「大事なのは自分の足でコートを出ることだった」
セルティックスにとって敵地でのニックス戦は、勝てば東カンファレンス2位が確定となる大事な一戦だった。試合は一進一退の攻防の末に、第4クォーターを31-23で抜け出したニックスの勝利となったが、セルティックスの収穫も大きかった。
ジェイソン・テイタムは昨シーズンのプレーオフ、ニックスとのカンファレンスセミファイナル第4戦でアキレス腱断裂の大ケガを負った。10カ月後の3月上旬に復帰し、プレーオフに照準を合わせてコンディションと試合勘を取り戻しつつあるが、その前にケガをしたマディソン・スクエア・ガーデンに戻り、トラウマを払拭する必要があった。
試合前のテイタムは「前回ここでプレーした時の記憶が蘇るよ。緊張と不安、みんなが予想するすべての感情がある。今日はプレーしないという選択肢もあったけど、挑戦することに決めた。シーズ中に復帰すると決めた時から、この試合のことはずっと意識していたんだ」と語る。
試合が始まると、緊張も不安も感じさせなかった。心の中には様々な感情があっただろうが、復帰してから何度も繰り返している「ケガする前の僕の劣化版みたいな姿は見せたくない」という言葉通りのパフォーマンスを見せた。違いがあるとすれば、相棒のジェイレン・ブラウンがアキレス腱の痛みにより欠場したことだ。それでも今は目先の勝敗より、ブラウンがケガを癒やし、テイタムがトラウマを乗り越えることのほうが重要だ。
テイタムは復帰後最長となる40分プレーして、24得点13リバウンド8アシストを記録。ブラウン欠場によりマークが集中する状況で、フィールドゴール22本中7本成功と確率は上がらなかったし、ターンオーバー6を喫してもいる。それでも強度の高いディフェンスに耐え、試合を通して攻守に奮戦したことで、彼の中から緊張や不安は消え去ったはずだ。
「僕にとっては大きな壁だった。もちろん勝ちたかったし、良いプレーをしたかったけど、何より大事なのは自分の足でコートを出ることだった」とテイタムは言う。「ここに至るまで、精神的なアップダウンは大きかった。特に大きなケガをすると、何に対しても疑心暗鬼になってしまう。でも今日は、ただただ感謝の気持ちだけがあった」
COUNT THAT 😤 pic.twitter.com/JdveMfobuI
— Boston Celtics (@celtics) April 9, 2026
マディソン・スクエア・ガーデンの観客の多くがニックスファンだったが、試合開始前にテイタムの名前が呼ばれると、大きな歓声が起こった。その中には彼がアキレス腱を断裂した瞬間を目撃した者もいるだろう。そういう人たちへの感謝の言葉をテイタムは忘れなかった。
「復帰して以来、一度も話したことのない選手やコーチ、GMからいろんな言葉を掛けてもらっている。今日は大きな歓声で出迎えてもらった。セルティックスのユニフォームを着ている僕に対して、あの場所で起きたことへの敬意を示してくれたことは本当にありがたいよ」
復帰までのプロセス、そしてプレーを再開したこの1カ月で、彼は自分の感情をオープンに話してきた。緊張や不安をありのままに語ることは弱さとも受け取られかねないが、それでも率直な感情を話す理由を、テイタムはこう明かす。
「NBAには常に何百万人もの視線が向けられていて、僕に注目している人もたくさんいる。僕がこの問題にどう向き合い、どう乗り越えるかを伝えることで、誰かに勇気を与えられるんじゃないかと思っているんだ。必ずしもケガではなくても、困難な時期を過ごしている人が、僕の挑戦を見て何かを感じてくれるかもしれない。そうなったらうれしいよ」
