「良いチームはシュートが決まらない日でも勝つ」
このところグリズリーズの話題はもっぱらジャ・モラントが引き起こすトラブルで、彼が右のふくらはぎを痛めて欠場しているここ3週間は静かなものだ。その間の10試合でチームは7勝と序盤の不振から脱しつつある。現地12月7日にはトレイルブレイザーズと対戦し、試合開始直後の1ポゼッションを除けば常にリードを保って119-96の完勝を収めた。
タイ・ジェロームもスコッティ・ピッペンJr.もケガでいまだ今シーズンの出場がなく、ポイントガードのポジションが壊滅状態。それでもビンス・ウィリアムズJr.とキャム・スペンサーがその穴を埋めている。
この試合ではウィリアムズJr.が先発するもターンオーバーが多く、プレータイムは16分に留まった。それでも後を継いだスペンサーがセカンドユニットを引っ張り、ブレイザーズに対して優位を作り出す。
とはいえ、好調時のモラントのような『特別な何か』を生み出す力は彼らにはない。今のグリズリーズは派手なプレーで観客を魅了するのではなく、全員でディフェンスを頑張って勝機を引き寄せるチームだ。ジェイレン・ウェルズは16得点を記録したが、試合後に語ったのはオフェンスではなくディフェンスの意識だった。
「ディフェンスは努力次第だ。僕たちは勝つために必要なだけの努力を見せた。ディフェンスに意識を集中させ、相手のベストプレーヤーを疲れさせる。スイッチができて、誰がマークしても相手のベストプレーヤーを守れることが自分たちの大きな武器だと理解しているんだ」
指揮官トゥオマス・イーサロも「今日のディフェンスには満足している」と語る。「良いチームはシュートが決まらない日でも勝つ。今日の我々はそういうチームだったし、これからもそれを大事にしたい。シュートにはバラつきがあるが、ディフェンスやリバウンドのバラつきははるかに少ない。そこをベースに戦うチームでありたい」
具体的にブレイザーズのどこを抑えたのか、そのポイントをイーサロはこう説明する。「スモールラインナップのチームに対し、トランジションの機会を与えなかった。ファウルドローやキックアウトを狙うドライバーのリムアタックを上手く受け止め、ターンオーバーを引き出し、リバウンドでも優位に立った。全員が1本の糸で繋がったような連動したディフェンスができた」
ブレイザーズでドライブから攻めの起点となるデニ・アブディヤからは5、シェイドン・シャープからは6のターンオーバーを誘発。フリースローも18本しか与えず、その一方でグリズリーズは39本を得た。
「他にも良い要素はいくつかあるが、必要な時にエネルギーと集中力、チームワークで一段階レベルを引き上げることができた。これは非常に良い兆候だ」とイーサロは語った。
フィールドゴール成功率は45.0%で、3ポイントシュート成功率は29.0%と低調だったが、それでもディフェンスで守り勝つことができた。シュートタッチが好調だった唯一の選手はサンティ・アルダマだ。
NBA5年目の今シーズンは苦戦が目立つアルダマだが、この試合ではフィールドゴール11本中7本、3ポイントシュート成功3本の22得点を記録。その彼もまた、最初に語ったのはディフェンスだった。「ゲームプラン、コミュニケーション、規律。その3つに僕たちは集中している。良い仕事ができたと思うけど、自分たちに高い水準を課しているから、まだまだ改善できると思っている」
これで11勝13敗、勝率5割が見えてきた。ここからグリズリーズは、シーズン中には貴重な中4日の休養期間を得られる。現地12日のジャズ戦からはモラントも復帰できそうだ。ディフェンスファーストの好調を維持しつつモラントの爆発力を加えることができれば、グリズリーズは本格的に波に乗る可能性がある。
