ザイオン・ウィリアムソン

「選手に下ではなく前を向かせ、士気を高めたい」

ペリカンズはここまで2勝13敗で西カンファレンスの最下位に沈んでいる。2勝10敗の時点でヘッドコーチのウィリー・グリーンを解任するも、その後も3連敗を喫した。

暫定ヘッドコーチとなったのはジェームズ・ボーレゴ。ホーネッツで斬新な攻撃的バスケを目指すも、成果を出す前に解任された彼は、再びNBAチームを率いるチャンスを得ても表情は明るくなかった。

暫定ヘッドコーチ就任会見での第一声は「つらい一日だった」だ。「ウィリーは私を信頼し、アシスタントとしてチームに迎え入れてくれた。世話になったし、友人でもある。その彼が解任されたのはつらい。チームの不振は彼一人の責任ではなく、全員にある。しかし、このビジネスではヘッドコーチに責任が集中するし、私もその立場を経験している」

ペリカンズは長らく苦戦が続いている。ザイオン・ウイリアムソンが加入した2019-20シーズンに彼がケガをするまで、あるいはグリーン就任1年目でプレーオフ進出を果たした2021-22シーズンは期待が持てたが、その後は大きな期待を抱けるチームではなかった。

今年のオフに球団副社長のデイビッド・グリフィンが解任され、ジョー・デュマースが新たにチーム編成を司るようになったが、チームを一変させるような補強ができたわけではなく、これからさまざまな問題を一つずつ解決していかなければならない。グリーン解任がその最初の一手だ。フロントは、指揮官交代がチームの雰囲気を変えることを願っている。

「このチームを前に進ませるのが私の仕事だ」とボーレゴは言う。「まずは選手に下ではなく前を向かせ、士気を高めたい。まだシーズンはほぼ丸々残っているのだから、改善するための時間は十分にある」

その後の4日間でチームは3連敗を喫した。今のチーム状況でウォリアーズ、サンダー、ナゲッツが相手では負けるのも無理はない。それでもボーレゴが一番に掲げた「前を向き、士気を高める」は実行できている。

ナゲッツ戦ではザイオンがふくらはぎの肉離れから復帰。プレータイム制限はあるものの、復帰戦としてはまずまずのプレーを見せた。最大19点のビハインドを背負ったがモチベーションを失うことなく、終盤にはニコラ・ヨキッチをファウルアウトに追い込んで6点差まで食い下がった。勝つことはできなかったが、チームの戦う姿勢をボーレゴは「剣を降ろすことがなかった」と表現した。

身体能力はなくてもポイントセンターとして『第2のヨキッチ』と期待される活躍を見せるデリク・クイーンは、ボーレゴにより先発に据えられ、活躍の場を広げている。トレイ・マーフィー三世とザイオンを合わせて、フォワードとセンターの3人もハンドラーとしての能力を持つチームのポテンシャルをボーレゴがこれからどう引き出すかは興味深い。

プレーオフに進出する、さらにプレーオフで勝ち進むほどのポテンシャルはないかもしれない。だが、すべてを投げ出すには早すぎる。ボーレゴの手による新たな基盤作りの進捗を待ちたい。