[ウインターカップ特集]薫英の安藤香織監督(後編) 「勝っても負けても終わりですが、それで終わりじゃない」
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[ウインターカップ特集]薫英の安藤香織監督(後編) 「勝っても負けても終わりですが、それで終わりじゃない」

2019/12/06

安藤香織

大阪薫英女学院は、インターハイは24年連続の51回出場、ウインターカップは32回目出場を誇る関西の名門校だ。それでも、チームを率いる安藤香織監督は公立高校の出身。自身が高校生だった頃、そして公立校を率いる指導者として「打倒、薫英」を掲げた安藤が、名将である長渡俊一の後を継ぐことになった。公立校出身だからこそ、名門校の強みも弱みも分かる。「限りなく日本一を目指す」と「絶対に日本一にならないといけないわけじゃない気もします」、その2つを両立させる安藤に、指導者としての考え方、ウインターカップへの意気込みを聞いた。

「3年生は、しがみつき度合いが違います」

──ウインターカップが近づいてきましたが、今回の大会に臨むチームはどうですか?

今年は弱いんですよ、結構弱い(笑)。だからこそ放置できない、しがみついてでも勝たなきゃいけないです。3年生の心がまだちょっと弱いですね。昨年の3年生はプレーは上手くなかったですが、その前の先輩がウインターカップを逃していたので、「先輩たちの分まで」とすごく努力をしたし、仲間に対する情熱もすごく熱いものがありました。キャプテンの北川聖を中心に、17人の3年生がまとまってチームを日本一にするための仕事をしました。プレーは上手くないけどメンタル的にすごかった先輩たちに引っ張られてきたのが、今の3年生なんです。

今の3年生も3人が去年のウインターカップ決勝のスタメンです。ただ、決して強いチームではありません。インターハイも1回戦から負けそうになったし、でもそこから粘りました。今は下級生の選手を2人使っているんですけど、2年生の選手の方が大胆にプレーしますね。でも、3年生はしがみつきます。しがみつき度合いが違います。

──昨年のウインターカップで準優勝して、新チームで再スタートしました。それからここまでのチームの歩みはどんなものでしたか?

ウインターカップで準優勝して、新チームがバタバタとスタートしました。森岡奈菜未と福田希望で話をして、森岡は今までキャプテンをやったことがないからやりたい、福田はずっとキャプテンだったからサポートにチャレンジしたい、と2人で決めてきたんです。ところが引っ張るはずの福田がフォローに回って思い切りやれなくなってしまった。今ではウインター予選の決勝で1人で34点取るぐらい絶対的なシューターなんですが、序盤は福田が迷いました。森岡は気配りはできるけど引っ張ったことがなく、塩谷心海はマイペースという感じで、引っ張るべき3年生がバラバラな中で、新人戦は何とか優勝しました。そのまま大阪招待も優勝、全関西は桜花学園と岐阜女子に負けて3位で、なんとなく無難にやってきました。

──しかし、ずっと無難にやって来れたということはありませんよね。

そこでインターハイ予選、大阪桐蔭の「何が何でも絶対」という気迫に飲まれて、ふわっとしたプレーからバスカンと3ポイントシュートをやられて一気に持っていかれたんです。この時、この選手たちは1回負けるべきだ、このまま勝ってはダメだと思ったので、タイムアウトも取らずに「自分たちで何とかしないと」って。

負けたおかげで課題がいっぱい出ました。そこから近畿大会までの3週間は地獄のトレーニングでした。ずっとドリブルなしのパッシングで負け残り、これ以上やるとケガするから走って来いと1キロ走を4分切り3セットみたいな。そうして臨んだ近畿大会でも3年生が3年生らしくドンと行くことはできずに、こちらが声を掛けて励ましながら。2年生でスタメンに据えた選手が奮起して何とか優勝しました。

安藤香織

「今年の強みがあるなら、昨年に決勝まで行ったこと」

──インターハイでは準決勝で岐阜女子に負けました。その後も難しかったですか?

インターハイはガッと上がるわけでもなく下がるわけでもなく、しがみつきはしたんですけど、岐阜女子には勝てずに、それじゃダメだと。ここで3年生は覚悟を問われるところだったのですが、そこでも……という感じでした。ウインターカップ予選もかなり緊張して入りました。準決勝も最初2-14で負けていて、私もタイムアウトを取らず。でもこれでは負けてしまうと思って、ハーフタイムに一喝しました。「勝ちたい思いを捨てないと思い切ってできないなら、全部捨てなさい。全部リセットしてやるべきことだけに集中してなさい」と。去年はこの時点でいろんなことを乗り越えていたんですけど、今年はモタモタしながらしがみついてやってきました。

──ウインターカップに向けて修正していくべきは、やはりメンタルの部分ですか?

