
「誰が悪いとかではなく、それでも上手くいかない」
京都ハンナリーズは12月20日、21日と千葉ジェッツ相手に2試合続けて大敗を喫して6連敗。これで6勝19敗として西地区最下位に沈んでいる。今シーズンの京都は開幕節でいきなり大黒柱のアンジェロ・カロイアロがインジュアリーリストに登録されて長期離脱を強いられると、その後も外国籍の負傷に苦しめられる状況が続いている。今オフに移籍した岡田侑大の穴も大きく、チームは深刻な得点力不足に陥り、苦境に陥っている。
チーム随一の経験を誇る38歳の古川孝敏は「正直、めっちゃしんどいです」と明かし、現状への思いを語る。「そもそも勝てていないことがしんどいですし、やはりメインの選手が抜けてしまっているのはキツイです。ケガ人が出てしまうのは仕方ないことですが、それによって僕のやることが変わることがあるかといったら変わらないです。そこは全員が全力で、それぞれの役割をやらなければいけないです」
「言葉のチョイスが難しいですけど、勝利がついてこない状況の中でずっとポジティブではいられなくて、下を向くこともあります。しんどくて何をやったらいいかわからない、みんながそれぞれ頑張っていますけど、チームとして空回りしてしまうことがある。誰が悪いとかではなく、それでも上手くいかない。そこはしんどいです」
古川はBリーグ初年度、ファイナルMVPに輝く活躍で栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)の優勝に大きく貢献。その後、琉球ゴールデンキングス、秋田ノーザンハピネッツでもチームをさらなる高みへと導いてきた。昨シーズンの京都加入1年目も、勝者のマインドをチームに注入し、33勝27敗と2018-19シーズン以来のシーズン勝ち越しをもたらした。
Bリーグ誕生前も含め、古川のこれまでの長いプロキャリアを振り返ると常にポストシーズンを狙える位置でプレーしていた。ここまでシーズン序盤から負けが込む状況でプレーするのは彼にとって初めての経験となる。
古川は「キャリアで初めてのことで『どうしたものかな』と考えるところはあります。今までこういう状況がなかったのは恵まれていたと思います」と語る。若い選手であればチームが苦しくても「今後の自分の成長のために……」と気持ちを切り替えることもできるだろう。しかし、古川はとうにそういう立ち位置の選手ではなくなっている。

「すべてがネガティブになってしまうのは嫌です」
これまでに確固たる実績を築いてきた古川だからこそ難しい精神状況にあるが、今の彼は目の前の困難に正面から向き合っている。「チームが前を向いていけるように、その場しのぎではなく、これからしっかりと結果を残せていけるようにビルドアップしていかないといけないです。自分たちが大事にしていることを、もっと全員で共有しながらやれたらいいとは感じています。ただ、勝利がついてこないことで、どうしてもそこに辿りつけずに、いろいろとぐるぐると考えて試行錯誤しているところはあります」
そして、ベテランのリーダーとして「得意ではないですが、自分が嫌われ役としてみんなに叱咤して鞭を入れた方がいいのか。今はずっと、自分が何をすべきか探しながらやっていて、はっきりとした表現ができないのは申し訳ないです」と、自分に何ができるのかを考え続けている。
どんなに苦しい状況にあっても、古川の勝利に対するモチベーション、高いパフォーマンスを見せたい思いに変化はない。「結果を残すためにもやっていますが、まずはコートで全力を出し切り、自分たちのプライドを示していかなくてはいけない。そこが疎かになってしまうと、もう取り返しのつかないことになるので、僕の中で大事にしています」
そしてどん底にあっても自分たちを応援してくれる人たちに報いたい気持ちが何よりもある。「今日もそうですし、ホームだけでなく京都からアウェーにまで足を運んでくれている人たちがいます。『応援してください』と言わせてもらっていますが、そもそも僕たちがやれることをしっかりとやって応援されるチームである必要があります。そこにしっかりと責任を持って戦わないといけないです」
現状を見れば、どうしても暗い話題が出てくるのは仕方がない。ただ、古川は「今回ここでお話しをさせてもらう中で、すべてがネガティブになってしまうのは嫌です」と強調し、少しでもチーム状況を良くすることに集中している。
「何としても前を向いて『チームが良くなるために』と考えています。難しいところですが、引き続き模索して1試合1試合、毎日を大切にしていきたいです。ただ、やっぱりやってきたことしかコートには出ない。今もみんなそれぞれ勝ちたいと強く願って頑張っています。その中で、どれだけ同じ方向でまとまってやれるか。選手だけでなく、コーチ陣も含めて組織として一つになれるように、大きなお世話と言われようとも、でしゃばりと思われようが、自分のできることをしっかりやっていくしかないです」
今の京都で、すぐに状況が好転するのは難しいかもしれない。ただ、苦しい現実に正面から向き合い、やるべきことをやり続ければ必ず光は見えてくる。そのために古川は、いつもと同じくコート内外で、チームを良くするためにベストを尽くす。古川だけでなく京都の気持ちは折れていないと感じる、彼の言葉だった。