東芝神奈川とアイシン三河、負けられないプレーオフ
1967年、実業団8チームによりスタートした日本リーグ。日本リーグ~JBLスーパーリーグ~JBL~NBLまで、48シーズンに渡ってしのぎを削ってきた実業団チーム主体のトップリーグが、まもなく幕を閉じる。
東芝ブレイブサンダース神奈川(レギュラーシーズン3位)とアイシンシーホース三河(同4位)が、上位チームを破ってファイナルまで勝ち上がって来た。奇しくも、2012-13のJBLラストシーズンと同じファイナルの顔合わせ。この時は最終5戦までもつれた末に、3勝2敗でアイシン三河が優勝を飾っている。企業チームとは言え、従業員やファンが大挙し、入場規制がかかるほどの熱気に代々木第二体育館は包まれていた。
今シーズンの両チームの対戦成績は、3勝2敗で東芝神奈川が上回っている。対するアイシン三河は、ファイナルの戦い方を熟知しているディフェンディングチャンピオンだ。オールジャパン(天皇杯)に引き続き、チーム全員揃って赤いシューズを履き、心を一つにして2冠、そして2連覇を狙う。
負ければシーズン終了となるプレーオフでは、ディフェンスこそが勝利へのカギを握る。レギュラーシーズン中、両チームとも失点は同じく平均75.5点だった。プレーオフに入ると、アイシン三河は70.5点、東芝神奈川は68.4点まで失点数を抑えている。セミファイナルでは、トヨタ自動車アルバルク東京(vsアイシン三河)とリンク栃木ブレックス(vs東芝神奈川)と、いずれもリーグ屈指の得点力を誇るチームを破って勝ち上がって来た。試合後、両チームのヘッドコーチがともにディフェンスを勝因に挙げていたのも印象的だ。
鈴木貴美一(アイシン三河)「よくガマンしてディフェンスをやった結果が勝利につながった」
北卓也(東芝神奈川)「最後は両方ともディフェンス勝負となった。一つのルーズボール、一つのリバウンドをしっかり取れたことで勝利できた」
得点源、司令塔、ベテランと見所満載
アイシン三河のWエースである金丸晃輔と比江島慎。金丸については3ポイントシュートに目を奪われがちだが、ドライブで崩していき不安定な体勢からシュートをねじ込む姿は圧巻だ。一方の比江島は、セミファイナル第2戦前半まで目立つことはなかった。しかし、スイッチが入った後半は、アドレナリン全開でオフェンスの鬼と化し、18得点6アシストで勝利を呼び込み完全復活。
東芝神奈川ではニック・ファジーカスと辻直人が得点源となる。ディフェンスが厳しいリンク栃木戦では思うように得点を決められず苦しんだが、崖っぷちで臨んだ第2戦に息を吹き返した。第3戦は辻が序盤でチームを勢い付ける3Pシュートを決め、ファジーカスは31得点20リバウンドの活躍で勝利に貢献している。
1988年生まれの同期対決であるポイントガードの争いも見逃せない。アイシン三河の橋本竜馬と東芝神奈川の篠山竜青はいずれも日本代表候補選手であり、NBL優勝経験の持ち主。2人とも気持ちを前面に出してプレーする熱い男。最後に歓喜の雄叫びをあげるのはどっちだ。
今年40歳を迎えるアイシン三河の桜木ジェイアールはまだまだ脅威であり、集中力高いプレーを見せる。プレーオフでは平均10.8得点。東芝神奈川には一つ年下のジュフ磨々道がおり、攻守に渡ってインサイドで奮起している。柏木真介は、佐古賢一(現広島ドラゴンフライズ ヘッドコーチ)から受け継ぐアイシン三河の勝利の方程式でチームを落ち着かせ、東芝神奈川の大西崇範もフィジカルの強いプレーでチームに活力を与えている。プレーオフでは、優勝経験あるベテランの活躍が目立っており、いぶし銀のプレーにも注目したい。
一発勝負では味わえない総力戦、3戦先勝方式
5戦3先勝方式のファイナルを勝ち抜くためには、チーム一丸となり総力戦で臨まねばならない。コート上の選手たちのプレーもさることながら、コーチやチームスタッフのベンチワークも大事な要素となる。すでに両チームとも特徴や弱点を熟知して臨むラストゲーム。一試合を戦うごとに分析し、戦術を見直しながら対応していく知力戦は、一発勝負では味わうことができない魅力がある。
どれだけ多くの機会でボールを保持し、ゴールを決めることができるか。この単純作業に全力を注ぎ、鬼気迫るプレーの連続こそが、バスケットボールエンターテインメントの真骨頂である。
NBL最後の、最高の戦いが見られるファイナルは、明日5月24日より大田区総合体育館にて開幕する。