ペンス副大統領の痛烈批判「言論の自由を封じている」
アメリカのマイク・ペンス副大統領は24日、ワシントンの政策研究機関で対中政策についての講演を行い、中国共産党の権威主義体制に対して極めて強硬な姿勢を打ち出したことが話題となっている。香港でのデモへの中国政府の対応を「国際的合意で保障されている香港の人々の権利や自由を奪っている」と批判するとともに「我々は香港の人々とともにある」と語った。
また台湾の民主主義を推し、ウイグル人への弾圧や日本の尖閣諸島に対する挑発も非難。「中国との分断は望んでいない。指導部との前向きな関係を望む」と前置きしつつも、「中国は大統領の交代を望んでいるが、トランプ政権は屈しない」とも語っている。
そんな強いトーンの講演において批判の槍玉に挙げられたのがNBAだった。先日、ロケッツのダリル・モーリーGMが香港の反政府と民主化のデモに対して「自由のために闘おう。香港とともに立ち上がろう」とのツィートを投稿。これに中国のファンやスポンサーは激怒し、スポンサーは降板し、ロケッツの中国での試合中継が取りやめになった。
中国のスポーツ市場はとてつもなく大きく、NBAにとっては最重要顧客だ。NBAは中国のファンやスポンサーをなだめる形で沈静化を図ったのだが、「彼のツイートはロケッツやNBAを代表するものではない」とモーリーGMを切り捨てるようなコメントも発表している。またNBAのスター選手を代表するレブロン・ジェームズも「彼は状況をしっかり理解していないまま発言してしまい、多くの人たちが被害を受けた」とモーリーを批判している。
No matter what Democrats in Congress want to spend their time doing, President @realDonaldTrump and I are going to keep fighting for every day Americans who deserve a deal that works for them. Wisconsin and America deserve the #USMCAnow! pic.twitter.com/gEU4FpSpbu
— Vice President Mike Pence (@VP) October 23, 2019
ペンス副大統領はこの姿勢を批判。「中国の権威主義体制の子会社のように振る舞っている。NBAのスター選手やオーナーには、我が国を繰り返し好き勝手に批判する連中がいる。彼らは他国の人々の自由や権利に関しては口をつぐむ」
「中国共産党の味方になり、言論の自由を封じている」とNBAに痛烈な言葉を投げかけるとともに、この騒動を受けてロケッツの商品を撤去したナイキにも「中国の資本や市場に屈服し、社会的良心を捨てている」と名指しで批判した。
もともと、NBAとトランプ政権の折り合いは極めて悪い。人種差別的な言動が目立ち、移民や性的少数派などマイノリティを軽視するトランプの姿勢は、多様性を重んじるNBAには受け入れがたいもの。2016年の大統領選では多くの選手が反トランプを明言し、レブロンは地元オハイオで行われたヒラリー・クリントンの応援演説まで行っている。それまでは恒例だった優勝チームのホワイトハウス訪問も、ウォリアーズが拒否して以来、行われていない。
言論の自由は保障されるべきだが、巨大ビジネスだけにNBAの対中国方針は慎重にならざるを得ない。NBAコミッショナーのアダム・シルバーとしてはできる限り穏便な対応を取り、新シーズンが開幕して事態が沈静化しつつあったこの時期に政権から攻撃されたのだからたまらない。来るべき反論の機会に、NBAはどんな形で『言論の自由』を行使するのだろうか。