
「ブランディングは、もっと頑張る必要があります」
今シーズンの『東アジアスーパーリーグ(EASL)』は、宇都宮ブレックスの初優勝で閉幕した。EASLは、150万ドルという莫大な優勝賞金が魅力の一つであり、今回からアジアのクラブNo.1を決める『FIBAバスケットボール チャンピオンズリーグ アジア(BCL Asia)』に繋がるFIBA公認の大会へと進化を続けている。
大会期間中に行われた、記者会見に登壇したヘンリー・ケリンズCEOは、ライブ配信による視聴者数の増加、世界的ブランドとのスポンサー契約など事業が拡大している状況についてポジティブな発言をした。優勝賞金に関しても世界的に注目される大会として、ベンチマークされるための先行投資と説明している。
すべてが好循環に働いているイメージの強いEASLだが、Bリーグチェアマンの島田慎二は厳しい視線を向ける。島田は経営困難に陥っていた千葉ジェッツを立て直し、日本有数のトップクラブへと成長させ、その手腕を買われて2020年にチェアマンに就任。以降も積極的な経営で、2019-20シーズンは270億円だった年間売上を2023-24シーズンには632億円まで成長させた実業家の目には、まだまだ改善の余地がある事業として映っている。
BリーグはこれまでにオーストラリアのNBLや、ドイツのブンデスリーガなどとの提携を進め、NBAとも戦略的提携に基本合意し、グローバル化を推し進めてブランディングの強化に努めている。その観点からも、現状のEASLについて島田チェアマンは、「まだまだEASLやBCL Asia、ICC(FIBAインターコンチネンタルカップ)は、サッカーほど明確に確立されていなく、認知が弱い状態です。そもそも大会自体のブランディングは、もっと頑張る必要があります」と、ブランディングの弱さを指摘した。しかし、ただ傍観しているだけではないと続ける。
「Bリーグとしてもグローバル戦略で、こういった大会を繋ぎ合わせることで、ビジネス面においてもっといろいろと仕掛けられる状況は出てきてはいますが、EASLきっかけでビジネス面で何かが生まれているわけではありません。そこは我々の努力とEASLのブランディング向上の両方がないといけないので、ヘンリーと昨日ミーティングした時に『もう少し頑張っていこう』と提言させてもらいました」
ブランディングの未熟さは随所に違った形で現れている。それは現場で取材をしていた記者にも感じるものであった。大会の運営やメディアへの対応、広報周りのセットアップ、大会ホームページの情報など多岐に渡った。島田チェアマンもその部分について、Bリーグとの差を感じている。
「日本が一つひとつナーバスにやるので、思う部分なのかもしれませんが、海外に来るとあらためて、結構皆さんがワイルドというか、ルーズなところがあると感じています。『Bリーグ水準に全部を合わせろ』とまでは言いませんが、少しずつそのクオリティを上げていくべきです。ウチからも、かなりのスタッフが日本から来てフォローしているので、努力が必要と話しています」

求めるのは、健全でサステナブルな経営
「我々もEASLとは当初から一定の長期契約をして参画しています。だからこそ、長い目で大会を育んでいかなくてはいけないし、我々もここでアジアの覇権を獲るために、ちゃんとした位置付けにしていこうということでスタートしているのです」。ここまで苦言を呈するのは、競技面にも直結するからである。冒頭でも記した通り、EASLはBCL Asiaに続く重要な大会となっている。そしてその先には、各大陸の強豪クラブと真っ向勝負ができるインターコンチネンタルカップへと繋がっている。
「EASLがインターコンチネンタルカップへの大事な接続の場でもあるので、リーグとしても位置付けが高まっています。だからこそ逆に、サステナブルな運営ができるようになってほしいので、経営などにはいろいろ申し上げています」。そう語るのは、チェアマンとしての競技面の見え方、経営者としての事業面の見え方があるからだ。「優勝賞金も大きいし、2位でも大きい。3位でもBリーグの年間チャンピオンぐらいにはなるので、そこは魅力です。一方で、そういう魅力的な状況を作るということは、リーグ運営においてコストもかかるということです」
そして、Bリーグが長期契約を締結している背景もあり、世界とのハブとして存在し続けるためにも健全で持続可能な経営を求めている。「それなりの投資をして大きなチャレンジをしているリーグだと思うので、そこの事業採算性みたいなところがどうなっていのるか気にかけています。まだまだ全然リクープ(投資回収)に達していないと思うので、『ギャーギャー外から口を出す』のではなく、もっとスピード感を上げていくために、『日本マーケットにおいて何か協力できることがあればするから言ってね』と、コミュニケーションと言うよりも結構シビアな話をさせてもらいました」
国際大会に参加しに行く、誘致するとなった時に『稼げるか』もしくは『コストを抑えられるか』という観点で判断するという島田チェアマンにとって、2023-24シーズンのセブ島開催はコストパフォーマンス、立地を含めて中途半端だったと切り捨てた。そして開催地をマカオに戻したことについて「ある種、中立でコスパが良いという判断だったのではないか」と推測するが、評価は一貫して厳しいものだった「収支上のスタンダードになりつつあること良いことですが、いずれにしてもコストをある程度抑えた上で稼ぐという両方の観点が必要で、もう一歩、二歩とアグレッシブにやっていかなくてはいけない」
事業を展開する経営者はポジティブな面を強調する。しかし、そこに外部の経営者が評価を下せば、違った側面が見えてくる。島田チェアマンにとってEASLは、まだまだ成長と改善が必要な事業であるということだ。今後、EASLがBリーグとともに世界から注目される組織となるために、どういった事業方針を打ち出すか。競技面だけでなく、事業面での成長にも期待したい。