
平均30.2得点を記録するウェンバニャマを9得点に抑える
スパーズの開幕からの連勝を止めたのはサンズだった。ケビン・デュラントとブラッドリー・ビールを放出してチームを再構築しているサンズは、ここまで2勝4敗とあまり良いところがなく、しかもジェイレン・グリーンとディロン・ブルックスが欠場して苦戦が予想された。
ところが、第1クォーターから10本中6本成功と大当たりした3ポイントシュートは、第2クォーターも5本中5本とノーミスで決まり、試合を通して33本中19本成功(57.6%)と絶好調。ディフェンスでは、ここまで平均30.2得点を記録しているビクター・ウェンバニャマをわずか9得点に抑え込んだ。第4クォーターに反撃を浴びたものの、130-118の完勝を収めた。
アップセットではあったが、サンズには攻守ともに明確な勝因があった。まずオフェンスではデビン・ブッカーがゲームハイの28得点を記録しながらも、決してセルフィッシュにならずパスを優先した結果、2桁得点が7人とチームオフェンスが機能したことだ。
「時にはパス優先じゃなく自分でもっと攻めるべきだ、という意見を見るけど、今日みたいに正しいプレーを選択し続ければ、チームはシュートを決めてくれる。そういう意味で僕はチームを信じたい」とブッカーは語った。
そしてディフェンスでも、ブッカーはハードな守備のトーンを作った。サンズの守備のプランは、スパーズの中心であるウェンバニャマを抑え込み、波に乗らせないこと。ブッカーは「試合の大半でヘルプディフェンスをするより、起点となる選手を抑え込む方が好きだ」と語った。
サンズの狙いはシンプルで、ウェンバニャマをペイントエリアに入れさせないことだった。激しいコンタクトでペイント内にポジションを取らせず、ハンドラーとしてペイントアタックをする時には2人、3人がかりでコースを塞ぐ。オールスイッチでペリメーターではブッカーやライアン・ダンが身体を張り、それを突破されればビッグマンがヘルプに飛び込み、ファウルも辞さない激しさで止めにいく。ウェンバニャマは明らかにこの守備に苦しみ、リズムに乗れなかった。
2年目のダンはウェンバニャマより20cm以上も小さいが、臆せずに身体の芯でぶつかっていった。「彼のような選手を一人で止めるのは不可能だけど、だったら全員で行けばいい」と彼は言う。「彼が思い通りにプレーしたら、もう止められない。コートのどこにいても厳しい状況を作り、余裕を与えなかった。良いチームディフェンスにより、彼にボールを手離させた。ポストに入っても瞬時にトラップをしかけた。彼はそれより前に攻めようとしたけど、それ以上に僕らのほうが速かった」
NBAの特徴は戦術面のアジャストの速さで、どんなに優れた武器であっても、あっという間に対策される。プレシーズンから勝ち続けてきたスパーズの中心には、常にウェンバニャマがいた。この先、すべてのチームがサンズの対策を参考にし、どのチームもそれぞれの形で取り入れ、成功例が出ればまた研究されてウェンバニャマ対策はものすごいスピードで進んでいくだろう。スパーズが真の強豪に返り咲くには、この壁をウェンバニャマ自身が、そしてチームとしても乗り越える必要がある。