キャプテンの森岡はしっかり考えたり、ちょっと気持ちの良さが出たりと波がありますが、ここに来て3年生の福田と塩谷がすごく気持ちが強くなって、努力できるようになってきました。新人戦の頃は森岡が引っ張っていたのが、不器用だけど努力してきた福田と塩谷が追い付いた、むしろ超えてきています。エースの森岡、シューターの福田、リバウンドで身体を張ってしんどいことをやり続ける塩谷が、大きなことを乗り越えたわけではないのですが良くなっていますし、この3人を盛り立てる他の3年生の10人が一人ひとりのできることをやるようになって、ここに来てやっとチームになった感覚があります。

これまでは3年生が頼りなくて怒られている間、2年生がチームを盛り上げてきました。2年生は仲も良いしすごく努力するし、元気も良くて物怖じしません。3年生が地味だけどコツコツやってきたところに、2年生の元気が合わさったチームです。去年との違いは、去年のチームはウインターカップに出た経験がなかったことです。今年は森岡と塩谷という大きい選手に去年の経験があります。今年の強みがあるなら、昨年に決勝の舞台まで行ったことですね。

──大学もあるので、日頃から大学生と練習できるのが強さの秘訣かと思っていました。

以前はやっていたんですが、大学生は負けられないし、高校生も何とかしようとして死闘みたいになっちゃうので、ケガが怖いです。マネージャーの審判では裁けません(笑)。コート2面で隣同士で練習していると良い刺激を得られるのですが、今年は体育館が耐震工事で、大学と交互で使っています。だけど、昨年活躍した北川聖とか清水咲来、2年の峰晴寿音、3年の金田愛奈とウチの卒業生が大学にいて、同じ寮なので高校生の話も聞いてくれるのは大きいですね。

今日も梅田彩香という2年前のキャプテンが来てくれました。彼女は立命館に行って関西の得点王になりました。高校生の時はウインターカップを逃して、彼女がもっと攻めてくれたらというところでしたが、「大学で得点王になります」と卒業して、本当に得点王になりました。

安藤香織

「応援してもらって愛されるチームを作ることがテーマ」

──卒業した選手が次のステージで結果を出すのは、指導者としてもうれしいことですね。

ここで3年間頑張って、次のステージでも活躍できる人間性を育てたいという思いが強くあります。私は公立から来たので、今までの薫英の指導者とは違うかもしれません。日本一を目指してやってはいますが、絶対に日本一にならないといけないわけじゃない気もします。

日本一にこだわらないのではありません。公立育ちで大したキャリアもない私が薫英に来たからこそ、限りなく日本一を目指して、その上でどこまで成長できるか。そう考えるとウインターカップに行けなかった梅田の大学での活躍は素晴らしいと思うんです。去年が準優勝だったので「今年こそ」という思いはありますが、だけどウチは1回戦で負けるかもしれないし、ベスト8でも良くやったと思えるかもしれない。3年間本当に日本一を目指して「やりきった」のか「もうちょっと」なのか、結果はどうあれその経験を持って次のステージに進んでもらいたいです。

女子の世界では桜花学園と岐阜女子が、それだけの実績があり、それだけの指導者がいて日本一を争っています。そこと比べるといろんな部分でウチは違って、私も指導者として未熟だし、対等だとは全く思いません。

私としては、公立で薫英を倒したかったのと同じで、今の薫英で桜花学園や岐阜女子を倒すことが目標だし、選手たちがそれを目指しながら、どれだけ人間として成長できるかなんです。

──ここからウインターカップ開幕までの数週間、どんな準備をしますか。

このチームが日本一になるには正攻法では足りません。基本はずっとやってきたので、ここからは戦術なり作戦なりの武器を増やしたいです。まずは桜花や岐阜女子にチャレンジするところまで勝ち上がらなければいけない。そこで相手をメンタルバランスで崩してワンチャンスあるかどうかだと思うので、その作業を必死になってやります。選手たちはウインターカップ出場を決めたことで、3年生ももうバタバタせずに落ち着いています。ここからはチャレンジですから、楽しい作業です。勝っても負けても終わりですが、本当はそこでは終わらないんです。

──ウインターカップでは大阪薫英女学院のどの部分に注目してほしいですか?

ウチの良さは人間の良さです。勝つために必要なちょっとした悪さを欠くぐらいチームメート思いで、親のために、周囲の人のために頑張ることができます。決して上手くはないけど、勝つために必要なことを一人ひとりがやれるチームです。去年から言っていたのですが、人を感動させる試合をする、応援してもらって愛されるチームを作ることがテーマです。試合中に声を掛け合うところ、スポーツマンシップを発揮するところを見ていただきたいです。みんなの思いを背負って、自分たちが練習してきたことをやれば、結果はついてくるはずです。

すごい能力がある選手がいるわけではないし、留学生がいるわけでもありません。本当に普通の子たちが、チームとしてやらなきゃいけないことをみんなで徹底する。そこが一番の売りです。普通の選手でもやればできるんだということをお見せできればと思います。

大阪薫英女学院

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