
優勝を決めた井手口コーチの目には涙
11月3日、『ウインターカップ(全国高等学校バスケットボール選手権大会)福岡県予選』の最終日がアクシオン福岡(福岡県福岡市)で行われた。最終ゲームとなった福岡大学附属大濠と福岡第一の優勝決勝戦は入場制限がかかるほどの超満員に。インターハイ予選決勝で福岡大学附属大濠に敗れ、主力センターのシー・ムサが欠場した福岡第一が80-70で勝利し、優勝を果たした。
ムサを欠く福岡第一は1年生のバ・イブラヒマ・ハリルをスタートに起用。試合開始からインテンシティの高いディフェンスで福岡大学附属大濠のルーキー、白谷柱誠ジャックのアタックを止め、ターンオーバーを誘い出した。その後も榎木瑠旺、本田蕗以らの個人技を生かしたオフェンスも跳ね返し、波に乗らせない。このディフェンスに追随するようにオフェンスにもリズムが生まれ、開始4分半以降はバ、佐藤怜音が5本の3ポイントシュートを成功させ、第1クォーターで18-12とリードを奪うことに成功する。
第2クォーター以降も福岡第一は、ピック&ロールに対してハードヘッジディフェンス(ビッグマンがボールマンに対して高い位置まで出て守る手法)を行う、オフェンスでボールをシェアするなどゲームプランを変えてきた福岡大学附属大濠にアジャスト。チームを牽引する宮本聡・耀ツインズがゲームをコントロールし、特にこの試合で23得点を挙げた宮本(聡)は気迫のこもったプレーを連発する。彼の見せ場は得点だけに留まらず。、福岡大学附属大濠の警戒がアウトサイドに寄った瞬間を逃さず、インサイドの藤田悠暉やバにボールを供給するなど、相手の裏を突いてリードを広げていく。
福岡第一は第4クォーターに入っても2桁リードを保ちながら試合を優位に進めた。このままでは終われない福岡大学附属大濠が残り3分を切ったところで8点差まで追い上げるが、宮本(聡)がスティールからそのまま持ち込み、流れをシャットアウト。限られた時間をショットクロックいっぱい使ってタイムマネジメントした福岡第一が福岡大学附属大濠を退け、優勝を勝ち取った。
試合後の優勝インタビューで、福岡第一の井手口孝コーチは「主力の3年生(ムサ)が不在ということで『ゲームになるのかな……』という思いでやっていたんですけど、3年生が良く頑張ってくれました」と涙をこらえながら話した。試合前のミーティングでは「(主力の3年生が不在の状況だが)伝説を作ってやろう!」と発破をかけ、それが試合開始から相手のターンオーバーを誘う、激しいディフェンスへと繋がっていった。

真の高校日本一を決めるウインターカップへと物語は続く
福岡大学附属大濠は前述の通り、個人の力で打開しようとした第1クォーターから、第2クォーターでボールをシェアするバスケに変更。無理なオフェンスが少なくなり、良い形で打つ場面も多く見られたが、シュートがリングに嫌われて思うように得点が伸びなかった。それでも第3クォーター以降は白谷や本田がギアを一段階上げて力強いドライブから得点を決めていき、終盤には福岡第一に詰め寄る姿も見せた。勝負は福岡第一に軍配が上がったものの、そのポテンシャルの高さを証明することはできたと言っていいだろう。
高校を代表する2校による激しく熱い試合は、あくまでも県予選。本番は12月23日から行われるウインターカップだ。井手口コーチも「これから大濠は強くなると思うので、12月は福岡同士でまた決勝ができるように頑張りたいです」とコメント。高校バスケを牽引する2校の物語は最終章へと進んでいく。