荒尾岳

出番減も「自分のやるべきことをやってベストを尽くす」

12月21日、千葉ジェッツはホームで京都ハンナリーズと対戦。外国籍のメンバーが揃わず苦しい台所事情の京都相手に、序盤からゴール下でのアドバンテージを生かして確率良く得点を重ね89-60で危なげない勝利を収めた。これで千葉Jは前日の81-52に続く圧勝で連勝を6に伸ばしている。

過密日程が続く中、2試合続けての大勝によってプレータイムを分散することができたことは千葉Jにとってプラス要素だ。ベテランセンターの荒尾岳も今シーズン2番目となる6分32秒のプレータイムで、タフな守備に加え、オフェンスではスクリーナーとして役割を遂行した。

現在、千葉Jは東地区優勝へ向けて順調に白星を積み重ねている。金近廉が12月7日の試合で全治6週間の右肩の負傷で戦線離脱したのは痛いが、昨シーズンと比べればここまでケガ人は大きく減っている。

荒尾は、今のチーム状況について「もちろん廉がいてフルメンバーで戦うのがいいですが、廉が抜けて足りない部分をタッシー(田代直希)や原(修太)、ナーズ(ナシール・リトル)がプレータイムを長くし、普段やらない仕事をうまくやってくれていることで良い方向に行っていると思います」と手応えを語る。

荒尾自身、出番を与えられればしっかりとやるべき仕事をこなす職人ぶりは変わらないが、一方で昨シーズンと比べるとコートに立つ機会は減っている。ただ、チームファーストなベテランは、どんな状況にもブレずに、自分にベクトルを向け続ける。「僕のできることは変わらない中、同じポジションのマイク(マイケル・オウ)との競争で、今はマイクの評価が昨シーズンより高くて自分のプレータイムが減っています。ただ、そこは自分のやるべきことをやって、ベストを尽くすしかない感じです」

今は序列でオウが上となっていたとしても、久しぶりの集中開催方式となり1月6日から12日に行われる天皇杯において、荒尾の存在は大きくなるだろう。というのも、外国籍のレギュレーションが変更され、ベンチ登録2名のオン・ザ・コート1かつ、アジア特別枠は外国籍と同じ扱いになるからだ。そのため、オウは天皇杯に登録できず、ポジション的にジョン・ムーニー、ディー・ジェイ・ホグが外国籍登録で、日本代表のように渡邊雄太が4番ポジションに入る布陣が濃厚だ。ただ、他に日本人でサイズのある金近の復帰も微妙とあって、6日間で4試合をこなす過密日程を乗り切り、優勝するためには荒尾の出番は間違いなく増えるだろう。

荒尾岳

「久しぶりの集中開催だからこそ、より勢いは大事になってくる」

荒尾は次のように意気込みを語る。「大学生の時から出ていて、正月にやる大会というイメージが自分の中であるので懐かしい感じです。マイクが出られないところで出場する可能性は増えると思いますが、雄太が4番でプレーしたりとコーチの判断もあります。ただ、コンディション的にはやっていけると思います」

そして「久しぶりの集中開催だからこそ、より勢いは大事になってくると思います」と荒尾は展望を語る。この勢いに乗るためにも、これからの試合で荒尾がしっかり調子を上げていくことは千葉Jの王座奪還のカギとなってくるはずだ。

最後に話は変わるが、この日も千葉Jのホームゲームには1万人以上の観客が詰めかけた。今シーズンがチーム創設15年目を迎える千葉Jにとって今や1万人以上の観客動員は当たり前の光景となっているが、誕生当初は観客動員に苦しみ1000人台も珍しくなく、それ以下の試合もあった。この苦しい時代に、球団職員、そして当時在籍していた選手たちも一緒になって草の根の活動を行ってきたからこそ今の成功がある。

2022年からの復帰以前に加え、Bリーグ誕生前の2009年から13年にかけて千葉Jに在籍していた荒尾は、この苦しい時代を経験している。今、チームに在籍する若手選手は経験していない駅前でのチラシ配りなど、人気拡大のために様々な活動をしてきた荒尾に、あらためてこの盛況ぶりについて聞くと「千葉ジェッツとしてお客さんが1000人、それより少ない時を経験して、そこから毎試合1万人と成長している。その中に自分がプレーヤーとしていれるのはすごく幸せなことです」と語る。

そして、加入当時の草の根活動が、プロバスケットボール選手としてのキャリアに与えたものを「影響はめちゃくちゃ大きいです」と荒尾は振り返る。

「スポンサーさんへの感謝を実感できましたし、ブースターの方とも最初はすごく近い距離で触れ合っていました。試合になかなか勝てずブースターさんと共に苦しい思いを共に味わってきました。そういった経験をさせてもらうことでスポンサーさんの支援、ブースターの方の応援がどれだけ大切なことかより強く感じることができましたし、この思いは自分にとって今も現役を続けられている原動力になっています。応援してくれる皆さんのためにプレーしたい、この気持ちがずっとブレずにいられるのは当時の経験のおかげもあると思います」

今の荒尾は、確かにコートに立つ時間は減っている。ただ、彼のチームにおける価値の大きさに変わりはない。