文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com、小永吉陽子

「気持ちの準備の部分で出だしからやられてしまった」

東アジア選手権を戦う日本代表は、昨日の準決勝でチャイニーズ・タイペイに完敗を喫した。目標としていた優勝の芽は潰え、今日は3位決定戦に回ることに。最大の敗因はリバウンド、特にオフェンスリバウンドを許した点だが、オフェンス面では相手が固めるインサイドを崩せず、外一辺倒になってしまったことが響いた。

今回の日本代表は辻直人、古川孝敏がケガで招集できず、Bリーグの日本人得点王である金丸晃輔も早々に選考から外れている。3ポイントシュートを武器とするシューターがいない状況で、外から打たされたのでは分が悪い。それだけに、様々な手を尽くしてインサイドの堅守を破るべきだったが、その工夫と積極性を欠いたのは間違いない。

わずかではあったが、『日本の時間帯』はあった。それは外からのシュートが決まったのではなく、インサイドを切り崩す攻めが形になっていた時。その場面によく絡んでいたのがチーム最年少の馬場雄大だった。

ただ、馬場に満足感は全くない。「最悪の出来でした」と試合を振り返る。「ルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチの求めているバスケットが何もコートで体現できなくて、気持ちの準備の部分で出だしからやられてしまったし、シックスマンである自分たちも変えられなかったので。ホントに最低な結果だと思います」

「ここ一番のプレーで責任を転嫁してしまった」

馬場自身も、見せ場を作ったというより、行くべきところで行けなかったという悔いの残る試合だった。「組織力よりも個々で戦ってくるチームという情報があったんですけど、気持ちで負けてしまった部分がありました」と馬場は言う。

第3クォーターの反撃については「40分という戦いなので、前半悪くてもハーフタイムで切り替えようと、ディフェンスからもう一度やって、日本代表としての責任があるので最後まで勝つ気持ちで戦っていました」と語る。

大会前から馬場はプロ選手の中に入っても気後れすることなく、「若さを生かして先輩たちに刺激を与えたい」と強い意気込みを持っていた。チャイニーズ・タイペイ戦での悔いは、その積極性をコート上で表現できなかったことだ。「ここ一番のプレーで責任を転嫁してしまった部分があるので、一つのボールを扱うことに責任を持っていきたい」

「流れが悪い時こそコートを走って、アップテンポな展開に持っていくのが流れを変えるチャンスだと思っているので、それが自分が体現できる部分」という考えは変わらない。チャレンジして結果が出ないのならまだしも、チャレンジをやり切ることができなかった。そこを馬場は悔やむ。

だが、負けてしまったという結果はもう動かせない。今の日本代表にできることは、3位決定戦に勝って大会を終えることだ。中国は若手主体のチームだが、これからアジアを戦う上ではかならず立ちはだかる壁。フルメンバーで臨む日本がここであっさり負けるようでは、明るい見通しは立てられない。

「苦しいところでいかにチームのためにできるか。そこで自分がミスしてしまったのは悔やまれますが、次につなげていきたい。今日の負けは切り替えて、絶対明日3位になって終わりたいです」と馬場は言う。話を聞いたのは試合が終わった直後で、まだ切り替えられているようには到底見えなかったが、一夜明けて気持ちも変わっているはず。馬場に限らずすべての選手に、今日の中国戦を消化試合にしない心意気が求められる。