文=鈴木健一郎 写真=鈴木栄一

「ウチの詰めが甘かった。栃木は最後まで集中していた」

間違いなく今日の主役だった。しかし、欲しかったファイナルへの切符は手に入らなかった。今日行われた栃木ブレックスとのセミファイナル。第2戦で金丸晃輔はゲームハイの21得点を記録し、第3戦でも6得点を挙げる活躍ぶり。インサイドで強みを見せるアイザック・バッツとギャビン・エドワーズへの対応で手一杯の栃木守備陣は、的確なタイミングでペイント付近に飛び込み、ミドルジャンパーを次々と沈める金丸を止める術がなかった。

1点が貴重な重い展開の中、コンスタントにシュート機会を作り出し、そして決め続けた金丸の働きは特筆に値する。徹底したマークに苦しみ9得点に終わった昨日とは全く違う動きだった。「昨日は全然シュートも打ててなかったので、入る入らないは別にして自分が動いてシュートを打つことによってニアサイドの選手がリバウンドを取りやすくなるんです。それも意識した上で今日は積極的にいきました」と金丸は言う。

それでも、結果が結果だけに金丸の言葉は反省ばかりが続く。「出だしから気合いを入れてやったんですが、第3クォーターで20点くらい開いたんですかね。その後に詰められて第4クォーターは全然点が取れなくて、結果的には2点差で勝ったんですけど、もうちょっとどうにかするべきでした」

「3戦目は絶対に3ポイントシュートはやらせないようにとの指示があって、僕は1本やられてしまったんですけど。必死にディフェンスしてミスしたほうが負けという感じで、一つのミスが負けにつながることを実感しました。残り30秒のサイドラインの時は、ボールをキープして時間を使うべきでした」

やるべきことはやった。ほんのわずかな差で明暗が分かれたが、それは集中力の差だと金丸は言う。「ウチの詰めが甘かった。栃木は最後まで集中していた。それに尽きると思います」

コンディションに苦しんだ1年が終了「休んで、切り替えて」

黄色く染まったブレックスアリーナは『完全アウェー』の雰囲気だったが、金丸がそれで気圧されることはなく、むしろプラスに働いたと言う。「雰囲気がすごく良くて、相手がゴールを決めたら盛り上がりますけど、それも含めて楽しめました。演出もすごい楽しかったですし、フリースロー打つ時も騒いでたので。決めてサーッて静まるのが楽しかったです」

そして、ベンチ裏のわずかなスペースではあれ、シーホース三河の青色が陣取った一角のファンに向けて金丸は感謝する。「毎試合、ホームでもアウェーでも駆けつけてくれるブースターの皆さんは本当に僕たちにとっては心強い味方であり、頼もしいブースターだったので感謝しています。悪い時も一生懸命応援してくれて、良い時ももちろんすごい応援してくれたんですけど、本当に感謝しかないです。ありがとうございました」

勝てばファイナルの相手は川崎ブレイブサンダースだった。1年前のNBLファイナルで大逆転負けを喫した相手への絶好のリベンジの機会。三河のどの選手も、その意識があったに違いない。ただ、その舞台に進むことはかなわなかった。「すべて出し切るつもりでやったんですけど、あと一歩でした……」

試合後の心境を金丸は「悔しいのが一番大きいですけど、負けは負けなので。少し休んで切り替えるしかないです」と語る。思えばBリーグ1年目は試合数も増え、コンディション管理に苦心するシーズンだった。東アジア選手権の日本代表に金丸は招集されていない。だが、きっとまた次はある。それもそう遠くないうちに。少し休んで、切り替えて。金丸の次の挑戦が始まる。