「どちらが粘ってディフェンスできるかが大事」
サンロッカーズ渋谷は週末の京都ハンナリーズ戦に連勝し、好調を維持している。
第2戦はケガを押して出場したジュリアン・マブンガに手を焼き、最後まで粘られたが、杉浦佑成とともにマブンガのマークマンを務めた渡辺竜之佑の貢献度は高かった。
渡辺はボール運びの段階からプレッシャーをかけ続け、オフェンスの停滞を狙った。ストライドは広いが一歩目のスピードがそこまで速くない相手に対し、フィジカルを生かして身体を密着させ、ボールに手を出し続けてマブンガのフラストレーションを溜めていった。
「手の使い方も身体の使い方も上手くて難しかったです。ファウルも取られてフリースローも与えてしまったので」と、18得点10アシストのダブル・ダブルを許した結果に渡辺は満足がいかない様子。
「やりすぎって言われました。何がやりすぎか分からないですが自分的には止める自信があったので」と、執拗なハンドチェックでファウルを取られたが、本人に『やられた』印象はない。
実際、渡辺を筆頭に前線からのハードディフェンスが機能したことが勝因となった。「苦しい時間にどちらが粘ってディフェンスできるかが大事で、僕たちは下がらずに前からしっかりプレッシャーをかけられました」と、渡辺も言う。
6点リードで迎えた最終クォーター残り1分16秒には、ボールを運ぶ中村太地から渡辺がスティールに成功し、ワンマン速攻を決めた。勝負を決定づける大仕事だった。
驚異の7オフェンスリバウンドに「正直びっくり」
渡辺のディフェンス面の貢献度は高かったが、オフェンスリバウンドでの貢献度はそれを凌駕した。約18分間の出場で7リバウンドを記録。特筆すべきはそれがすべてオフェンスリバウンドだったことだ。前線からの守備で消耗し「キツすぎて覚えてないです(笑)」と自覚はなかったが、「普通だったらオフェンスとディフェンスを合わせて7リバウンドですが、僕自身もこんなに取ったのかと正直びっくりしました」と、自身も驚きを隠せなかった。
渡辺はガードとしては大型の189cm。琉球ゴールデンキングスに所属していた2シーズン目は4番を任され、昨シーズンの新潟アルビレックスBBでは3番でプレーしていた。そのため、「ポイントガードをここ何年かやっていなかったので、最初はドリブルをつくのもぎこちなく、自信がなさそうだった」と伊佐勉ヘッドコーチは語ったが、「自信が戻ってきた」と今はガードでのプレーに信頼を寄せている。
以前から渡辺の非凡なリバウンドセンスは注目されてきた。相手指揮官の浜口炎も「渡辺君のリバウンドセンスはどのチームも分かっています。注意してる中で取るのは素晴らしい」と、称えた。
「みんなのシュートを見ながらどこに落ちるか」を研究
ここまでオフェンスリバウンドが取れる理由は何なのか。ストレートにそう尋ねると、「(リバウンドに)行っているから」と答えた。確かにガードはセーフティに戻ることも求められ、オフェンスリバウンドに参加する機会が毎回あるわけではない。それでも渡辺はリバウンドを取りに行く。それだけで取れるほど簡単なものではないが、ボールの行き先を読み、なおかつ空いているスペースに飛び込む『感覚と予想』が大きいと渡辺は言う。
「今日だとセバスチャン(サイズ)とか、CJ(チャールズ・ジャクソン)が1対1で打つなと思ったタイミングで飛び込んだり。その時にコースをさえぎられたら、リングの裏から回って違うとこから狙ったり。だいたいここに落ちるっていう自分の感覚とか予想もありますね」
そして、こうした予想はただの『勘』ではない。「練習中もみんなのシュートを見ながら、どこに落ちるかとかは見ています」と語るように、日々の意識付けの産物だ。
NBAのレジェンド、デニス・ロッドマンは渡辺と同じように練習中からチームメートのシュートの癖や外れ方を研究していたという。そして、201cmとNBAでは並の身長ながら7シーズン連続でリバウンド王に輝く金字塔を打ち立てた。
「大学の時から好きでした」と、ロッドマンの影響を語る渡辺。今回のような活躍を続けられれば、「ガードのロッドマンバージョンになりたい」という理想は自ずと叶うはずだ。
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