
「タンキングの動機となるインセンティブを変える」
NBAオールスター期間中、NBAコミッショナーのアダム・シルバーはタンキングに強烈な「NO」を突き付けた。その姿勢は現地3月25日の会見で、さらに強いものとなった。
戦力均衡のためにドラフト制度を採用し、前年の成績下位のチームから上位指名権が得られるNBAのルールでは、シーズン終盤にプレーオフ進出をあきらめたチームが故意に負けるタンキングが横行している。
2月にリーグは健康なスター選手を意図的に欠場させたタンキングがあったとして、ジャズに50万ドル(約7500万円)、ペイサーズに10万ドル(1500万円)の罰金を科した。ところが、その後は下位チームが主力選手の持つ古傷を手術させてシーズン終了とし、正式な『ケガ人』の看板をぶら下げることで制裁を回避するケースが頻出。タンキングをなくそうというリーグの目論見はあっさり外れた。
シルバーはシアトルとラスベガスを舞台とするエクスパンションについて語る最中に「今年中に決定したとしても、新チームがリーグに加わるのは早くて2028-29シーズンになるが、タンキングの問題については今すぐに解決する」
「これはリーグの倫理観の問題だ。あちこちで『中途半端な順位よりも下位のほうが良い』と言われている。今の戦力で一生懸命に戦うチームに対して、ファンが『負けるべきだ』と言い、そのプレッシャーがフロントにタンキングを行わせる。素晴らしい試合が繰り広げられている時にタンキングを話題にしたくない。プロスポーツが愛されるのは、筋書きのない生のドラマだからだ。タンキングはスポーツの本質的な価値を損なう。だからこそ、この問題は必ず解決してみせる」
これまでもリーグはタンキングをなくすためのルール改定を何度も行ってきたが、それでもこの状況は変わっていない。「私がコミッショナーになってからも変更はあったが、それは劇的なものではなく段階的な変更だった。2014年の就任直後、過半数の支持を得ながらも承認に必要な3/4に届かず否決された提案もあった」とシルバーは言う。
「当時は正当な再建とタンキングの区別が難しかった。しかし、この2月にいくつかのチームが取った行為は、リーグとして看過できないレベルだ。これまでの調整よりもずっと踏み込んで、ドラフト以外にも、フリーエージェントやトレード、将来的には労使協定(CBA)での調整も含む抜本的な対策を行うべきだと考えている」
「今回の理事会での議論は、特定のチームを非難するものではなかったが、変更が必要という点については全員の同意を得た。チームがタンキングをするのはメリットがあるからで、そのインセンティブを変えるつもりだ。リーグでは数カ月前から議論が行われており、協議委員会や各チームのGMとも協議を重ねてきた。おそらく5月に臨時理事会を開き、そこで修正案を採択することになる。今年のドラフトやフリーエージェントの前に、各チームが来年以降のルールを理解できるように変更を行う。『永遠の課題への解決策』とは言えなくても、来シーズンに向けてインセンティブの仕組みは今とは全く異なるものになるだろう」