ジョエル・エンビードにとっても『必要な変化』
ポール・ジョージをフリーエージェントで獲得し、勝負に出るはずの昨シーズンは、ジョージは41試合、ジョエル・エンビードは63試合、タイリース・マクシーも30試合を欠場する失意の結果に終わりました。しかし、その結果としてドラフト3位でVJ・エッジコムを指名し、選手層をさらに厚くして新シーズンに挑みます。
昨シーズンは24勝58敗と成績は散々でしたが、クエンティン・グライムスはエース級の働きを見せ、アデム・ボナやジャスティン・エドワーズも頭角を現しました。さらにオフには全てのポジションをこなすトレンドン・ワトフォード、ハードワーカーのドミニック・バーロー、機動力の高いジャバリ・ウォーカーと地味ながら堅実な選手を補強しています。
ヘッドコーチのニック・ナースは就任初年度にチーム戦術を作り替え、エンビードがシーズンの半分以上を欠場したにもかかわらず47勝と好成績を残しており、特に試合中に的確に相手の弱点を突いていく采配はラプターズ時代と変わらず見事です。分厚いロスター構成に優秀なヘッドコーチと準備は揃っているものの、それでもやはりケガに泣かされる不安を拭えないのがシクサーズらしさになっています。
今シーズンもトレーニングキャンプ開始前にジャレッド・マケインが右手の尺側側副靭帯を断裂し開幕から欠場となり、エンビードとジョージも試合出場が不透明な状況で、少なくとも万全のコンディションとは言えません。そんな事情もあってか、従来とは異なりエースの個人技に依存しない戦い方へのシフトを目指しています。
プレシーズンでは運動能力の高い若手を起用し、ハードなディフェンスと機動力を活用したオフェンスを展開しています。実際にはミスが多く機能していませんが、ビッグマンは合わせのプレーが中心になっているため、エンビードが復帰してもボールを持って自分から仕掛ける回数を減らし、ゴール下でのフィニッシュに有効に絡ませるようなオフェンスにして、負担軽減を図ることになりそうです。
『ケガさえなければ』と言われ続けているものの、それはプレーの負担に身体が耐えきれないことを意味し、31歳になったエンビードには必要な変化です。マクシーやエッジコムといった若いタレントの成長を引き出す意味でもスタイルチェンジを断行し、新たな形で勝利を目指すシーズンとなります。