取材・写真=古後登志夫

5月末に行われた福岡県予選、精華女子と中村学園女子、東海大学付属福岡との決勝リーグを全勝した若葉がインターハイ行きの切符を勝ち取った。その1カ月後に行われた全九州大会でも、決勝で延岡学園(宮崎)を下し優勝。インターハイに向けて万全の準備を整えている。

「最終的にはコートの中で自分で立っていないといけない」

──池田監督のこれまでのキャリアや実績を教えてください。

最初は福岡大学時代にミニバスを4年間教えました。鹿児島に一度帰って、城西中学校で九州大会に出たんですが、全中を得失点差で逃しました。その後に若葉高校に来て30年になります。若葉ではインターハイのベスト8が1回、ウインターカップのベスト8が2回。国体では準優勝2回、3位が1回という実績です。

──激戦区の福岡県で勝ち上がるために、どんなチーム作りをしていますか?

福岡県は大変と言いますが、全国的なレベルで見たら男子と違ってそれほど高くないと思っています。吉村功先生がいた頃は中村学園女子が軸で「何とかしてそこを倒さなければ」という状況でした。本当はウチがその軸にならないといけないのですが、そうなっていません。以前のように女子も福岡が、そして九州が強い状況を作るにはウチが頑張らないといけないと思います。

──長年指導されていますが、どのような指導方法やポリシーを心掛けていますか?

最終的にはコートの中で自分で立っていないといけない。判断してゲームを作っていくのは、結局は人間力なんです。ファンダメンタルや技術も大事ですけど、結局人間が甘いと大事な時に何もできなくなってしまう。特に女子はその甘さをたくさん持っていますから、1年生から3年生にかけて個人が変わっていく中で、難しいところはありますが付き合っています。

例えば今のウチのセンター2人は、最初は本当に何もできなかったし、去年まで臆病にバスケをしていましたが、やっと自分で前を向けるようになった。それだけでインターハイに出場できるところまで来ました。やっぱり人間力をどう育てられるかです。

──今のチームのスタイルを教えてください。

178cmと176cmのセンターがいて、九州では高さのあるチームでしたが、全国に行けばもう小さい部類なので、やはりトランジションを早くしないといけない。ブレイクで高さやディフェンス力のあるチームを打ち破っていく、能力のあるチームを打ち破っていくスタイルです。

「今ある力でどこまで行けるか、というチャレンジ」

──インターハイではどういうバスケットを見せたいですか?

対戦相手は1回戦から非常に力のあるチームばかりです。湯沢翔北は抜け目がないチームですし、埼玉栄も高さがあってバランスがいいです。開志国際も知っての通り北信越の1位で藤永真悠子がいてセネガル人の選手もいる。その次が岐阜女子です。本当にディフェンス、ルーズボールを頑張ってそこから早い展開で点を取れないと上がっていけません。

それでも、選手たちが気持ちで臆して自滅しなければ、一つひとつの相手は勝てない相手ではないと見ています。できれば3つ勝って岐阜女子に挑戦したいですね。それは選手たちも同じ気持ちだと思います。ウチは去年のインターハイに出ていなくて、2年前に試合に出ていたのは三輪眞子だけなので初出場みたいなものです。一戦ずつチャレンジャーの気持ちで経験を積ませたいです。今ある力でどこまで行けるか、というチャレンジですね。

──学校教育の中でのバスケ部ですが、強豪大学やWリーグへ選手を輩出してもいます。教育なのか選手育成なのか、このあたりのバランスはどう考えていますか?

能力のある選手はいますが、結局その子たちが上で伸びるかどうかはメンタル次第です。先に話した人間力の部分で崩れてしまう子もいます。Wリーグで活躍した、大庭(久美子)や渡邉(亜弥)も、心を鍛え上げるのに本当に苦労しました。大庭は気が強くて自分本位だったし、渡邉はすごく甘ちゃんでした。それがチームを引っ張る選手になり、日の丸を付ける選手になってくれました。やはり高校では心を鍛えてあげること、それが私たちの仕事だと思っています。

「試合が終わってガッツポーズができるゲームをやりたい」

──心を鍛えるための方法論はどういったものでしょうか?

チームは組織だからと言ってルールを守らせるとか、宗教的に先生を信じさせるとか、手っ取り早い方法もあります。でも私は一対一で対話しながらやっています。甘さがあっても子供によってはそのまま泳がせておく場合もあります。最初から厳しくすると潰れてしまう子もいるので。手のかかる子はかかるし、最初からチームを支えるようなメンタルでやってくれる子もいます。

ただ、能力のある子イコール、チームを引っ張っていく選手とは限らないです。だからそれを何とかして気付かせる。難しいですが、3年のうちに間に合って、コートで表現できるようになってくれればと思ってやっています。

──その中に指導者としての楽しさ、やり甲斐があるわけですよね?

選手たちが独り立ちしてコートで活躍する姿を見ることですよね。全然できなかった選手が変わっていく様を見ていられる、これが育て甲斐です。逆に一番悲しいのは選手がケガをした時。チームが勝つことで喜びを得られることもありますが、本当の私の役目は彼女たちが望んでいる進路に行かせることです。それがちゃんとできた時はうれしいですね。

──では最後に、インターハイの意気込みを教えてください。

今年のチームに目玉になるような選手はいません。ただ、総合力や目に見えない力を発揮することが起こり得るチームだと思っています。厳しい試合が続く中で選手たちがそれを出して、何とか高い階段を上っていってくれれば。試合が終わってガッツポーズができるゲームを、できれば6試合やりたい。少なくとも1試合か2試合、終わった後に「よくこれをしのいで頑張って戦い抜いた!」というガッツポーズをみんなでしたいです。そういうゲームを一つでも多くやることが目標です。