
「自分の能力を発揮するためのチャンスが必要だった」
プレシャス・アチウワは2020年のNBAドラフト1巡目20位でヒートに指名された。4年契約を結び、NBAファイナルへと躍進した直後のヒートでローテーションの端とはいえ出場機会をつかみ、1年目から61試合に出場。ルーキーシーズンを終えたところで、カイル・ラウリーのトレードの一部としてラプターズに移籍。ここで控えとして2シーズン半を過ごし、OG・アヌノビーを中心とする大型トレードの一部としてニックスに移籍した。
ニックスで2年目となる昨シーズンは、控え選手に重きを置かないトム・シボドーの下でも平均20.5分のプレータイムを獲得。それでもサラリーキャップに余裕のないニックスは彼と契約を更新せず、昨年夏はヒートのトレーニングキャンプに招集されるも開幕ロスター入りを果たせず解雇された。
複数のチームを渡り歩き、泥臭いプレーでチームを支えるロールプレーヤーとして経験を積んできた彼にとって、プレーする場所を失うことの衝撃は大きかった。
「自分が実力不足だと思うことは一度もなかったけど、不運な出来事が重なったことで本来いるべき場所にいられなくなった。それでも過去5シーズンでやってきたことの価値は自分が一番分かっているし、心配していなかった。ただ自分の能力を発揮するためのチャンスが必要だったんだ」とアチウワは当時を振り返る。
そのチャンスはキングスによってもたらされた。『チームの顔』であるドマンタス・サボニスがケガをした代役としてオファーが届いたのだ。契約は今シーズン終了までで先の保証はないが、彼にとってはNBAのコートに立ち、自分の価値をあらためて世に示すことが必要だった。
アチウワがキングスと契約を結んだのは開幕直後の11月。ブランクもありプレーのリズムを取り戻すのに少なからず時間を要したが、サボニスのシーズン全休が決まった2月以降に出場機会が増えると調子が上がってきた。
Precious is COOKIN in LA!
— Sacramento Kings (@SacramentoKings) March 15, 2026
He currently has 25 PTS, shooting a perfect 3/3 from beyond the arc. pic.twitter.com/di0yozuVmH
高い身体能力を生かしてガッツを前面に押し出すスタイルはヘッドコーチのダグ・クリスティ好み。2月以降はスタメンに定着して平均得点が11.2と2桁に乗り、2月後半からは得点とリバウンドで平均ダブル・ダブルと絶好調だ。
「僕が望んでいたチャンスをくれたこのチームには感謝しかない」とアチウワは言い、チームへの順応が上手くいく理由に指揮官クリスティを挙げた。「彼はバスケのことだけじゃなく、人としてのレベルまで深く選手にかかわってくれるタイプのコーチだ。それに選手としての実績もすごい。選手としてキャリアを築いたコーチに教わるのは、大学時代のペニー・ハーダウェイ以来だけど、その時も僕は成功を収めている。NBA経験のあるコーチの下でプレーするのが僕には相性が良いのかもしれない」
「試合の流れに身を任せて、チームに必要なプレーをするだけだ」とアチウワは言う。「スペースを広げることもできればゴール下へのドライブも、ダンカースポットで待つプレーもできる。多くの役割をこなせるのは、これまでの経験から学び、自信をつけてきたからだ。チャンスさえ与えられれば、やれると信じていた」
アチウワはこの5年間で経験を積んでいるとはいえ、センターとしてはサイズ不足で、フォワードとしてはボールコントロールやシュートの技術に難があるとのイメージで契約を得られなかった。その彼が再起のチャンスを得られたのは、キングスが過去最低とも呼ぶべきシーズンを送っており、キャリアのある選手が来シーズン以降を見据えて身体のメンテナンスを優先した結果だが、彼はそのチャンスを見事に生かしている。
アチウワは言う。「今はここで活躍の機会を得られていることだけで十分だけど、オフになったら『また戻って来てほしい』と言ってもらいたい。それに値する選手だと証明するのが僕の願いだ」