取材=小永吉陽子 写真=FIBA.com

「自分で何でも行くとか打つとか、そういう気持ちが大事」

長岡萌映子のポテンシャルが余すところなく発揮された試合だった。3本の3ポイントシュートを含むフィールドゴール17本中12本(70.6%)を決めての28得点。数字だけでもすごいが、特筆すべきは日本のバスケットが停滞した第1クォーターにも攻め気全開でチャイニーズ・タイペイに襲いかかり、9得点を挙げて苦しい時間帯を支えたことだ。チームが勢いに乗った後も長岡はコンスタントに得点を伸ばしていった。

負けられない試合に勝ち、チームをアジアの4強に導くとともにワールドカップの出場権をもたらした長岡だが、コートから引き上げてきた時には、いつもの淡々とした表情だった。「こんなこと言ったら相手に失礼かもしれないですけど、台湾が相手だったから、と思っています。明日(中国)とかオーストラリアにできて本物だと思っているので。今日の勝ち方だったり、自分の出来はOKということで忘れて、また明日に備えて準備しなきゃいけないと思います」

それでも、話しているうちに試合の緊張感は薄れ、あらためて手応えを感じられるようになった様子。「自分のプレーは気持ちが大半だと思うので、その気持ちが今日持てたっていうのは良かったかな」と、アグレッシブに攻めた自分の姿勢を評価。そして「自分が良いプレーをしている時は、良い意味で自分勝手になってる時だと思うので」と笑った。

「自分で何でも行くとか打つとか、今日もディフェンスがチェックでいる中で3ポイントシュートを打ったりしてたので、昨日アース(宮澤夕貴)はチェックがいても打てていたので、自分でも打てるかもって思って、196cm相手に打ちました。そういう気持ちが大事だと思います」

準決勝の相手である中国と、そこに勝てば決勝で当たるであろうオーストラリア。ここに日本を含めた3チームが今のアジアカップの『3強』であり、ここからが真価の問われる正念場となる。そこにつなげられる試合ができるかどうかが課題だったのだが、長岡はこう言う。「チームとしてつながったかどうかはイマイチなんですけど、自分としてはつながったと思うので、最終的に我慢できた試合はチームとしての収穫だったんじゃないかと思います」

渡嘉敷来夢が不在の今大会、ディフェンス面の穴はチーム全員でカバーしているが、オフェンス面では長岡の存在感が試合ごとに大きくなっている。この流れを今夜の中国戦、そして決勝戦へとつなげられるか。日本代表だけでなく長岡もまた真価を問われることになる。