短期目標は2028年ロサンゼルス五輪に全カテゴリー出場
日本バスケットボール協会(JBA)は10月17日、新たな強化体制を発表した。強化委員長兼男子代表ダイレクターに伊藤拓摩(長崎ヴェルカ社長兼ゼネラルマネージャー)、強化副委員長兼女子代表強化部会長に萩原美樹子(東京羽田ヴィッキーズヘッドコーチ)が就任。男子代表強化部会長は安永淳一(琉球ゴールデンキングスゼネラルマネージャー)、女子代表ダイレクターは小栗弘、3×3男女代表ダイレクターは中村彰久(ともに日本バスケットボール協会)がそれぞれ務める。メンバーの任期はそれぞれ2年間となる。
旧体制では東野智弥が技術委員長として男子、女子、3×3の3カテゴリーすべての強化に深く関わっていた。新体制では伊藤委員長がトップとして全体をまとめるが、女子と3×3についてはそれぞれの部会長に大きな権限が委ねられることになる。
就任記者会見において、伊藤強化委員長は次のように抱負を語った。「短期的な目標としてすべてのカテゴリーで2028年ロサンゼルス五輪に出場すること。予算的にも島田慎二JBA会長からしっかりとサポートしていただくと力強く言ってもらっています。すべてにおいて最強のチームを作るため、JBAとして最高の一体感をどのように作り出していくかがカギとなります」
さらに「代表関連だけでなく、すべての部会において世界をしっかり意識していくことが大切となります」と長期目標に言及し、ユース年代、エリートコーチ養成、スポーツパフォーマンス関連などあらゆる部門の底上げにも強い意欲を示している。
今夏、男女代表は『FIBAアジアカップ』において、男子はベスト8決定戦敗退、女子は2位とそれぞれ目標とする結果を残せなかった。女子は準決勝で開催国・中国を撃破するなど大きな可能性を示したが、男子はシリア、グアムと格下の相手にしか勝利できず。ベスト8決定戦ではレバノンに24点差と厳しい現実を突きつけられた。

利益相反の懸念については「まずは選考基準をしっかり作りたい」
伊藤強化委員長は、次のように自身のやるべきことを語った。
「まず、男子についてはかなり悔しい結果になりました。強化の目線からまだまだやれることはたくさんあると思います。評価でいうと戦術的、技術的なところもすごく大切ですが、まずはどのように一体感を作っていったのか、それがアジアカップでどのように体現できたのかを選手とスタッフに聞く必要があります。映像は見ていますが、映像では分からない部分があるので、男女ともにしっかりと話を聞いて次のウィンドウや大会に生かしていきたいです」
代表チームの選手選考は当然のようにヘッドコーチの意向が反映されるが、強化委員長もチーム作りに大きく携わっている。その中で、来シーズンから始まる『Bプレミア』は代表ウィンドウ中にリーグ戦を行う方針であり、男子代表の強化部会長とダイレクターがそれぞれBリーグのチーム首脳陣であることは利益相反にならないのか。
多少うがった見方にはなるが、長崎や琉球が代表派遣選手ゼロ、対戦チームが複数の選手を派遣している状態で前者が勝利し、その上後者の選手たちが代表戦でほとんど出番がなかったらネガティブな意見が起こってもおかしくない。この点についてどうとらえているかを伊藤強化委員長に尋ねると、次のような回答だった。
「まず大切なポイントとして、選手を選ぶ基準をしっかりと作りたい。一番大切なのは日本代表に対してどんな思いがあるのか。次にヘッドコーチの築き上げようとしているものに合うかどうか。そして対戦相手がどんなチームか。男子代表は次のウィンドウでチャイニーズ・タイペイと対戦しますが、どういうバスケットをやってくるのかを分析し、コーチと話した結果、コアな選手は変わらずとも8番目、9番目以降の選手が変わる可能性があります。選考の基準をはっきりしたいです」
「先日、Bリーグの実行委員会で各チームの社長の皆さんが集まっている時に、強化委員長としてあいさつをさせていただきました。何よりも大切なのは皆さんが『利益相反ではないか』と感じられた時、はっきりと私かJBAに『それってどうなの?』と言える関係を作れるか。私は利益相反と感じていなくてもクラブさんがそう感じた時、私かJBAかが『こういう意図です』としっかり説明できるようにしていきたいです」
伊藤強化委員長のリーダーシップの下、日本代表はどのような進歩を遂げることができるのか。一新した強化体制の舵取り役の手腕に期待だ。
