
個人技主体でなくチームオフェンスを機能させる司令塔
カイル・ラウリーはラプターズと1日だけの契約を結び、チームのレジェンドとして20年に渡るNBAキャリアを終わらせることを決断しました。6回のオールスター選出に加え、2019年にラプターズに優勝をもたらしたラウリーの『7番』は、ヒートに移籍した2021年の時点でラプターズ初の永久欠番になることが決まっています。
ラプターズの生え抜きのような印象を受けるラウリーですが、2006年のNBAドラフトで1巡目24位で彼を指名したのはグリズリーズでした。ルーキーシーズンはケガで10試合の出場に留まったラウリーは、2年目に82試合出場で9.6得点、3.6アシストとまずまずの結果を残しますが、チームがドラフト4位で指名したマイク・コンリーを正ポイントガードとして起用したことで、3年目のシーズン途中にロケッツへとトレードされます。
ラウリーにとって5年目となる2010-11シーズンは、チーム最長のプレータイムで13.5得点、6.7アシストと中心選手へと成長し、翌シーズンも14.3得点、6.6アシストと好成績を残しました。しかし、ロケッツはシーズン終了後にラウリーをラプターズへとトレードし、その後にジェームズ・ハーデンを獲得します。結果的にラウリーのキャリア初期は、コンリーとハーデンという2人のスーパースターに押し出される厳しいものでした。
2009年のドラフトでデマー・デローザンを指名していたラプターズは、ラウリーが加入する直前は勝率.348と勝てていませんでしたが、ラウリーとデローザンのコンビ結成から毎シーズン成績を向上させ、4年後の2015-16シーズンには56勝26敗で東カンファレンス2位まで躍進。そこからは5シーズン続けて50勝以上を記録し、ラウリー自身も6年連続でオールスターに選ばれました。
ラウリーは自ら切り込んでディフェンスを崩すのではなく、トップでタメを作りつつ、オフボールで動いたチームメートに適切にパスを出してオフェンスを構築し、さらに自分自身もシューターのようなオフボールムーブから得点を奪うタイプでした。一人でボールを持ちすぎることなく、しかもディフェンスを動かす能力も持っているため、どこからでも得点できるチームオフェンスを組み立てました。特に2017-18シーズンは平均20得点超えはデマー・デローザン(23.0得点)だけで、ラウリーも16.2得点でしたが、ベンチメンバーまで巻き込むチームオフェンスを武器にラプターズは東カンファレス首位に導きました。

優勝に欠かせないリーダーシップを持つ選手
当時ルーキーのOG・アヌノビーがスターターに名を連ね、ベンチのパスカル・シアカム、フレッド・バンブリート、ヤコブ・パートル、ノーマン・パウエルも限られたプレータイムで自分の役割をこなし、後にラプターズの主力として成長していきました。ラウリーが個人技中心でオフェンスを組み立てるタイプなら、彼らの成長はなかったはずです。
ラウリーはディフェンスでも183cmと小柄ながらフィジカルの強みを生かす選手でした。特に相手のプレーを読むインテリジェンスは特筆すべきものがあり、ガードながらインサイドへのカバーリングが抜群に上手く、テイクチャージの能力はリーグ最高でした。ラプターズやヒートはスイッチやローテーションが多いディフェンスをしており、センターでもアウトサイドまで追いかけますが、逆にガードであってもインサイドのカバーに入れるラウリーの存在は重要でした。
プレーオフでは3年連続でレブロン・ジェームズの圧倒的な個人能力に阻まれましたが、2018-19シーズンにカワイ・レナードが加わると、チームオフェンスとレナードの個人技を上手く使い分け、チャンピオンリングを手に入れました。2022-23シーズンには2回目の優勝とはならなかったものの、ヒートで再びNBAファイナルへと進みました。ラウリーは個人能力で見れば最高の選手ではありませんが、チームを機能させるポイントガードとしては最高レベルの選手として、東カンファレンスで一時代を築きました。
身体能力やスキルだけでなく、卓越した戦術眼により攻守両面で活躍したラウリー。キャリア初期はエースとしての物足りなさからトレードに出されましたが、自分のスタイルを確立してからは優勝に欠かせないリーダーシップを持つ選手として重宝されました。選手としてのキャリアは終止符が打たれますが、今後もコーチやフロントへと役割を変えて、ラウリーのリーダーシップは必要とされるはずです。