「良いバスケットのためもっと模索していかないと」
今夏、『FIBAアジアカップ2025』に出場した男子日本代表は、ベスト8進出決定戦でレバノン代表に完敗し、早々に大会を去った。河村勇輝、渡邊雄太の不在などさまざまな要因はあったが、中心選手の吉井裕鷹は自分たちの力不足を真摯に受け止め、「こんなひどい試合をして『何が悪かった』とかどうこう言うことはないです。もっと日本が強くなるためにはイチから考え直さないといけない」と強い口調で語ったことは今でも鮮烈な記憶として残っている。
11月28日、12月1日にそれぞれチャイニーズ・タイペイと対戦する『FIBAワールドカップ2027アジア地区予選』Window1は、この惨敗に終わったアジアカップ以来の実戦となる。改めて吉井に、アジアカップの反省を聞くと次のように答えてくれた。「僕個人で言えば、ボディバランスが悪かったなどいろいろとありました。チームとしてもボールプレッシャーをかけられた時にどうやってプレッシャーリリースをするか、3ポイントシュートを得意な選手が守られた時にどうやって対応していくかなどがありました」
そして吉井は、「これまでは河村勇輝選手とジョシュ・ホーキンソン選手によるピック&ロールが効果的で、それに依存していた部分がありましたが、それだけではやっぱりダメだというところもあります。かといって全員がどんどんシュートを打っていけば良いというわけではないですが、より良いバスケットをしていくためには、もっと模索していかないといけないです」と、戦術の幅を広げることの重要性を語る。
アジアカップにおいて吉井は自ら積極的にドライブを仕掛けるなど、オフェンスでよりボールにからむ姿勢が目立っていた。この変化について吉井は彼らしく「これまでと役割が変わっただけです」と淡々と振り返った一方で、中心選手としての強い責任感をのぞかせた。
「ボールを持って、ズレを作らないといけない選手になってきていると、僕自身は思っています。それが結果として良い方向に向かうのか、悪い方向に向かうのか、アジアカップで少し分かった部分はあります。自分のできるタイミング、コーチ陣が求めるタイミングで効率的な動きをできればという風に思っています」
「中途半端なバスケットをしたら足元をすくわれてしまう」
今回の強化合宿には、これまでトム・ホーバス体制であまり代表にからんでこなかった安藤誓哉、齋藤拓実という経験豊富な司令塔が参加している。ホーバスの下では随一の代表経験を誇り、指揮官のやりたいことを熟知する吉井は、「めちゃめちゃクリエイト力のあるガードの方たちです。自分たちを上手く生かしてもらいつつ、僕たちも2人の持ち味を生かせる方法を考えないといけない。短い期間で、どれだけこれまでやってきた選手たちと動きを合わせられるのか。そこはコミュニケーションをしっかり取っていく必要があると思います」と既存メンバーとのケミストリー向上の繋ぎ役も意識している。
そしてチャイニーズ・タイペイについては次のように警戒している。「リムプロテクターであり、ゴール下で身体を張れる良い帰化選手が加わり、得点を取れるガードが増えています。中途半端なバスケットをしたら足元をすくわれてしまう印象です」
今回のアジア予選の一次リーグで日本が入ったグループBは、チャイニーズ・タイペイに加え、中国、韓国と強豪揃い。上位3チームが進出できる2次リーグ進出に向けて、Window1から正念場を迎える。吉井は「死ぬほど大事です。今回の2戦を落とせばもうワールドカップに出られないというぐらいの気持ちでやっていかないといけないです」と危機感を強調する。いきなりの大一番を乗り越えるためには、吉井の彼らしい攻守に渡るエナジー満点のプレーが不可欠だ。

