RJ・バレット

「僕らは何があってもあきらめずタフに戦うチームだ」

ラプターズは、2勝3敗と後がない状況で迎えた第6戦をオーバータイムの末に制した。ブランドン・イングラムとイマニュエル・クイックリーの主力2人を欠いて、ジャコービー・ウォルターとジャマール・シードを先発に抜擢。シックスマンのコリン・マレー・ボイルズも含めて、プレーオフ初経験の若手がチームに活力をもたらす中で、スコッティ・バーンズが攻守にフル回転し、勝負どころでRJ・バレットが重要な働きを見せた。

第3クォーター中盤に最大16点のリードを築くも、第4クォーターにドノバン・ミッチェルを中心とするキャバリアーズの反撃を浴びて延長に。残り33秒でミッチェルに勝ち越しシュートを決められ、シードがフリースローを得るも1本を決められず。残り25秒、1点ビハインドでポゼッションはキャブズに移った。

それでも、キャブズはここで集中を切らしてしまう。バックコートでデニス・シュルーダーを孤立させてしまい、シュルーダーは8秒バイオレーションぎりぎりで苦し紛れのパスを出すことに。受け手のエバン・モーブリーは、背後からシードにプレッシャーを掛けられたことでファンブルしてしまい、痛恨のターンオーバーとなった。

残り10秒でのラストチャンス、バーンズのドライブキックアウトを受けたバレットが放った3ポイントシュートは、リングの根元に当たって高く跳ね上がった──。スコティアバンク・アリーナに集まったラプターズファンの何割かは、その軌道を見上げた瞬間に7年前に意識が飛んだに違いない。

現地2019年5月12日、セブンティシクサーズとのカンファレンスセミファイナル『GAME7』でカワイ・レナードが放ったラストショットはリムに4度当たってリングの内側にこぼれ落ちる劇的なゲームウィナーとなった。その12試合後にラプターズはNBA優勝を果たしている。

「コンマ何秒が永遠に感じられた。彼のため、ファンのため、すべての選手たちのために『入ってくれ』と祈った」とヘッドコーチのダーコ・ラジャコビッチはこのシーンを振り返る。高く跳ね上がったボールが静かにリングを通り抜けて、ラプターズが112-110と逆転。キャブズは最後のチャンスをモーブリーに託すが、このシュートは決まらず。ラプターズが112-110で接戦を制した。

バーンズは48分間の出場で25得点7リバウンド14アシストを記録。スタッツだけでなく、ジェームズ・ハーデンを抑え込むディフェンスも見事だった。ゲームウィナーを除けば、ファンが一番盛り上がったのはハーデンのドライブに身体を寄せて守りきり、客席に向かって雄叫びを上げた瞬間だろう。

そしてバレットは、加入3年目で最大の仕事をやってのけた。ラストショットがリムに当たった瞬間にはカワイではなく、昨シーズンのタイリース・ハリバートンが決めたゲームウィナーを思い出していた。

「ボールが真っ直ぐ上に跳ねた瞬間に、ハリバートンのシュートを思い出して『チャンスはある』と思ったよ」とバレットは言う。「でもまずは、スコッティにお礼を言いたい。あの瞬間に僕を信じてパスを出してくれた。あとは神に感謝を。第4クォーターもオーバータイムも、僕のシュートは1本も入っていなかったから」

OG・アヌノビーとのトレードでラプターズ入りが決まった時から、地元トロント出身の彼はファンの熱狂的な支持を受けている。しかし、卓越した身体能力とスキルによる爆発力が魅力ではあっても勝負強さを欠き、バーンズがエースとしての地位を確立しつつある中で、バレットは万能ウイングへと評価を変えつつあった。

しかし、外したらシーズン終了のシュートをねじ込んだ今日の一発は、彼の評価を一変させるだろう。「繰り返しになるけど、神が導いてくれた」とバレットは言う。「そして、地元のチームでプレーして、こういう瞬間を味わえる幸せを感じている。僕らは何があってもあきらめずにタフに戦うチームだ。このグループを誇りに思うし、『GAME7』に勝てばもっと最高の気分になれる」

あの瞬間に思い出したのはハリバートンかもしれないが、ラプターズでプレーする者として、トロントで生まれ育ったバスケ選手として、カワイのゲームウィナーは当然知っている。「カリフォルニアでドラフトの準備をしていて、友達と一緒のソファに座ってテレビで見ていた。信じられないシュートで、今でもはっきりと覚えているよ。それに並ぶ歴史的なシュートを自分が放ったというのは、本当に最高の気分さ」