ジャ・モラント

デズモンド・ベイン代役の得点源不在、ケガ人も抱える

2019-20シーズンにチーム再建を託されたタイラー・ジェンキンスを解任し、新たな改革に着手したグリズリーズは、得点源のデズモンド・ベインをトレードで放出しました。その対価として多くのドラフト指名権を手に入れたものの、ベインに代わるスコアラーは補強できず、やや戦力ダウンでシーズン開幕を迎えることになりました。

ポイントガードのタイ・ジェロームやディフェンダーのケンテイビアス・コールドウェル・ポープ、センターにジョック・ランデールと実績のある選手を加え、ウイングにはドラフト11位でセドリック・カワードを指名。各ポジションに補強をして選手層を厚くしたものの、開幕前からジャレン・ジャクソンJr.とブランドン・クラーク、ザック・イディーのビッグマンが相次いで離脱しており、トレーニングキャンプからチーム作りがつまづいてしまいました。

ハードワークを欠かさず、全員が献身的に走り、そこにジャ・モラントを中心としたハーフコートオフェンスが加わるのがグリズリーズのスタイルですが、前提となるのは誰が出ても変わらぬプレーができる選手層の厚みにあり、ケガ人が出てくると他の選手への負荷が増え、さらにケガ人が増える悪循環に陥る危険性があります。

昨シーズンは下位チームへの取りこぼしが少ない一方で、上位チームには分が悪い傾向が出ており、プレーオフで強豪チームに勝ちきるだけのチーム力を欠いたのも事実です。今シーズンは新戦力を早々にフィットさせるとともに、新たな武器を身に着けなければ次のステップへは進めないはずで、今までのバスケとは違う思い切った改革も必要になってきます。

ポイントガードにジェロームを加えたことで、エースのジャ・モラントからプレーメークの負担を減らし、ドライブからの得点に集中させることは重要な一手になりそうです。しかし、この点を除くとロスターの構成に大きな変化はなく、GG・ジャクソンやジェイレン・ウェルズといった若手の成長に期待することになります。

モラントがコート外でのトラブルを次々と起こす混沌からは脱しましたが、その頃にはチームの特徴だった若い勢いが消えてしまったように感じられるのが今のグリズリーズです。プレーオフ進出を逃したチームが現状維持で良いはずはなく、リスタートを切る以上は新たな変化が求められます。

選手個々の成長を引き出すとともに、チームとしてはモラントの個人技ではない新たな武器を見いだす。その上で従来以上に強固なチーム戦術を作り上げられるかどうか。思い切って『変化』に踏み出せるかどうかがカギになります。