スタメン復帰で鮮烈パフォーマンスも「まだまだ」
10月27日、JX-ENEOSサンフラワーズは大田区総合体育館で東京羽田ヴィッキーズと対戦。毎日興業アリーナ久喜で99-74と快勝した第1戦に続き、103-67で大勝した。富士通レッドウェーブとの開幕戦を落とすまさかのスタートだったが、そこから7連勝と強さを発揮している。
今日の試合で特筆すべきは、ポイントガードの吉田亜沙美がスタメン起用されたことだ。吉田は長らく不動のスタメンだったが、昨シーズンは後輩にプレー機会を与える意味でセカンドユニットに回っていた。昨シーズン終了後に一度は現役引退を発表。開幕直前に引退を撤回してチームに戻ってきたが、シーズンオフにトレーニングをしてこなかったためコンディションが整っていないとベンチスタートが続き、プレータイムも制限されていた。
それが今シーズン8試合目にしてスタメンに据えられた。「めちゃめちゃ緊張しました。緊張しすぎて上げすぎちゃって、3分で失速して宮崎(同じポイントガードの宮崎早織)に怒られました。もたなさすぎでしょ、って(笑)」と吉田は久々のスタメン出場を振り返る。
それでも効果は絶大だった。自らのスティールからワンマン速攻に持ち込む吉田らしいプレーを含み、試合開始から1分あまりで7-0のランで東京羽田にタイムアウトを取らせている。
第1クォーターは約3分の出場で12-5、第2クォーターも頭からの約3分で12-1のラン。後半開始からの約4分で9-4。吉田は短い時間ではあっても各クォーターの入りで完璧なゲームメークを披露し、JX-ENEOSが常に試合の主導権を握ることになった。
吉田をこのタイミングで先発に据えた梅嵜英毅ヘッドコーチも「ウチは立ち上がりに課題がありますが、そこを解消してくれた」と吉田のパフォーマンスを高く評価している。
約10分の出場で7得点6リバウンド4アシストを記録
プレータイムこそ制限されているが、吉田亜沙美らしい魅せるプレーが戻って来たと、会場に来たファンは感じたことだろう。しかし吉田の自己評価は「まだ半分も行ってないかな」だった。
「昨シーズンも『まだまだできるじゃん』と言われて、見ている人はそう思うかもしれないけど、自分の中の違和感だったり、パフォーマンスが自分の思い描いているものに近づけなくなっていました。客観的にそう思ってもらえるのはありがたいですけど、まだまだです」
ただ、そこに危機感はない。「スタートにもっと慣れていかないと、この先に皇后杯だったり後半戦に強いチームと当たる中で出だしが大事になるので、そこでガス欠にならないように。3分じゃないにしても、5分だったり10分だったりと徐々に増やしていけばいい」と語る。
自分の理想とするパフォーマンスがあり、そこに向けて自分を高めていく。現役引退の決断は、この部分で気持ちが続かなくなったのが原因だろうが、今の吉田は「できない自分が楽しい、できない自分がいるんだっていうのが楽しい」という心境でバスケに向き合っている。
「6カ月休んだら自分がこれだけできなくなるんだって、新しい発見です。パス一つにしても届かなかったりして『そうだよな』って感じですけど、できない自分がまた楽しいです」
約10分の出場で7得点6リバウンド4アシスト、吉田がコートに立っている時間のスコアは+23。第1戦では14分半の出場で14アシストと、2試合続けて『ちょっと理解しがたいスタッツ』を残しながら、吉田は少しずつ自分のパフォーマンスを理想とするレベルへと近づけている。
JX-ENEOSでの活躍はもちろん、現役復帰に際して「オリンピック出場を目指す」と明言している吉田が日本代表での挑戦にどう取り組んでいくかにも注目したい。
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