喜多川修平

昨年の8月4日、宇都宮ブレックスの喜多川修平は練習中に負傷し、右ひざ前十字じん帯断裂および右ひざ外側半月板損傷という重傷を負った。シーズン終盤に復帰を果たしたが、結果的にチームに違いをもたらすことはできなかった。それだけに新シーズンに懸ける思いは誰よりも強いはず。そんな喜多川に話を聞いた。

「今考えれば、いつケガをしてもおかしくなかった」

──今夏のオフはどのように過ごしましたか?

リハビリでずっと膝を使ったりしていたので、休ませる意味で1カ月はバスケットもトレーニングも全くしませんでした。ケガをする前には、オフでもトレーニングだけはやっていたんですけど、今回は本当に思い切って休みましたね。初めてですね。

──そうなると、シーズン中のようなコンディションに戻すことに苦労はしませんか?

トレーニングとワークアウトを始めて、練習が始まる前までにはだいぶ身体も動くようになりました。実際、休んだことによってトレーニングもはかどりましたし、体重も元に戻って良い感じで進めていると感じています。

──初めての何もしないオフ、どういったことをして過ごしましたか?

何をしていたかって言われると困りますね(笑)。家族旅行には行きましたけど、平日は子供たちの学校と幼稚園があるので、帰って来るまでは宇都宮を散策したり、録り溜めていたテレビをずっと見たり。本当にスローライフでした(笑)。

──今回初めてそのようなオフを迎えたのは、昨シーズンの大ケガがあったからだと思いますが、ケガをしてから変わったことはありますか?

ケガをしないためのエクササイズみたいなものにも毎日取り組むようになりましたし、考え方は変わりましたね。チューブで横歩きをしたりとか、骨盤がどうとかっていう話も今はすごく興味を持ってやっています。中臀筋って言ったかな? お尻のトレーニングも結構やっているので、復帰した時期よりも今のほうがスムーズに動けるようになっている感じはします。

ケガをする前はそういうことへの興味が全くなかったので、今考えればいつケガをしてもおかしくなかったかなっていう感じがします。自分の身体と向き合うようになりました。

喜多川修平

体重が戻らず「うわ、めっちゃ細い」

──昨シーズンの話になりますが、レギュラーシーズン終盤に復帰を果たしました。その頃はなかなかパフォーマンスが上がらずに苦労したのではないでしょうか?

そうですね、バスケットの動き自体はできたので復帰したのですが、無意識に怖さがあったのかもしれないです。動きをどこか無意識に制限していた感じはありました。

怖いという感覚はなかったですけど、前だったら行っていた場面で止まってしまう部分もありました。トレーニングばかりやっていたらコンディションが上がってこないので、ストレングスコーチとも相談しながら筋力も落とさずやれるようなトレーニングはやっていたんですけど。どうしても体重が戻りませんでした。

──体重が戻らないという話をたまに聞きますが、太ってしまうパターンと痩せてしまうパターンのどちらでした?

僕は減るタイプでしたね。手術で10kgぐらいガっと減って、そこから戻ったのが5kgぐらい。去年の復帰した時の写真を見ると「うわ、めっちゃ細い」って思います。コンディショニングのために走ることも必要なので、どうしても増えなかったですね。そこは結構苦労しました。

──喜多川選手不在で戦力ダウンとなった中でも、チームは勝ち星を重ねていきました。どのようにチームを見ていましたか?

チームメートの立場だったら戦力ダウンと言われたくないし、そこで頑張らないといけないという気持ちになると思います。僕がケガをする前のシーズンと比べて、一人ひとりがレベルアップして上手くなっていったので「自分は何をやっているんだろう」と、置いていかれている感覚はありました。

でも心強かったですね。逆に頑張ろうっていう感じにもなりました。その中で気持ちのバランスを取るのが難しかったです。その日は「よし、頑張ろう」って思っていても、見ているとやりたくなるし、まだ走れる段階でもない時期は、気持ちの波みたいものがすごくありました。

もちろん、チームが負ければいいなんて思わなかったです。逆に負けてしまった時は、力になりたかったと思って、早く戻りたい気持ちが強まりました。

喜多川修平

「自分のパフォーマンスを出せずに歯がゆかった」

──新シーズンの宇都宮は昨シーズンとほとんどメンバーを変えずに挑むことになります。その中で喜多川選手の復帰が戦力の上乗せになるかと思います。

チャレンジャーですけど、昨シーズンは迷惑をかけた分、「今シーズンは」という思いはもちろんありますね。だけどそこが先行するというよりは、僕はずっとチャレンジャーとしてやってきているので、チームの中で自分の仕事をまっとうしていきたいですね。

──実績のある喜多川選手ですが、チャレンジャーというスタンスは変わらないんですね。

僕が入ったシーズンは優勝した直後のシーズンでしたし、練習の中からチャレンジしたいという気持ちでした。昨シーズンは自分のパフォーマンスを出せずに終わったので、本当に歯がゆかったです。今は練習していてすごく楽しいです。

──東地区の戦いは昨シーズンよりも激化することが予想されます。

去年はすごくチームに迷惑を掛けました。自分にプレッシャーをかける意味でも、全試合ケガなく出ることを目標にして準備をしていきたいです。東地区はもちろん、中地区、西地区といろいろなチームと試合ができることが楽しみです。ケガをする前よりもパワーアップして戻ってきたとみんなに思ってもらえるように頑張るので、応援をお願いします。