アグレッシブに仕掛けて流れを呼び込む
アルバルク東京は9月27日に伊藤大司の期限付き移籍を発表。加えて小島元基を右腸腰筋損傷により欠いていた。昨シーズンはポイントガードのポジションで絶対的な存在だったディアンテ・ギャレットはチームを去っている。この開幕節でポイントガードを任されたのは安藤誓哉だった。秋田ノーザンハピネッツから加入した彼がチームに合流してから約2カ月。25歳の彼が、司令塔の重責をほぼ一人で担うことになった。
ただ安藤に特別な気負いや不安はなかったようで、2連戦を終えてこう振り返る。「正中(岳城)さんもポイントガードのバックアップとしてしっかりやれる先輩なので、自分にプレッシャーをかけず、アグレッシブにやっていこうという気持ちで昨日から試合に入りました」
ただしA東京で迎える開幕戦という部分では、多少の重圧があった。安藤は言う。「伝統ある強豪チームなので、全試合が負けられないという意識がある。そこは少しプレッシャーがあります」
30日の大阪エヴェッサ戦は81-60と問題なく勝ったA東京だが、1日の再戦は厳しい展開になる。安藤にとっても『問われる』一戦となった。安藤は昨日に続いて先発出場し、第1クォーター残り5分47秒にはアレックス・カークとのピック&ロールから見事に3ポイントシュートを決める。11-4とリードを大きく広げた状態で、一旦ベンチに退いた。
しかし第2クォーターは悪い流れを立て直すことができず、自らも2つのファウルを犯すなど苦しいプレーになる。安藤のプレータイムは4分強だったが、「オフェンスが上手くいかなくなって、ディフェンスも引きずった。トランジッションでやられてしまう部分があった」とこの時間帯の停滞を説明する。
それでも第3クォーターになると彼の強みが出た。安藤はこう振り返る。「『アグレッシブに行け』と言われていた。少し仕掛けに行きました。意識してドライブに行ったり、スリーを狙ったりして、第3クォーターの流れは少し良くなったと思います」
もちろんミスショットはあったが、この勝負どころで彼は7得点を記録。アシストとスティールも記録し、悪い流れを押し止める立役者になっている。終盤に再び大阪の粘りがあり接戦になったが、安藤はこの難しい試合を勝利で乗り切った。
指揮官も「アグレッシブにプレーしてくれた」と評価
ルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチも「非常にアグレッシブにプレーしてくれた」と安藤のプレーを認める。25分37秒のプレータイムで12得点3リバウンド1アシスト1スティールという個人記録も悪いものではない。
昨日のプレータイムも27分29秒とポイントガードにしては長かった。ただよくよく考えると彼は昨シーズンの秋田で1試合平均33.9分というB1最長の出場時間を記録しており、これくらいであれば全く問題はないのだろう。
アレックス・カーク、ランデン・ルーカスといったインサイド陣の連携については「2カ月間一緒に練習しているので、合わないという感じは全然ない。さらに良くなっていくんじゃないかというそっちの方が大きい」と手応えを口にする。司令塔として、スコアラーとして、安藤は新天地で順調なスタートを切った。
A東京のルカコーチは今年6月まで日本男子代表のヘッドコーチを務めていたが、名ポイントガード、指導者として国際的なキャリアを持つ大物だ。安藤の武器であるピック&ロールを磨くには、絶好の師でもある。安藤はこう口にする。「すごい経歴だった方で、そういう人からいろいろなことを学べて楽しい。ポイントガードの人からポイントガードとして教わるのは幸せです」
彼は昨シーズンに秋田を残留させることができず、期限付き移籍でA東京に移ってきた。その悔しさを今どう受け止め、どうつなげるのか? そんな少し意地悪な質問には、こんな答えが返ってきた。「いろんな思いはありますけれど、チームが変わったので、秋田で味わった屈辱をここではあまり出していない。個人的な感情として心の中にしまっている。新たなスタートということで、今シーズンはアルバルクの優勝を目指してアルバルクでやっていきたい」
移籍したからと言って昨シーズンが消えるわけではない。東地区、チャンピオンシップ制覇というミッションも間違いなく容易なものではない。ただ強豪チームで厳しい地区を戦う日々とルカコーチの薫陶は、安藤を成長させる良き後押しになるはずだ。
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