ジェイコブス晶

「コートに立っている意味を出すために」

ノンカンファレンスでは9勝4敗と好成績を残したフォーダム大だが、アトランティック10(A-10)のカンファレンスゲームでは3連敗と厳しいスタートを切った。

 4日のリッチモンド大戦は75-83、7日のジョージメイソン大戦は58-67とホームでの2試合はいずれも惜敗。特に7日のゲームではフィールドゴールは8本中1本の成功で、3ポイントシュートは4本放つが1本も決められず2得点、リバウンドは5本と満足できない数字に終わり、ジェイコブス晶は自身の不甲斐なさに怒り心頭だった。

 「3試合とも、同じ感じで負けている。今の自分は正直、何もできていない。役割としてシュートを決めないといけないので、それをやらないとチームの役に立たないです。自分がコートに立っている意味を出すために、もう少しちゃんとしなきゃいけません」

連敗という結果だが、多くのケガ人を抱えるチーム事情に悩まされながらも、今季はハイレベルと称されるA-10のチームを相手にするフォーダム大が一方的に負けているというわけではない。だからこそ、悔しい気持ちは余計に強かったのだろう。

もともと、かなりレイドバックした(おおらかな)性格のジェイコブスだが、ジョージメイソン大戦後には率直に悔恨を述べていた姿が印象的だった。カレッジ3年目の戦いが正念場を迎えるこの時期に、元同僚に関するニュースから刺激を受けてもいた。横浜ビー・コルセアーズ、そして日本代表でのチームメートでもあった河村勇輝が現地時間6日に、ブルズと2度目の2ウェイ契約を結んだことが発表された。すでに河村自身に「おめでとう」と伝えたというジェイコブスは、日本を代表する司令塔の話になると称賛の言葉が止まらなかった。

 「ユウキは本当にすごいと思います。頑張っているだけじゃないんですよ。もう少しでいけたとかじゃなくて、また契約するということは、壁を超えているということ。そういうところがいつもすごいと思います」

 同じチームの一員としてフロアをシェアしていたわけだから、ジェイコブスは学年的に2つ上の河村の持ち味と魅力はもちろん熟知している。河村が世界的に名を売ったパリ五輪後、主にそのパスワークを特筆していたことが思い出される。

 「一緒に出ていると、とてもやり易いんです。ユウキがペイントアタックして、魔法のようなパスを出し、僕はキャッチ&シュートだけ。一緒にやるのはすごく楽で、楽しいです。ビーコルからずっとチームメートだったんですけど、実際に一緒にコートに立てたのは今年だったので、そこはうれしかったです」(パリ五輪後のインタビューより)

 それからまた時は流れ、2026年―――。チーム、立場は違えど、同じアメリカを戦場とするようになった。現在のジェイコブスは何より、河村のメンタル面を絶賛するようになっていたのは象徴的だったのかもしれない。

「パスだけではないですし、大事なシュートも決めてくれる。ディフェンスも良いし、何でもできる選手。一番はメンタルが強いですね。『ここで決めるぞ』という時は決めるし、『ここで契約が取れる』というところまで辿り着くと、チャンスがそこまで少なくても絶対に取る。メンタルがすごく強いのでここまでできていると思う。それも自分にはまだ足りていないのかなと思うところです」

ジェイコブス晶

「自信を持っていても、やらないと嘘になってしまう」

スポーツのフィールドは常に公平なわけではなく、誰もが同じような機会に恵まれるわけではない。一度はブルズとの契約破棄を余儀なくされた今季の河村のように故障とは起こるものだし、複数のポジションを奔走する今のジェイコブスのように常に打ちやすいタイミングでボールが回ってくるわけでもない。

そんな中でも良い結果を出すために、道を切り開く心の強さは絶対必須。アメリカ、日本、豪州とさまざまな場所で戦ってきたジェイコブスのメンタルが弱いとはまったく思わないが、今の自身の状況を改善させるために、さらに強引なまでの強さも必要だと考えているのだろう。特に河村はフィジカルの面では恵まれているとはいえないにもかかわらず、アメリカでも一定の成果を出してきた。そんな姿を見て、ジェイコブスが自身をさらに鼓舞していたことは理解はできる。

「僕はユウキより身長とか身体能力があるんですけど、そのディスアドバンテージが彼にあってもそこまでやれる。だから僕には『言い訳』という言葉はないんですよ。それができるっていうのはすごいことなんですが、自分もそのくらいのレベルにいきたい。『僕は何をやっているんだろう?』という考えでやらなければいけない。次の試合から、何か特別なことを見せていけないと思っています」

悔しさをまったく隠そうとしなかったジョージメイソン大戦から、また3日後―――。敵地で行われた10日のセント・ボナベンチャー大戦で、ジェイコブスは意地を見せてくれた。試合開始直後からいつも以上の積極性で3ポイントシュートを手に取り、前半だけで3本の成功。約33分プレーをして14得点を挙げると、ゲーム全体でも今季最多タイの4本の3ポイントシュートを決め、リバウンドでも貢献した。フォーダム大がアウェイで81-77と接戦を制することができたのは、ジェイコブスの働きがなければありえなかった。

結果を出したセント・ボナベンチャー大戦前に「自分に自信を持っていても、やらないと嘘になってしまう。次が最後の試合くらいの気持ちでやります」と話していた21歳は、見事な『有言実行のパフォーマンス』をしてくれた。危機感を感じて臨んだゲームでこれほどのプレーができるなら、まだまだ成長できる。ハードな戦いが続くA-10カンファレンスゲームでも、力を出し続けられる。スキルとハートの強さを兼備した同世代の司令塔同様、ジェイコブスも厳しい環境で『壁を越える』ことがきっとできるはずだ。