかが重要だ。それを問うと、富樫はこう答えた。「選手は特に今日みたいな負け方はすごく悔しいというか、下を向いてしまっていたんですけど、コーチから『60試合の4試合目だ、ここからしっかり学んでいこう。次の栃木戦に向けてもう一回顔を上げて準備しよう』と言われ、それはその通りだと思います」

「負けたことをしっかり真剣にとらえているチームだというのが今あるので、それは良いこと。切り替えも大事だと思うので、来週も栃木戦に向けてしっかり準備したいです」

長いシーズンを戦い抜くために必要なのは、常に高いレベルを見据えて挑戦することと、目先の勝敗に必要以上に一喜一憂しないこと。今回の負けを『良い薬』にすることができれば、千葉はもっと良いチームになれるはずだ。