「今シーズンは自分がコートに立ってやるんだ」
4月12日、Wリーグプレーオフファイナル第4戦でデンソーアイリスが70-51でトヨタ自動車アンテロープスに勝利。シリーズ通算3勝1敗で初のリーグ制覇を成し遂げた。
スコアだけ見るとデンソーの圧勝だが、これは第4クォーターに20-2と予想外の大差がついたためだ。第3クォーターまでは一進一退の展開となっており、特に第3クォーターはデンソーにとって苦しい時間帯が続いていたが、この苦境を救ったのが薮未奈海だ。
前半を38-33とリードして終えたデンソーだったが、第3クォーターに入るとトヨタ自動車の激しいディフェンスに苦しみ、開始から5分半にわたり無得点とオフェンスが停滞し、5点ビハインドと劣勢に立たされる。しかしここで薮が積極的に攻め、2本連続でドライブからレイアップを決めることで嫌な流れを断ち切ったのが大きかった。
これで勢いに乗った薮は第4クォーター最初のポゼッションで持ち味の3ポイントシュートを沈めると、さらに残り7分から連続で長距離砲を決めてリードを13点に広げた。14得点に加え2ブロックと守備でも活躍した薮のステップアップがあってこその勝利と言える貢献だった。
21歳の薮は昨夏の『FIBA女子アジアカップ2025』でフル代表デビューを果たすと、3月に行われた『FIBA女子ワールドカップ2026予選トーナメント』にも出場。女子代表の次代を担う一人として存在感を高めている。そしてデンソーでも、加入3年目の今シーズンは大きく出番を増やしてローテーション入りを果たし、優勝のかかった大一番で値千金の活躍を見せた。
代表、そして自チームで大きな躍進を遂げた1年を薮はこう振り返る。「デンソーに入ってからの2年間プレータイムは少なかったですが、その中でもリツさん(髙田真希)や(赤穂)ひまわりさんたちとレベルの高い環境で練習をしてきたことで自信はありました。夏の代表活動で自分のプレーが表現できたことは本当に自信になり、今シーズンは自分がコートに立ってやるんだという思いでプレーしてきました」

3Qにはドライブでも魅せる「自分の流れもつかめた」
富士通レッドウェーブに敗れた昨シーズンのファイナル、薮の出番は勝敗の決した場面に限られ、最終戦の第5戦でコートに立つことはなかった。あの悔しさが大きなモチベーションになったと続ける。
「富士通さんが優勝して表彰式で立っている姿をベンチで見ている時、『来年こそは自分がこの舞台でプレーして優勝したい』と思ったのをすごく覚えています。そして今年、自分たちが優勝して、自分も勝利に少しでも貢献できたところで、日々の練習で積み重ねてきたことがやっと表現できたと思います」
ここ一番での大暴れは日々の努力がもたらしたもので、薮の地道な積み重ねを髙田もこのように称えている。「リーグの後半戦で、なかなかシュートが入らなくてすごく苦しんでいたと思います。それでも毎日の練習で人一倍シュートを打っていました。シューターとして練習を重ね、試合で打ち続けたからこそ、最後に結果として出たと思います」
また、薮の持ち味は何といっても3ポイントシュートだが、この試合では第3クォーターで見せた素晴らしい状況判断からのドライブも印象的だった。試合の流れを変えるあのドライブがあったからこそ、第4クォーターの長距離砲の連続成功は生まれた。
薮はこう振り返る。「お互いに何試合もやってきてアジャストされるのは分かっていたので、そこで自分がボールをもらった時、相手の裏を突くことは考えていました。ドライブは少し狙っていましたし、どこかで絶対に行けると思っていました。あの時は『その場面が来た』というところで、強くアタックしていきました。ドライブから自分の流れもつかむことができ、最終的に良いスペーシングからみんながパスをくれて3ポイントシュートまで繋げられました」
21歳の若手らしからぬ駆け引きのうまさも兼ね備えた薮は、代表活動に続きWリーグでもその大きな可能性を示した。今回の成功体験を糧にさらなるレベルアップを遂げ、9月のワールドカップ本大会に向けた代表活動での活躍にも大いに期待したい。
